天才と秀才と馬鹿の話 (画像はイメージです)

つんつくん准将

第5話 醜い妖精と七十二柱の悪魔

★★★───────★★★────────★★★
【世界の核】
「ねぇねぇ聞いて!また面白いヤツ見つけたわよ!!」

四大精霊が一人、ウンディーネは心底楽しそうに言った。

「お前...見つけるのはいいけどなぁ?手当り次第こっちに送り込むなよな。後処理結構大変なんだ。」

「その仕事...ほとんど我。」
「ま、また手伝ってやるからそんな顔するなよ!ほら!グノーム泣いちまったじゃねぇか!」

同じく四大精霊のサラマンダーとグノームだ。
グノームは基本、転生者の世界の神に手続きを行い、了承を得てからこの世界の悪魔やらに説明をする係だ。

「本当は...了承を得なければならぬのに...ニンフ、我無視して...毎回我のみ怒られてる...異世界神怖い...」
ニンフとは、ウンディーネの相性だ。別世界にいた時に呼ばれていたらしい。

「すぴー、すぴー.....くかっ?.....むにゃ....すぴー...」
「シルヴェストル!寝てないでグノーム慰めるの手伝って!!」

四大精霊、シルヴェストルだ。自分から興味を示さなければずっと寝ている。

「....ん?何よサラマンダー、いつもの...ことすぴー...」
「ねえ!グノームはもういつもの事だから、認証してよ!!」
「お前らはもう少し優しさを知れ!!」
「この三人でどうかしら?」
「話を聞けぇぇぇぇ!!!!」

「むにゃ、こいつ、凄い。」
「我、この者推奨。」
「おっ、なんだこいつ。変態みてぇな顔してスゲェ魔力量高ぇな?」
「ふっふっふ、たまにはいい人材選ぶでしょ?」
「「「たまにな。」」」

全員がハモったことを気にもしないウンディーネ。
「んじゃ、転生開始ぃ!!」
「待て待て待て待て!!決断が早い!ほら!グノームが震えてる!!」
「我、仕事...いつか死ぬ。」

四人が座っていた円卓の中心が光り始めた。

「あーあ、結局やっちまったよ...」
「バタッ...」
「グノームぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「さあ!出てきなさい!転生者どもよ!」

いつもならここで真っ白の光に変わり、世界に飛ばされていく。
だが、今日は違った。

「何っ!?この黒い光!」
「真っ黒...異常ね。十八柱、出てきなさい。」
他の三人も呼び出す。だが出てこない。

「なんだ...何が起こっている...!」
「危険察知...我等。逃げるが吉...」
「私の十八柱!出てきなさい!...何で出てこないの!?」

見る見るうちに黒い光は円卓上を埋め尽くした。
「まずいな...ここはもう無理だ!グノームの言う通り、一旦逃げよう!」
「逃げるって、何処に?」


〈逃げ場などありはしないよ〉


黒い光から何かが出てきた。
虹色に輝く羽。それと対照的な黒ずくめの髪と服。
死んだ魚のような目をした男が現れた。


〈四大精霊よ。悪魔はもういない〉

背後には四人に従っていた七十二柱の悪魔達。

「なっ...フェニックス!バアル!何してんだ!?」
「アガレス...我に逆らうとはいい度胸だな...」
「ロノウェ!戻ってらっしゃい!デブって言ったこと謝るからぁ!!」
「バルバトス...今なら許したげる。」

【我等はソロモンに仕えし七十二柱の悪魔】
【我等はソロモンの遺言より、貴様らに尽くしていた】
【だが我等はソロモンに仕えし者達。】
【ソロモンの生まれ変わりであるお方に仕えるのは道理!】
【【跪け!目に焼き付けろ!心に刻め!】】

〈僕の名前は醜い妖精スプリガン。ソロモン王の生まれ変わりだ。初めましてになるのかな?よろしくね。〉

【さらばだ、元主達よ】
〈そして、サヨナラ。四大精霊の地位を頂くよ〉

「俺が時間を稼ぐ!転生者が飛び立つ前に憑依しろ!」

そう言ってサラマンダーは真の姿、ヴルカンになり...
ウンディーネに突き飛ばされた。

「何すん...」
「私が!私が悪いんだから!後始末はきっちり付けてやるわよ!!」

「ニンフ!逃げなきゃ!」
「だめだ...ニンフ!七十二柱全員とそいつに立ち向かうなんて...」
「ニンフ...待っているのは死のみ...戻れ」

「行けッ!!!」

ウンディーネは初めて怒った。でも顔は泣きそうなくらいクシャクシャになっていた。

「これでもあんた達の中で一番強いのよ?四大精霊の意地、見せてやるわ!もうすぐ転生者が世界に飛ばされる!急いで!」

行ける訳がない。
サラマンダーはウンディーネに駆け寄ろうとした。

──だが

その背中をグノームとシルヴェストルに掴まれる。

「何すんだ!!」
「今...四人で立ち向かっても...勝率は0に等しい。
ニンフ...少しでも戦力を補給するため...命懸けで戦う...覚悟ある。」
「あたし達が逃げなきゃ、ニンフの頑張りが無駄になる!頭眠ってんじゃないのあんた!!」

辛い顔でそう言う二人を見て。
サラマンダーも決意を固める。

「分かった...」

そう呟くと次はウンディーネに向かって

「今まで散々迷惑かけられたんだ!!お前にはまだまだやってもらう事が沢山あんだよ!!だから!!」

「「「絶対に、生きて帰ってこい!ニンフ!!」」」

「もちのろんよ!」

そうして三人は世界へと。
それぞれ一人の人間と共に降り立ったのだった。


★★★───────★★★────────★★★

「さて、次は七十二柱について語ろうか。」

──ソロモン七十二柱。
旧約聖書に登場する古代イスラエルの王、ソロモンが使役する七十二の悪魔の事を指す。
この世界ではどんな存在なのだろう?

「こいつらは悪魔で、様々な容姿、能力を持っており、計七十二柱全員が四大精霊のそれぞれに均等に十八体ずつ付いておる。」

この世界じゃ悪魔と言うよりは四大精霊に仕える守護者のような扱いらしい。

「元々この世界はソロモン王という者が創った世界じゃ。世界を創った=生命を創った。そして神や悪魔でさえも、ましてや四大精霊もかの王が創った存在じゃ。
ソロモン王の事を異世界神が騙し、陥れて、今はもう殺されたがの。じゃが殺される前に一つの伝言を残していったと伝承では書かれておった。」

〈きっとこの異世界神の招きは罠だろう。そして僕死んでしまうだろう。でも待っていてくれ。
僕はいつか生まれ変わり、再び此処へ戻ってくる。それまでどうか、この世界を守っていてくれ。頼んだよ、僕の創った悪魔達よ。もうすぐ生まれる四大精霊達に尽くして、いつ帰ってきても良いようにしておいてね。それじゃあ、行ってきます。〉

「結果、王は死んだ。悪魔達はそれを知り、悲しみに溺れる者も居れば、復讐に手を染めかけた者もおった。
だが悪魔達はその感情を押し殺して、王に命じられた使命を守り続けたそうじゃ。」

「それで四大精霊が生まれて悪魔達が支えた形になったのか。」

すると突如

『魔女よ、話してくれてありがとう。』
『これで...迷いなど無くなった...。』

頭に直接話しかけて来る声が聞こえた。

「お安い御用じゃよ、サラマンダー、グノーム。
最初から存在には気づいておったが、如何せん力が弱すぎるので確証が無かったんじゃ。」

『呼び捨てなのには触れないでおこう。』
『我...構わん...』

──サラマンダー、グノーム?
あの四大精霊の?ついさっき話してたあの?

『サラマンダー...喋り方...カッコつけておる...』
『なっ、何おう!?カッコつけてなんか...!』

──これが四大精霊?

『そ、そっちだっていつもよりお喋りじゃんか!』
『初対面に...口数少ないのは...失礼だろう...?』

「あ、あのー.....」

『『む?』』

「どういう事か説明してもらえます?」

ミサキは寝ていた。




「なんと...世界の核でそんな事が...」

『我等...察知されないよう...力抑え蓄えた...』
『んで、俺らの話になったんでちょっといい気になったらソロモン王って名前が出たからよ?
大人しく聞いといて、七十二柱が寝返った理由を知れたっつーとこだ。』

醜い妖精スプリガンと名乗った男は七十二柱の悪魔を全て味方につけ、四大精霊達を襲撃したらしい。
それで転生予定だった俺とミサキともう一人のヤツに憑依して、なんとか逃げてきたと二人は言った。

『婆さん、あんたはさっきこいつらに世界を救えって言ってたよな?あの出来事を知っていたのか?』

「いや、知らなんだ。」

『何故...何を思って...発言した...?』

「...ワシには予言能力があるんじゃ。基本的に夢のような感覚での、言わば正夢じゃよ。そこで真っ黒に染まった世界と、中心に立っている虹色の羽を持った男を見た。そいつを探し、討伐に行こうとした所で、
ウンディーネの魔力を感知したから...」

──ん?
「から...何?」
「て、手伝ってもらおうかなーって...
サラマンダーの力がある事も分かったんじゃし結果オーライじゃのう!はっはっはっはっ!!」

ここまで人を殴りたいと感じたのはいつぶりだろう。

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