天才と秀才と馬鹿の話 (画像はイメージです)
第4話 転生の意味
  ──静かだ。
言われた場所を目指して荒野を歩く。
「ねぇ」
不意に背後から声がする。
だが俺は振り返らなかった。
「ねぇってば」
こいつはいつまで俺の後ろを付いて来るつもりだ?
ストーカーなら他所でやれ。
「ねぇ、ちょっとくらい話してくれてもいいんじゃない?」
面倒ったらありゃしない。
情報収集をして酒場を出てからずっとこの調子だ。
「この会話何回したかしら?俗に言うむげんるーぷってやつね!」
はて、会話をした覚えはないのだが。
こいつの脳の中で妙な改変をされているな。
「でもそろそろ脱出したいなぁ...」
俺も同感だ、早くこいつの呪縛から脱出したい。
「いや、そうじゃなくてこの土地のこと。早くしないと湧いてくるわよ?」
あぁ、そんな事か。何度も戦っている。
グロテスクな奴らの事だろ?怖くてしゃーない。
「噂をすればなんとやら!来たわよ!」
「...分かってるよ。」
そう言って錆びた剣を鞘から出す。
これ疲れるんだよなぁ...
「風羽五型...旋風ノ舞」
「流石異世界人ね!凄まじい威力だわ!!」
また環境破壊をしてしまった...
親父に知られたらどうなる事やら。
そっか、この世界親父いないんだった。
「疲れた...」
「あんだけぶっぱなして疲れない方が可笑しいわよ。
今は休みなさい」
じゃあお言葉に甘えて...
「休んでる間にこの世界について話してあげるわ!」
その話何回目だよお嬢ちゃん。飴ちゃんあげるから勘弁してくれ。
言う間もなく小さな女の子、シルルは話し始めた...
幼女婆さんはこの世界についての説明を始めた。
「この世界は魔力で溢れておる。だが使えん種族ももちろんおる、いい例が人間やゴブリンじゃな。」
なるほど、こっちの世界じゃ魔法を使えるのは限られた種族のみなんだな。
俺は話を遮って質問をする。
「じゃあ俺達はどうなるんだ?一応[人間]だけど、あんた魔法を教えてやるって言ってたよな?」
「勘違いしとるようじゃがお主らの世界はこの世界よりも魔力で溢れかえっておるぞ?使ってないだけで実は使えるのじゃ。」
はぇー、初耳。
その内器用な奴が出てきてTVで取り上げられるんだろうなぁ...
「安心せい、魔法は使える。こっちの人間と違うのは体内の魔力量。言わば魔力の貯蔵庫じゃ。お主らの方が魔力量は多い。それが多いほど強大な魔力を放てるようになる!鍛え方次第では魔力量を増やすのも可能じゃ。」
俺はふむ、と頷き。
ミサキはこの時点で頭に?が浮かんでいた。
向こうのRPGであるような設定だな。
段々と理解してきたが俺はもう一つ、ずっと気になっていたことを聞いた。
「今の魔法の話のとこ悪いんだけどさ、一個いいかな?ちょっと関係ない話。」
「ええぞ、答えられる範囲ならな。」
「なんで俺達が転生者と言うことが分かったんだ?
魔力量が多いらしいがそれ位のステータスのやつならこの世界にもいるだろ?」
他にも聞きたいことは沢山あった。
何故俺達が勇者扱いされなきゃいけないのかとか
俺達が倒さなきゃいけないのは何なのかとか。
だが気になった順で言えば、婆さんと会った時に思ったことが一番最初だ。順を追って説明してもらおう。
「お主らは転生者だが、基本的にこっちでは転生とは死んでからなるものじゃ。そっちの世界でもそれは共通かの?」
「うん!きょーつーだよ!」
これだけは理解出来たのか、ミサキが俺の代わりに肯定する。
「ならばお主らは向こうの世界で死んだ記憶はあるかの?」
──無い。
転生直後の記憶まで明確に残っている。
隣を見たがミサキは必死に何かを思い出しているようで、「んーっと、朝ごはん食べてー、ぐーたらしてー...」と呟いていた。
「俺は死んでないはずだ。記憶がはっきりしてる。
俺は家で...ま、まあちょっと体内のゴミ処理をしようとしてたんだが...」
我ながら少し怖い発言である。婆さんも別の意味で妙な捉え方をしたのか震えながら俺に言う。
「ぞ、臓器をゴミ扱いとは...」
違う、そうじゃない。
どうにか誤解を解いて、[排便]という形に収まった。
「つまり転生してきた時は下半身が...」
もうあんためんどくせぇな!
「...して、チョコ食べて!私死んでない!」
遅いわ馬鹿野郎!ごちゃごちゃじゃねぇか!
──数分後
「取り乱して悪かった...。話の続きをしよう。」
ようやく続きを聞ける...
「お主らは向こうの世界で死んでいない。ならなぜこちらに来たのか?
──それはこの世界の妖精によるものだ。」
「妖精?」
「あぁ、この世界の言わば神じゃの。
四大精霊が命令を下し、その下に付いているそれぞれ十八柱の悪魔、計七十二柱が実行し、秩序を保っている。
まずは四大精霊の紹介からしようかの」
そう言って幼女は両手の指を広げ、Wピースをすると、指四本にそれぞれ火、水、風、土が現れた。
「まずは火妖精 サラマンダー。トカゲのような身体を持っておるが、真の姿は炎の化身じゃ。その名はヴルカン。ドラゴンの姿であり、普段は温厚じゃが一度怒ると四大精霊以外に止められる者はおらん。
次に風妖精 シルヴェストル。こちらは小さな女子の身体を持っておる。常日頃寝ておることが多く、命令は一切下さない。じゃが面白そうな奴を見つけると一変。偽名を使ってその者が死ぬまで寄り添い、力を貸してくれると言われているの。
土妖精 グノーム。かなりの堅物で、あらゆる防御魔法を駆使すると言われておるの。その鉄壁はヴルカンでも破れないほどの防御力を誇るとも。だが無口で、シルヴェストルと同じく命令をほとんど下さないようじゃ。」
四大精霊、こっちの世界でも有名なやつだ。人間でも霊でもないエレメンタルで構成されていると言われているが...何故ウンディーネを後回しにした?その意味はすぐ分かった。
「最後に水妖精 ウンディーネ。好奇心旺盛な妖精であり、四大精霊の中で一番権力が強いと言われている。また、液体であるならば自由自在に操り、世界をいつでも終わらせれるような力を持っておる。
そしてこいつがお主らを転生させた原因じゃ。
転生と言うよりかは転移じゃの。」
「な、なんで!?」
俺は問う。何故俺達なんだ?もしかして俺達には誰も知らない才能ってやつが...
「てきとーじゃよ。」
──は?
「じゃから、てきとーなんじゃ。ウンディーネは異世界から面白そうなやつらを突然送ってきよる。共通点とかそんなのは微塵も無くて、部屋でウキウキしながら如何わしいもん観てたりとか、一人でスキップしてて壁に頭ぶつけたりだとか...。
ウンディーネがウケた奴が呼ばれたりする。
ワシがお主らを感知したのは、ウンディーネ直々の魔力を感じたからと...あと一つあるのだがそれは確信がないので置いておこうかの。」
「「.....................」」
「ま、まあ気持ちは分かるぞ。」
「って理由で!あなたは選ばれたの!!」
そう笑顔で言ってくるこいつを殴りたい。
かれこれ十回以上はこの話を聞いた。
「もう分かってるから...」
「じゃあ言ってないこと教えてあげよっかー?」
ふん、どうせまた同じような事を...
「あたしは実はその四大精霊の一人、シルヴェストルちゃんでした〜!」
「知ってた。」
「あれっ!?」
「いや、気付かない方がおかしいだろ?出会ったばかりで色々と魔法を教えてくれたり、妖精の話繰り返しされたらそりゃ『あれ、こいつ妖精の風のヤツじゃね?』ってなるに決まってるだろ。」
「ちぇー、あんたの驚く顔が見たかったのに。」
ふてくされる小さな妖精を見て微笑む。
シルルことシルヴェストルはこれを見逃さない。
「あっ!笑った!ハルキが笑った!!」
「笑ってねぇしクララみてぇに言うな!」
暫くの沈黙
「なあ、シルヴェストル。」
「何よ。」
「呼びにくいから今まで通りシルルでいいよな。」
「折角なら本名で言いなさいよー!!」
そう言って二人はまた歩き出す。
果てしない荒野の道を...
そしてシルヴェストルは思い出す。
この世界に来たきっかけを。
「これを話すには、まだ早いかな...」
言われた場所を目指して荒野を歩く。
「ねぇ」
不意に背後から声がする。
だが俺は振り返らなかった。
「ねぇってば」
こいつはいつまで俺の後ろを付いて来るつもりだ?
ストーカーなら他所でやれ。
「ねぇ、ちょっとくらい話してくれてもいいんじゃない?」
面倒ったらありゃしない。
情報収集をして酒場を出てからずっとこの調子だ。
「この会話何回したかしら?俗に言うむげんるーぷってやつね!」
はて、会話をした覚えはないのだが。
こいつの脳の中で妙な改変をされているな。
「でもそろそろ脱出したいなぁ...」
俺も同感だ、早くこいつの呪縛から脱出したい。
「いや、そうじゃなくてこの土地のこと。早くしないと湧いてくるわよ?」
あぁ、そんな事か。何度も戦っている。
グロテスクな奴らの事だろ?怖くてしゃーない。
「噂をすればなんとやら!来たわよ!」
「...分かってるよ。」
そう言って錆びた剣を鞘から出す。
これ疲れるんだよなぁ...
「風羽五型...旋風ノ舞」
「流石異世界人ね!凄まじい威力だわ!!」
また環境破壊をしてしまった...
親父に知られたらどうなる事やら。
そっか、この世界親父いないんだった。
「疲れた...」
「あんだけぶっぱなして疲れない方が可笑しいわよ。
今は休みなさい」
じゃあお言葉に甘えて...
「休んでる間にこの世界について話してあげるわ!」
その話何回目だよお嬢ちゃん。飴ちゃんあげるから勘弁してくれ。
言う間もなく小さな女の子、シルルは話し始めた...
幼女婆さんはこの世界についての説明を始めた。
「この世界は魔力で溢れておる。だが使えん種族ももちろんおる、いい例が人間やゴブリンじゃな。」
なるほど、こっちの世界じゃ魔法を使えるのは限られた種族のみなんだな。
俺は話を遮って質問をする。
「じゃあ俺達はどうなるんだ?一応[人間]だけど、あんた魔法を教えてやるって言ってたよな?」
「勘違いしとるようじゃがお主らの世界はこの世界よりも魔力で溢れかえっておるぞ?使ってないだけで実は使えるのじゃ。」
はぇー、初耳。
その内器用な奴が出てきてTVで取り上げられるんだろうなぁ...
「安心せい、魔法は使える。こっちの人間と違うのは体内の魔力量。言わば魔力の貯蔵庫じゃ。お主らの方が魔力量は多い。それが多いほど強大な魔力を放てるようになる!鍛え方次第では魔力量を増やすのも可能じゃ。」
俺はふむ、と頷き。
ミサキはこの時点で頭に?が浮かんでいた。
向こうのRPGであるような設定だな。
段々と理解してきたが俺はもう一つ、ずっと気になっていたことを聞いた。
「今の魔法の話のとこ悪いんだけどさ、一個いいかな?ちょっと関係ない話。」
「ええぞ、答えられる範囲ならな。」
「なんで俺達が転生者と言うことが分かったんだ?
魔力量が多いらしいがそれ位のステータスのやつならこの世界にもいるだろ?」
他にも聞きたいことは沢山あった。
何故俺達が勇者扱いされなきゃいけないのかとか
俺達が倒さなきゃいけないのは何なのかとか。
だが気になった順で言えば、婆さんと会った時に思ったことが一番最初だ。順を追って説明してもらおう。
「お主らは転生者だが、基本的にこっちでは転生とは死んでからなるものじゃ。そっちの世界でもそれは共通かの?」
「うん!きょーつーだよ!」
これだけは理解出来たのか、ミサキが俺の代わりに肯定する。
「ならばお主らは向こうの世界で死んだ記憶はあるかの?」
──無い。
転生直後の記憶まで明確に残っている。
隣を見たがミサキは必死に何かを思い出しているようで、「んーっと、朝ごはん食べてー、ぐーたらしてー...」と呟いていた。
「俺は死んでないはずだ。記憶がはっきりしてる。
俺は家で...ま、まあちょっと体内のゴミ処理をしようとしてたんだが...」
我ながら少し怖い発言である。婆さんも別の意味で妙な捉え方をしたのか震えながら俺に言う。
「ぞ、臓器をゴミ扱いとは...」
違う、そうじゃない。
どうにか誤解を解いて、[排便]という形に収まった。
「つまり転生してきた時は下半身が...」
もうあんためんどくせぇな!
「...して、チョコ食べて!私死んでない!」
遅いわ馬鹿野郎!ごちゃごちゃじゃねぇか!
──数分後
「取り乱して悪かった...。話の続きをしよう。」
ようやく続きを聞ける...
「お主らは向こうの世界で死んでいない。ならなぜこちらに来たのか?
──それはこの世界の妖精によるものだ。」
「妖精?」
「あぁ、この世界の言わば神じゃの。
四大精霊が命令を下し、その下に付いているそれぞれ十八柱の悪魔、計七十二柱が実行し、秩序を保っている。
まずは四大精霊の紹介からしようかの」
そう言って幼女は両手の指を広げ、Wピースをすると、指四本にそれぞれ火、水、風、土が現れた。
「まずは火妖精 サラマンダー。トカゲのような身体を持っておるが、真の姿は炎の化身じゃ。その名はヴルカン。ドラゴンの姿であり、普段は温厚じゃが一度怒ると四大精霊以外に止められる者はおらん。
次に風妖精 シルヴェストル。こちらは小さな女子の身体を持っておる。常日頃寝ておることが多く、命令は一切下さない。じゃが面白そうな奴を見つけると一変。偽名を使ってその者が死ぬまで寄り添い、力を貸してくれると言われているの。
土妖精 グノーム。かなりの堅物で、あらゆる防御魔法を駆使すると言われておるの。その鉄壁はヴルカンでも破れないほどの防御力を誇るとも。だが無口で、シルヴェストルと同じく命令をほとんど下さないようじゃ。」
四大精霊、こっちの世界でも有名なやつだ。人間でも霊でもないエレメンタルで構成されていると言われているが...何故ウンディーネを後回しにした?その意味はすぐ分かった。
「最後に水妖精 ウンディーネ。好奇心旺盛な妖精であり、四大精霊の中で一番権力が強いと言われている。また、液体であるならば自由自在に操り、世界をいつでも終わらせれるような力を持っておる。
そしてこいつがお主らを転生させた原因じゃ。
転生と言うよりかは転移じゃの。」
「な、なんで!?」
俺は問う。何故俺達なんだ?もしかして俺達には誰も知らない才能ってやつが...
「てきとーじゃよ。」
──は?
「じゃから、てきとーなんじゃ。ウンディーネは異世界から面白そうなやつらを突然送ってきよる。共通点とかそんなのは微塵も無くて、部屋でウキウキしながら如何わしいもん観てたりとか、一人でスキップしてて壁に頭ぶつけたりだとか...。
ウンディーネがウケた奴が呼ばれたりする。
ワシがお主らを感知したのは、ウンディーネ直々の魔力を感じたからと...あと一つあるのだがそれは確信がないので置いておこうかの。」
「「.....................」」
「ま、まあ気持ちは分かるぞ。」
「って理由で!あなたは選ばれたの!!」
そう笑顔で言ってくるこいつを殴りたい。
かれこれ十回以上はこの話を聞いた。
「もう分かってるから...」
「じゃあ言ってないこと教えてあげよっかー?」
ふん、どうせまた同じような事を...
「あたしは実はその四大精霊の一人、シルヴェストルちゃんでした〜!」
「知ってた。」
「あれっ!?」
「いや、気付かない方がおかしいだろ?出会ったばかりで色々と魔法を教えてくれたり、妖精の話繰り返しされたらそりゃ『あれ、こいつ妖精の風のヤツじゃね?』ってなるに決まってるだろ。」
「ちぇー、あんたの驚く顔が見たかったのに。」
ふてくされる小さな妖精を見て微笑む。
シルルことシルヴェストルはこれを見逃さない。
「あっ!笑った!ハルキが笑った!!」
「笑ってねぇしクララみてぇに言うな!」
暫くの沈黙
「なあ、シルヴェストル。」
「何よ。」
「呼びにくいから今まで通りシルルでいいよな。」
「折角なら本名で言いなさいよー!!」
そう言って二人はまた歩き出す。
果てしない荒野の道を...
そしてシルヴェストルは思い出す。
この世界に来たきっかけを。
「これを話すには、まだ早いかな...」
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コメント
マルク
コメ返信ありがとうございます!またそちらの方も見ておきます!主さんの作品面白いのでこれからも読見たいと思います!(*^^*)
つんつくん准将
マルクさん、コメントありがとうございます!
ごちゃごちゃしてて申し訳ない...(´;ω;`) これからもっと皆様に分かりやすいように作品を作り上げて行きたいと思っております!
そして質問、ありがとうございます!魔女の「風水」は〈風〉、〈水〉の二つの属性が混ざった、「混合属性」となっております!詳細は、「天才と秀才と馬鹿の話、設定、魔法など」という作品が僕の作品一覧にあると思うので、そちらをご覧下さい!
今後ともこの作品をどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m
マルク
通学途中に読まして頂いています。少しごちゃごちゃしていますがとても面白いと思います!まだ途中までしか読めていないのですが、魔女が唱えている魔法の中で「風水」などがありしたが、属性なのでしょうか?もしそうだとしたら、種類が知りたいです!!