天才と秀才と馬鹿の話 (画像はイメージです)

つんつくん准将

第2話 対峙

※前回までと違って急に多いです。m(*_ _)m

[魔女]

 人型人間種の突然変異ミュータント個体の総称。
類まれなる魔力を持ち、普段は人気の無い
静かな場所で過ごすことが多い。
遥か昔の伝承により、ほとんどの種族に
恐れられている。

 上記 人型緑肌ゴブリン種 情報文献より引用




 タケルの脳内に何度もこの言葉が繰り返された。

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ


 だが彼はその生存本能を否定する。
 いや、否定せざるを得ない現実を見る。

──何処に?

 そう、ここは迷いの森。
タケルは地道に木や地面に印をつけ、
あらゆる可能性を考えながら数時間さまよったのだ。

 印をつけた数、実に72個。
その全ての位置と配置時間をタケルは把握していた。

 結果
 72個の全ての印を結ぶ円上を、タケルは延々と
回っていたのである。

 魔女は俺を探しているようだった。
 なるほど、あの力・・・は感知されるのか。
 そして俺を見つけた。つまりは森の構造を知っているということではないか。

 その事実を知っているタケルは[逃げろ]と連呼する思考をなんとか抑え、大胆な行動に出ることを決断する。

 ここまでの判断、僅かコンマ0.12秒。

 忘れかけている人もいるだろうから
 ここでもう一度言おう。

 新島武は天才である。

 (ほんと、ゲームの中見てぇな世界だな
どこの誰かは知らないけど...ありがとう。)

 ニヤリと笑って続きを口に出す。

 「最っ高におもしれーよ!この世界!!」




 「なんだいやけに機嫌がいいねぇ」
魔女が不思議そうに問う。

 「あぁ、ごめんなさいね。少し嬉しい事が
あったもので...」
 そう言って頭を掻くタケル。

──刹那。

 一筋の光が魔女の帽子を焼き切る。

 しかし!

 「やはり...転生者で間違いないの。」
 魔女は全く恐れた素振りを見せず、静かにそう呟いた。

 (チッ...やっぱこの世界じゃこの程度普通なのか...)
 「転生者...へぇ、婆さんはそいつに興味があるのか?」

 考えろ!かんがえろ!カンガエロ!

 タケルは自らの力をイメージする。
 能力は光と熱を操るらしい。
 迷ってる間に暗闇で灯火をイメージした時に発見し、印の殆どはこれで付けていた。
 だがそれ以外は使えないようだ。
 まだ上手く出せないだけなのか。
それとも扱えないのかは分からないが。


 「魔法のようで魔法ではない...
感知はできるが練った痕跡がない...
これが転生者に与えられる能力の一つか。」

 (与えられる能力の一つ・・
ランダム要素なのか誰かが選んでいるのか...
だがこの世界では特別な力らしいな...)

 「へぇ、そんなに珍しいのかよ?」

 (ここは色々と情報を聞き出す。
相手とはまだ距離があるが油断は禁物だな。
さっきの俺の攻撃で目の前の帽子が燃えたのに
一切ビビらねぇのが実践慣れしてる証拠だ。)

 「珍しいさ。それにしてもその能力...どちらにせよ
厄介じゃのう...手荒になるが許せ、若造よ。」

 そう言って人差し指をタケルに向け...

 「業火 二十六型 陽炎の拘束」

 突如、円状に渦巻いた炎がタケルを包んだ。
 「ぬあっ!?何だこれ熱いっ!!」

 「暴れるから熱いんじゃよ。じっとしよれ。」

 (迂闊だった...こんなのもあんのかよ...
一瞬で遠方の敵を取り囲むなんてチートだろ!)

 「さて、話をしようじゃないか。」




 拝啓、お父さん、お母さん。
 僕が異世界に転生されてからさぞ寂しがっている
ことでしょう。

 「ほれ、きのこシチューじゃ。」

 僕は今。魔女に捕まっており

 「おい婆さん!なんかきのこが蠢いてんだけど!?
うわぁぁ!!人参まで動き出した!」

 「わあ!アスパラも!」

 結構良くしてもらってます。

 「野菜やきのこは普通はそんなじゃがのう。
そちらの世界では動かんのかい?」

 そういいながら泣いているアスパラを切り、
 シチューに追加する魔女。

 「動かんわ!こいつら体の構造どうなってんだ!?」
 「茎に脳みそが詰まっておる。」
 「ほんと大丈夫かこの世界!!?」

 なぜこんな風になったのかと言うと...

 「ブロッコリィィィィィい!!お前もか!?
お前だけは俺の味方でいて欲しかった!!」

 「楽しいねぇ、楽しいねぇ♪︎」

 この婆さんと呑気な馬鹿のせいだ。

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