天才と秀才と馬鹿の話 (画像はイメージです)
Another Story 追憶の魔女 第4話 元凶の真実(後編)
「さぁて!今日も仕事頑張りますか!!」
あれから二年。
とある魔女と人間が触れ合ってから二年が経った。
初めは認められなかった人間との共存も民衆にはだんだんと認められてきた。
あの人と、ヒトシと共に過ごす為に。
「今は女王としての仕事をしなくちゃ!」
今まで何もしてこなかった女王が仕事に打ち込んでいるのをハンカチで涙を拭きながら見守る者、唖然として硬直している者、別人なのではないかと恐怖する者...その他諸々いた。
「じょ、女王様が仕事を...ようやく王の自覚を持って頂けましたか...私は感激でございますっ!!」
「なっ...じょ、女王様が...?仕事?そんな馬鹿な!!」
「どっぺるげんがーって奴よ!きっとそうよ!!じゃないとあんな真面目な女王様なんか存在するはずが...」
──もはや言いたい放題である。
それ程彼女はやってなかったのだ。致し方が無いだろう。
だがそれも束の間。
〈ゴーン、ゴーン...〉
「はっ!15時の鐘の音!!ごめん!バイバイ!!」
 そう言うとアリサは颯爽と姿を消した。
「えぇっ!?女王様!?」
「やっぱりいつも通り私達がするのね...」
「ああ知ってたよ、知ってましたよ!!」
──街は活気に溢れ
──魔女と人は共存を始めた
──だが当人達は分かっていない
──それを忌み嫌う者が居ることを
──それを憎み恨む者が居ることを
──そしてお互いの負を。
「お待たせ〜!!」
「大丈夫、僕も今来たところだよ」
見事なリア充っぷりをみせる二人。
ここは人気のない山の麓の花畑。
ヒトシはそこで花を撫でていた。
「これは何の花?クロッカスかな?でも紫だっけ?」
「合ってるよ。他にも白とか黄色とかがあるからアリサが言ってるのはそれかも。」
「紫のクロッカスの花言葉って何だろ...調べとこう」
アリサがまじまじと見ながら言うとヒトシは首を傾げ
「花言葉?なんだいそれは?」
と答えた。
後に調べると花言葉を指定している種族は限られており、その中に人間はいないらしい。
「花言葉が無いんだね〜。」
「へぇ、どんなのがあるんだい?」
「例えばね、クロッカス全体なら《青春の喜び》だったりとか、黄色なら《私を信じて》って意味なの。
他にもこの花は...」
そう言ってアリサは他の花に手を伸ばし、得意げに説明する。
それをヒトシは笑いながら聞いている。
とても幸せな時間。
とても幸せな........
あれ?なんだここ?
真っ暗で何も見えやしない。
あぁ、そうだ。私は誰かに後ろから殴られて...
不意に足音がした。
「誰ッ!?」
返答はない。
「誰なの!?早く出てきなさい!!さもないと...」
ここでアリサはようやく異変に気付く。
魔法が使えない。身体が宙に浮いている。
女王を抑えるほどの魔法熟練度。一体誰が...?
途端に光が指し、目を刺激する。
「初代魔女王、アリサ・フォーラスよ」
脳に直接語りかけてくる声に、頭が割れそうになる。
「何者か分からないけど...この浮遊魔法を解除しなさい!!それと制御魔法も!!」
「人間と馴れ合い、暮らすなど魔女の誇りに傷がつく。ここで一言『二度と人間と会わない』と言えば見逃してやろう」
「なっ...!?」
何を言っているんだ!?魔女の誇り?
「ふざけるなッ!!私を拉致した挙句、訳の分からん要求をして!!」
「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」
「ならば。貴様の選択が間違っている事を証明しよう」
本当に何を訳の分からないことを...!
そう思った瞬間、目の前に映像が映し出された。
映っていたのは、私とヒトシが初めてあった場所。
ヒトシはいなかったが、ヒトシの母がいた。夕食を作っているのだろうか。
「さて、準備はいいか?」
「何の準備よ?何度も見た景色を見た所で何が...」
「.....あぁ、『やれ』」
──小さな火がふと現れた。
画面に映されている集落にだ。
「まさか....まさか......」
その火は見る見る間に燃え移っていき
「やめろ......」
やがて一番手前にあったヒトシの家へと点火する。
「やめろォォォォォォォォォォオオオオ!!!!」
──だが身体は動かない。見えない手錠が揺れる。
こんな事をしている間にも火は.....
「これはまだ前菜だよ。ここからが楽しいんじゃないか」
もう一つの映像が映し出される。
そこは魔女と人の共同居住区。
「あぁ.....」
同様に火が灯る。
許さない。呪ってやる。
だけどもそれ以前に
──助けに行けない自分の弱さが憎い。
みるみるうちに燃え盛る炎は全てを飲み込んだ。
命でさえも容赦なく。
「さあ、メインディッシュの時間だ」
映し出されたモニターには
「........ヒトシ?」
花畑で一人、花束を持っている青年。
見間違えるはずがない。ヒトシだ。
誰かを待っているような素振りを見せている。
「ダメッ!それだけはやめて!!!」
「さっきの発言を後悔しろ。
最後に取っておきのサプライズを用意してるから、
しっかり見とけよ」
火が灯った。だが今までと形が違う。
あの形には見覚えがある。あれは....
私が作った攻撃魔法──
刹那。全てを焼き尽くす業火が彼を襲った。
驚く程にあっさりと。
思い出の花畑は焼け野原と化した。
煙が晴れ、映し出された映像には
黒焦げの死体があった。
その手には花束だった物が握られている。
あれは....クロッカスだ。
紫のクロッカス。花言葉は...
《愛の後悔》
ぷつん。
ぷつん。
ぷつんぷつんぷつんぷつんぷつんぷつん。
愛する人の手によって結ばれていた理性の糸が
アリサの中で全て解け、千切れた。
あぁ、どれ位時間が経っただろうか。
初代女王アリサ・フォーラスは荒野の真ん中に
ポツンと立っていた。
そこは、魔女の国跡。
取り囲んでいた山も森も
全てが灰となり、塵となり
建物の瓦礫だけが存在する荒野になっていた。
もう、諦めよう。
人と共存なんか無理だったんだ。
初めから...愛さなければ良かったんだ。
──視界が歪んだ。
「あれ.........」
もう何もかも失った。
感情も理性も愛する人も国民もすべて失った。
空っぽになった心に一つの感情が居座った。
アリサは泣いた。
泣いて、泣いて、泣いて...
〈どーしたんだい?何をそんなに泣いているんだ?〉
どこからともなく声がした。
〈レディがそんなじゃダメだよー?〉
これが新たな心の支えとなる出会い。
魔女界永遠の罪人 アリサ・フォーラスと
数億年前の亡霊 ソロモンとの出会いだった。
あれから二年。
とある魔女と人間が触れ合ってから二年が経った。
初めは認められなかった人間との共存も民衆にはだんだんと認められてきた。
あの人と、ヒトシと共に過ごす為に。
「今は女王としての仕事をしなくちゃ!」
今まで何もしてこなかった女王が仕事に打ち込んでいるのをハンカチで涙を拭きながら見守る者、唖然として硬直している者、別人なのではないかと恐怖する者...その他諸々いた。
「じょ、女王様が仕事を...ようやく王の自覚を持って頂けましたか...私は感激でございますっ!!」
「なっ...じょ、女王様が...?仕事?そんな馬鹿な!!」
「どっぺるげんがーって奴よ!きっとそうよ!!じゃないとあんな真面目な女王様なんか存在するはずが...」
──もはや言いたい放題である。
それ程彼女はやってなかったのだ。致し方が無いだろう。
だがそれも束の間。
〈ゴーン、ゴーン...〉
「はっ!15時の鐘の音!!ごめん!バイバイ!!」
 そう言うとアリサは颯爽と姿を消した。
「えぇっ!?女王様!?」
「やっぱりいつも通り私達がするのね...」
「ああ知ってたよ、知ってましたよ!!」
──街は活気に溢れ
──魔女と人は共存を始めた
──だが当人達は分かっていない
──それを忌み嫌う者が居ることを
──それを憎み恨む者が居ることを
──そしてお互いの負を。
「お待たせ〜!!」
「大丈夫、僕も今来たところだよ」
見事なリア充っぷりをみせる二人。
ここは人気のない山の麓の花畑。
ヒトシはそこで花を撫でていた。
「これは何の花?クロッカスかな?でも紫だっけ?」
「合ってるよ。他にも白とか黄色とかがあるからアリサが言ってるのはそれかも。」
「紫のクロッカスの花言葉って何だろ...調べとこう」
アリサがまじまじと見ながら言うとヒトシは首を傾げ
「花言葉?なんだいそれは?」
と答えた。
後に調べると花言葉を指定している種族は限られており、その中に人間はいないらしい。
「花言葉が無いんだね〜。」
「へぇ、どんなのがあるんだい?」
「例えばね、クロッカス全体なら《青春の喜び》だったりとか、黄色なら《私を信じて》って意味なの。
他にもこの花は...」
そう言ってアリサは他の花に手を伸ばし、得意げに説明する。
それをヒトシは笑いながら聞いている。
とても幸せな時間。
とても幸せな........
あれ?なんだここ?
真っ暗で何も見えやしない。
あぁ、そうだ。私は誰かに後ろから殴られて...
不意に足音がした。
「誰ッ!?」
返答はない。
「誰なの!?早く出てきなさい!!さもないと...」
ここでアリサはようやく異変に気付く。
魔法が使えない。身体が宙に浮いている。
女王を抑えるほどの魔法熟練度。一体誰が...?
途端に光が指し、目を刺激する。
「初代魔女王、アリサ・フォーラスよ」
脳に直接語りかけてくる声に、頭が割れそうになる。
「何者か分からないけど...この浮遊魔法を解除しなさい!!それと制御魔法も!!」
「人間と馴れ合い、暮らすなど魔女の誇りに傷がつく。ここで一言『二度と人間と会わない』と言えば見逃してやろう」
「なっ...!?」
何を言っているんだ!?魔女の誇り?
「ふざけるなッ!!私を拉致した挙句、訳の分からん要求をして!!」
「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」「そうか」
「ならば。貴様の選択が間違っている事を証明しよう」
本当に何を訳の分からないことを...!
そう思った瞬間、目の前に映像が映し出された。
映っていたのは、私とヒトシが初めてあった場所。
ヒトシはいなかったが、ヒトシの母がいた。夕食を作っているのだろうか。
「さて、準備はいいか?」
「何の準備よ?何度も見た景色を見た所で何が...」
「.....あぁ、『やれ』」
──小さな火がふと現れた。
画面に映されている集落にだ。
「まさか....まさか......」
その火は見る見る間に燃え移っていき
「やめろ......」
やがて一番手前にあったヒトシの家へと点火する。
「やめろォォォォォォォォォォオオオオ!!!!」
──だが身体は動かない。見えない手錠が揺れる。
こんな事をしている間にも火は.....
「これはまだ前菜だよ。ここからが楽しいんじゃないか」
もう一つの映像が映し出される。
そこは魔女と人の共同居住区。
「あぁ.....」
同様に火が灯る。
許さない。呪ってやる。
だけどもそれ以前に
──助けに行けない自分の弱さが憎い。
みるみるうちに燃え盛る炎は全てを飲み込んだ。
命でさえも容赦なく。
「さあ、メインディッシュの時間だ」
映し出されたモニターには
「........ヒトシ?」
花畑で一人、花束を持っている青年。
見間違えるはずがない。ヒトシだ。
誰かを待っているような素振りを見せている。
「ダメッ!それだけはやめて!!!」
「さっきの発言を後悔しろ。
最後に取っておきのサプライズを用意してるから、
しっかり見とけよ」
火が灯った。だが今までと形が違う。
あの形には見覚えがある。あれは....
私が作った攻撃魔法──
刹那。全てを焼き尽くす業火が彼を襲った。
驚く程にあっさりと。
思い出の花畑は焼け野原と化した。
煙が晴れ、映し出された映像には
黒焦げの死体があった。
その手には花束だった物が握られている。
あれは....クロッカスだ。
紫のクロッカス。花言葉は...
《愛の後悔》
ぷつん。
ぷつん。
ぷつんぷつんぷつんぷつんぷつんぷつん。
愛する人の手によって結ばれていた理性の糸が
アリサの中で全て解け、千切れた。
あぁ、どれ位時間が経っただろうか。
初代女王アリサ・フォーラスは荒野の真ん中に
ポツンと立っていた。
そこは、魔女の国跡。
取り囲んでいた山も森も
全てが灰となり、塵となり
建物の瓦礫だけが存在する荒野になっていた。
もう、諦めよう。
人と共存なんか無理だったんだ。
初めから...愛さなければ良かったんだ。
──視界が歪んだ。
「あれ.........」
もう何もかも失った。
感情も理性も愛する人も国民もすべて失った。
空っぽになった心に一つの感情が居座った。
アリサは泣いた。
泣いて、泣いて、泣いて...
〈どーしたんだい?何をそんなに泣いているんだ?〉
どこからともなく声がした。
〈レディがそんなじゃダメだよー?〉
これが新たな心の支えとなる出会い。
魔女界永遠の罪人 アリサ・フォーラスと
数億年前の亡霊 ソロモンとの出会いだった。
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