勇者の冒険(仮)

あべこー

村で事件


「あれ、どうなってんだこれ」

ダンジョンを出ると、さっきまであった遺跡のような入り口が突然消えた。
さらに、ダンジョンの周囲に魔物がいたことで一瞬構えたが、それらも一緒に消えた。

「うーむ」

この状況を自分なりに推測してみる。
もしかしたら、攻略すると、消える仕様になっているのかも。さらにダンジョンから出てきた魔物も一緒に消えると。

もし、中に人がいたら大変なことになるな。あ、でも人が出てから消えるようになっているのかも。あくまで推測だけども。もしかすると時限式で消えるようになっているのかもしれないしな。攻略したダンジョンに長居しないほうがいいか。
外は夕暮れのどきになっていた。エルザも心配してくれていることだろう。

迷宮を攻略したの? キャーかっこいい
とか言ってもらえるかもしれない。
俺は心躍らせながら、村へ帰っていった。

村へ戻る途中、異変に気付いた。
村のほうから火の手が上がっているのだ。これは何かの農作業ってわけじゃないよな。ここからだと、あと30分くらいか。
俺は村へ向かう足を早めた。
村に近づくにつれてやはり燃えていることが確認できる。
やがて、村にたどり着くと女性の叫び声や子供の泣き声が村全体を包んでいた。

それとは別にギャアギャアと独特の声を発する生き物が村人を襲っている。

【ゴブリンファイター:レベル5】

先ほどまで戦っていたゴブリンか。こいつらは一体どこから湧い て出て来たのか。ダンジョンを攻略したことで魔物は消えたはずだ。そうするとこいつらは別のところから来たということになる。

ええい、今は考えているときじゃない。

村のあちらこちらに死体が転がっている中、俺は聖剣を引き抜き、次々にゴブリンをなぎ倒す。

奥に進むと、村人数人が固まってゴブリンと戦っていた。戦えないものは一軒の小屋に固まって避難しており、そこを数人の男性が守っていた。

しかし、あの様子だとじり貧だ。なんとか守っているものの、いずれ体力がつきやられるだろう。

「残りの数は……6匹か」

目の前で村人と戦っているゴブリンがちょうど6匹だ。こいつらを倒せば、一段落つけそうだ。

「せやああぁッ!!」

俺は、勢いよくダッシュし、魔物に迫ると聖剣に頼った圧倒的な戦闘力で、ゴブリンたちを蹴散らす。
中には断末魔の奇声を上げ、反撃する者もいたが、剣のサビにした。

「あ、ありがとうございます。ケイスケくん」

闘っていた村人の一人の青年がお礼を言ってきた。二十代後半くらいだろうか。
村長のところで世話になっていることを村人のほとんどが知っていたようで、俺の名前は村中に知れ渡っていた。
避難していた小屋の中に村長やその他の村人もいた。そしてエルザのおばあさんがその中から飛び出してきて、俺に詰め寄ってきた。

「ケイスケくん、来ておくれ」

泣いているのか、エルザの祖母は少し潤み声で言った。
どうしたのかと思い、連れられるまま、小屋の中に入ると数人のケガ人がいた。その中には村長の姿もあり、重傷を負っていた。そばにはエルザの姿があった。

「おとーさんッ!死なないでッ!」

父の手を握り、涙を流している姿は前にも目にしたことがあった。
人の死に敏感な彼女だ。このままでは村長が死んでしまうと考えているのだろう。

「村長ッ!! まだ息はあるか?」

俺は、村長に訴えかけるが返事がない。しかし、まだ脈はあった。

「ケイスケくんッ。どうしよう、お父さんがやられて……」

涙を流す彼女は俺の服の裾をつかんで必死に伝えてくる。
「わかった。大丈夫だ。俺に任せろ」
そういって、俺は村長の身体に手を当てる。

【ヒール】

呪文を唱えると手のひらから光があ ふれ、村長の身体を徐々に癒していく。
その光を見て、村人たちは何をしているのかなんとなく分かったようだ。

「そ、それ魔法? ケイスケくんって魔法使いだったの?」

エルザが驚きを隠せずにいた。
しかし、俺はそれに返事をすることなく回復に集中した。どうやら自分に呪文を使うのとは勝手が違うようで少し時間がかかった。

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