勇者の冒険(仮)

あべこー

みんなで食事


4人でテーブルを囲い、食事にすることにした。
食事はワイルドボアの肉を入れたスープにパンを浸して食べるようだ。現代日本と比べると質素な感じだがこんなもんなんだろう。

「この季節にワイルドボアの肉が食べられるなんてラッキーだわ。君、けっこう強いのね」

エルザから尊敬のまなざしをうける。

「いやいや、こんなんでよければいつでも狩りに行くよ。たいしたことなかったしね」

俺はちょっとだけ強がり、自慢した。

「お前さん旅人か? この辺じゃ見ねえ顔だが」

「そうですね。旅の途中です。すごい田舎からきたので右も左もわからなくて困っていました」

日本から来ましたって言っても信じてもらえないしな。ここは田舎から来たと言えばたいていのことはごまかせるだろ。

「そうだったのか。さっきも言ったが行く当てがねえならここにいてもかまわねえよ。なにもねえ村だがみんな楽しく過ごしてるしな。ついでにウチの娘も嫁にもらってくれるとうれしいんだが」

そこまで言うとエルザが話を遮った。

「ちょっと何言ってるのよ。ケイスケ君とはそんなんじゃないって。それにケイスケ君だって迷惑じゃない」

いや、全く迷惑じゃないよ。決して口に出さないけどッ!

「まぁ半分冗談だ。それと……ケイスケって言ったか? お前さんどれくらい強いんだ?」

「どうでしょうね、ワイルドボアと戦ったときも 必死でしたけど、死ぬほどってわけじゃないですね。もう少し強い魔物でもたぶん戦えますよ」

「そうか。実はな、最近森のほうで魔物の動きが活発になっているみたいでな。村人の中には奥地のほうでダンジョンを見たってやつもいる」

「ダンジョン……ですか」

RPGゲームに登場するアレだろうか。内部には迷路みたいな道が広がって、奥には財宝が眠ってるとかいうやつだ。

「俺はこれでも村長をやっていてな。一応、王都のほうに報告して門兵を派遣してもらうつもりだが、もしよかったら森の中を調査してくれねぇか?  ダンジョンがあったら報告してほしい」

そこにエルザが口を挟む。
「ちょっと、それをけいすけ君に頼むのはおかしいわ。兄さんだって魔物と戦って死んでしまったのよ。それを忘れたの?」
エルザは涙を浮かべながら訴えていた。


「もちろん無理をする必要はない。強い魔物がいたら引き返してもらっても構わない。村の安全のために仕方のないことなんだ。こちらもそれなりの謝礼金を出すつもりだ」

俺としては魔物を狩るのがこの世界に来た理由だからな。それでお金までもらえるなら一石二鳥だ。
しかし、隣に座っている女性が俺を心配するあまり泣き出していた。というか、兄と俺を重ねてるんだろうな。
それを踏まえて、俺は彼女を説得した。

「エルザ、心配してくれてありがとう。俺は簡単には死なないよ。それに危なくなったらすぐ逃げるよ。俺、故郷じゃ逃げ足が速いので有名なんだ」

ちょっとチャカして気持ちを和ませた。


「村長さん、ぜひやらせてください」

「そうか、ありがたい」

「あと、よかったらダンジョンについてもう少し詳しく教えてください」

話を聞いて、ダンジョンについてわかったことがあった。
まずはダンジョンが自然発生するものだということ。そして、ダンジョンを放置すると中から魔物があふれてくるということ。
どうやら、魔物退治=ダンジョン攻略ってことになりそうだ。魔物の発生源がダンジョンなわけだからな。

「後な、さっきも話に出てきたが、うちには長男がいてな。昔、エルザが森で迷子になって迎えに行かせたんだ。そしたら、森で魔物にやられちまったんだ。エルザはその後見つかったが、今も責任を感じてるんだ。ダンジョンはもっと危険だ。本当に気をつけてくれ」

「わかりました」

たまに話に出てきてはいたが、そういうことだったのか。
本人の前ではあまり触れない方が良さそうだ。

ケイスケは食事を終えると、おばあさんに別の部屋に案内され、お湯とタオルを用意してくれた。ここはベッドが置かれているだけでほかには何もない。寝室なんだろうか。自分たちの寝るところ以外に客室を用意できるとはさすが村長宅だ。

とりあえず、このお湯とタオルで身体を拭けってことだろうな。この世界には風呂というのはないのかもしれないな。それか田舎だからってのはあるのかな。俺はタオルを濡らし、体の隅々まで洗う。

そこで、『クリーン』という呪文があることを思い出した。
名前からして、何かを綺麗にする呪文だと思うけどな。俺は試しに薄汚れた布の服に『クリーン』 を使ってみた。
すると、黄ばんだところや黒いシミがみるみるうちに消えていった。

「これは、すげー便利だ」

俺は恐る恐る自分の身体に『クリーン』を使った。すると、体の汚れが取れたのかスッキリとした感じがする。
他にも、髪や歯にも使い、全身を清潔にした。人の身体にも使える呪文みたいだな。
この魔法があればある程度分レベルの低いこの世界でもやっていけそうだ。
だけど、こんなことできるってバレたら変に怪しまれるかな? しばらくは黙っていたほうがいいかもな。

その後、早すぎる就寝時間に寝付けずにいた。
暇つぶしにステータス画面を開いた。ワイルドボアを倒したからだろうレベル5まで上がっていた。そして、見慣れないサーチという呪文まで増えていた。名前からして、物を探す呪文だと思う。というか、今までほとんど呪文を使わずに来たからな。どこかで練習しておかないといざってときに使えないでは困るよね。

とにかく明日、森で呪文の効果を確かめて、それからダンジョンに行ってみよう。できればそのまま日帰りで攻略したいところだけどそうもいかないんだろうな。まぁゆっくりやっていこう。時間はたっぷりあるから。


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ケイスケ・イトー  16・男     1000c
                    
勇者:レベル2→レベル5
聖剣エクスカリバー
HP:D→D+
MP:D→D+
攻撃力:C
防御力:D→C-
素早さ:D→C-
魔力:D
スキル:獲得経験値上昇 言語理解
      鑑定
 呪文:ライト・イグニス・アクア・クリーン・サーチ
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