勇者の冒険(仮)

あべこー

子供の仇


巨大イノシシが今、近づいてくる。身長は俺の二倍くらいある。鑑定を使うと、ちょっとびっくり。

【ワイルドボア:レベル10】

ちょーっと待ってね。いきなしレベル二桁はちょっと厳しいぞ。お母さんよ、落ち着くのだ。俺は待てと合図するように手のひらを向けるが、止まろうとするはずもない。それどころか徐々にスピードを上げ、突進してきた。
この巨体ゆえに、体当たりをくらえばひとたまりもないだろう。俺はひらりとかわすがワイルドボアの突進は木々をなぎ倒していった。

「これ、反則だろ。レベル10でこの強さかよ」

木々を2、3本倒したところで止まり、またも俺に向かって転進してきた。
今度 は、すれ違いざまに剣で切り裂くが一撃では倒れなかった。

「さすがにレベル差があるうちは一撃は無理か。それでもやるしかない」

俺は、ワイルドボアに向かって駆け出し、剣を突き刺した。

「はぁぁぁッ!!」

すると、断末魔の叫びとともに、ドサッっと地面に倒れ、死体は消えた。
俺は剣を腰の鞘にしまうと、ドロップアイテムを拾った。

【ボアの肉】

お、食料ゲットだぜッ。いや、俺こんなキャラじゃないな。
一人で虚しくツッコミを入れる。

「そろそろ戻るか」

村に着き、日が暮れ始めた。エルザの家に戻ると、畑仕事を終えたおばあさんとエルザがいた。

「あら、おかえりなさい。どこに行 ってたの?」

エルザが声をかけてきた。

「ちょっと森のほうに行ってきた。魔物を狩ってたんだ」

そういうと、二人が固まってこちらを見た。

「魔物? またまたー、君そんなに強そうに見えないよ。冗談でしょ?」

エルザは全く信じていないようなので証拠を見せた。

「ホントだって、これみてよ」

俺はワイルドボアの肉を見せた。

「よかったらこれ今晩の食事に使ってよ。お世話になりっぱなしは申し訳ないし」

「うそでしょ……これってワイルドボア? 本当に倒したのね。驚いちゃった」

「あらまぁ、すごいねぇ」


これにはおばあさんも驚いていた。

「でも、大変だったでしょ? これからは無理しないでいいからね?」

エルザがまた泣きそうな顔で心配してくれた。
たしかにそれなりに強かったしな 。喜んでもらえてよかった。
すると、後ろから年配の男性の声がした。

「帰ったぞー。っとなんだお客がいたのか」

この男性はエルザの父親かな?

「お父さん、お帰りなさい」

「おぅただいま。ところでこちらの方は?」

「えっと、私が声をかけたら足を滑らせて川で転んじゃってね。そのまま連れてきちゃった。でもね、この人ワイルドボアを倒せるんだよ。すごいでしょ。今夜はごちそうよ」

どうやら、この年配の男性はエルザの父のようだ。そしてなぜかエルザはエッヘンと威張っていた。

「なんだって? あんた魔物と戦えるのか。若いのにすごいな。俺もワイルドボアの肉をもらってもいいのか?」

「えぇ、もちろん。今日お世話になったお礼です」

「そりゃあありがたいな。行く当てがないならうちでゆっくりしていくといい」

この家の家主に滞在の許可をもらえて一安心だ。まぁそうでなくともエルザは口利きをしてくれるかもしれないが、やっぱしタダ飯食らいは気まずいよな。



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