勇者の冒険(仮)

あべこー

エルザ


すると、小川で服を洗濯している女性がいた。質素なドレスに身を包んでいるが、顔立ちは整っており、ものすごい美人だ。
長い茶色の髪は編むようにしてまとめている。俺は鑑定を使った。

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エルザ 17・女     10c                  
村人:レベル1
HP:F
MP:F
攻撃力:F
防御力:F
素早さ:F
魔力:F
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村人か。一般の人ってステータス値こんな低かったのか。
それにしても美人だなぁ、あんな人と付き合えたらなって思うけど、きっと高嶺の花なんだろうな。村の男から言い寄られているかもしれない。もしかしたら、もう結婚してるかも……。

木の陰からぼーっとのぞき込んでいると俺の視線に気がついたようで手を振ってきた。
俺は慌てて、木の陰から出た。

「あ、えっと、怪しいものではなくてですね。えっと……」

めっちゃくちゃ怪しいじゃねーか。遠くから女性をのぞき込んでるなんて、ヘタしたらストーカーじゃん か。というか、こんな美人の女性と面と向かって話できねえよ。

「こ、こんにち、うおぉッ」

俺は挙動不審になりながら小川を渡ろうとするが足を滑らせた。

「痛ッ」

しまった。転んだ衝撃で頭を打った。意識がもうろうとする。もしかしたら、血がドロドロ出ているかもしれない。

「だ、大丈夫ですか?」

女性が歩み寄り、俺を心配してくれた。なんて優しいんだ。まるで天使、いや女神だ。こんな美人に看取られて死ぬなら良いかもな。あぁ、異世界に来てよかった。
次第に意識が薄れていった。


――夢を見た。
部屋の窓はすべてしまっており、喪服を着た人々いた。それに、前には目立つように陳列された写真。あの写真は俺だ。
そうか。これは俺の葬式なのか。よく見ると 、前列に座っているのは、俺の父さんと母さんそれに妹だ。お坊さんがお経を唱えている中、順々に焼香をおこなっている。
家族だけじゃない。親戚や友達、近所の人まで皆来ていた。母さんや妹なんかわんわん泣いていた。ほかの人たちも悲しい表情を浮かべていた。

「みんなのこと悲しませちゃったな、ごめん」

俺はきっと声は届かないだろうと思いつつも、みんなに謝った。


――ここで目が覚めた。
目の前には、涙を浮かべている女性がいた。夢の続きか? とも思ったが違う。
この女性はさっき川で洗濯をしていた人だ。

「あ、えっと、こんにちは」

俺は女性の泣き顔にドキッとしつつもあいさつをした。
すると、女性が勢いよく抱き着いてきた。

「よかったぁぁ、私が手を 振ったせいで、死んじゃったかと思って……」

なぜかこの女性は見知らぬ俺を相手にわんわんと泣いていた。

えっ、なにこれ、どういう展開ですか??

俺は役得を覚えながらも夢を思い出し、少し罪悪感がうまれた。
また、泣かせちゃったな……。

「心配してくれてありがとう。怪我をしたのは俺が転んだせいだ。君は悪くないよ。でもこんな美人に抱き着かれるのも悪くないかも」

そう言うと女性が顔を真っ赤にして、離れた。

「ご、ごめんなさい。死んだ兄を思い出してしまって、つい……」

「……そっか。俺はヨウスケ。今年で16だ。よろしく」

俺は気まずい雰囲気を自己紹介でごまかした。

「あ、えっと、私はエルザ。私は今年で17歳です。年下だったんだね」

「あんなにわんわん泣いてるから君のほうが年下かと思ったよ」

「なによう、もう」

ふざけて今度は怒らせてしまったようだ。怒った顔もかわいいなぁ。

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