クラス全員で異世界転移!?~厨二病が率いる異世界ライフ~

Akisan

蝕獣と剣聖

「何かすごい疲れたなぁ」
草原に突っ伏し呟く

首の許す限り見てみると
全員、怪我もなく安心した


─────のも束の間

一人の魔術師が立ち上がり
「我らは負けぬ!立ち上がれ同胞よ!
我が命を糧に!─禁止魔法:生命分配!─」
そう叫んだ瞬間その魔術師を中心に
魔方陣が広がり、倒したはずの魔術師が立ち上がる
そのからだの傷は治っている

そして、叫んだ魔術師は石化し動かなくなった
「ふん、使えないわりには良い仕事をしたな」
石化した魔術師の頭を小突くと
塵となり跡形もなく風に拐われていった

「なんて事しやがる…!」
原が怒りに肩を震わせる

「子供相手にこの様とは…あれをやるしかないか」
立ち上がった魔術師たちは一ヶ所に集まり
大きな魔方陣を展開した

「なんだ…この禍々しい気配は」
自然と体が震えるような
悪意に満ちた気配がする
「わかんない…けど、本当に危ないのが来るッ!」

魔方陣が紫色に光り
黒い何かを生成、中から何かが出てくる

ライオンのような体躯
その大きさは以前倒した虎の3倍はあるだろうか
全身は黒く体の横を緑色のラインが
頭から後ろ足へかけて波を描く
地面に降り立つと、そこを中心として草が枯れていく 

「草が…枯れて!何?あれ?」
神崎が恐怖に怯え、声を絞り出す

「うわぁ!木が!」
木澄の目線を追うと
皆を囲んでいた大樹が枯れて朽ちていく

「急に木が枯れたと思ったら
何でこんな禁獣がいるの?」
辺りが見えるようになって光希が一瞬で把握し
状況確認をしている

「禁獣?」
原が聞き返すと
「太古の昔、人間が生まれる前からいるとされる
4体の獣、その一角、『蝕獣』
神に近い存在、本来ならこんなところには
来ないんだけどね、大人数の召喚魔法で
呼ばれたかな」

「神に近いって言っても神じゃ無いんだろ!?
いつか倒すんなら今やってやる!」
原が刀を片手に駆け出す

「ちょ、原ちゃん!戻って!無茶だ!」
されど走っていく原

「蝕獣が動く!」
駆けていく原を見て蝕獣が消えた・・・が、次の瞬間
「うわぁぁぁぁ!」
原の目の前に現れその右手で原を薙ぎ払う
そのようすは玩具で遊んでいる
猫の動きそのものだった
地面を這うように飛ばされる原
「よくも原を!」
木澄が大木を呼び攻撃するが
木が枯れてしまい攻撃にならない

「黒秋!」
秋は自分の意識をもう一人の自分に預けた
「全く、都合の良いときに頼りやがって」
スイッチが切り替わる

その直後、秋は蝕獣にあと少しまで近づき
「龍の名をその身に刻め!─龍刻─」
自身の持つ最大の力で叩き付けたその技は
蝕獣に当たることなく地面を大きく抉った

「なんて速さだよ」
背後を見ると迫り来る大きな手
あえなく吹き飛ばされる秋
「ぐはぁっ!」
肺から酸素が零れる
しかし、秋が吹き飛んだその先
蝕獣はそこで待ち構えていた

蝕獣の二撃目によって秋は空へと飛ばされる
かなりの早さをもって重力に逆らっているなか
三撃目が秋を襲う
叩き落とすかのように繰り出され
秋は抵抗を許されず地面へと吸い込まれた

「サイトー!!」
木澄はたまらず叫んだ
しかし、その声は蝕獣のターゲットになるには
十分だった

多くの人間を見つけ蝕獣は自身の力を口へと込め
放ってくる、放射状に広がり
全員を襲う
恐怖のあまり動ける人はいないが

皆が死を受け入れたとき
蝕獣が放ったそれが
とたんに二股に裁断された
異変に気づいたのか
蝕獣は様子を伺っている

「遅くなってすまないこれでも全力で来たんだ」
目測2メートルを越える白銀に光る刀を携え
男の人が立ちふさがっている

「何故、あなたがここに?」
光希が聞く
「膨大な魔力を感じたのでね走ってきた」
壁の国の方を指差し言う
「ね、ねぇ光希?この人は誰?」
木澄が訪ねると

「この人が人類最強の男─剣聖─!」

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