邪神使徒転生のススメ

黒イライ

35.制裁

 「…それじゃあミーちゃん、行こっか」

 「はい」

 マヤが出発して少しした後、私とミーちゃんも出発した。
 恐らく今頃マヤが上手く闇影術式オスクロソーンブラを使って人質を助けているだろう。マヤは多分気付いてないだろうけどマヤは出会った頃より大分強くなっている。もちろんステータスが強くなってるのは分かってるけどそれ以上に精神的に強くなっている。私が毎日『すぱるたれっすん』してるからね。

 マヤのことはとりあえず任せておくことにして私達は私達のことをしよう。
 今回私達はわざと敵の誘いに乗る。まあ敵の奇襲を待つってことなんだけどね。そうしないと人質の人達がどうなるか分からないからね。私はマヤみたいに場所把握とかで敵の位置を確認出来たりしないから今までの経験を信じるしかないけどまあ奇襲は防げるでしょ。前にミーちゃんを助ける時に戦ったエルフは雑魚だったし。というより私から見たら残念ながらこの世界の人は大抵雑魚に入ってしまう。私より強い人がいるなら逆に見せてほしい。

 話が逸れた。とりあえず私達は作戦進行の為にこの森を歩くしかない。流石にいつ来るか分からないから警戒を怠れない。それでも……

 「…ミーちゃん、大丈夫だよ」

 「え?」

 「…さっきからミーちゃん、強ばった顔になってるから。まだ心配してるのかなって思って」

 「あはは…すいません……マヤさんを信頼してない訳では無いですけど、やっぱり心配で……」

 ミーちゃんは自分のせいでこんな事になってるって思ってるからこんなに心配してるんだろうなぁ。

 「…ミーちゃん、何度も言うけど今回のことはミーちゃんのせいじゃないからね」

 「…はい、でも………」

 …もうこれはどうしようもないかも。さっさと敵を片付けたらいいかも。いっそ森ごと吹き飛ばすか……。

 「……!ミーちゃん、敵が来てる。警戒して」

 「……!はい!」

 敵の数は……正確には分からないけど…10?いや20はいるかも。随分と大所帯で来たみたいだね。まあミーちゃんには指一本も触れさせないけど。

 警戒しながら待っていると数分後、周りから音も無く魔法が飛んできた。やっと攻撃してきた。もちろん無詠唱で《シールド》は張ってある。
魔法が着弾し爆発音が響き渡る。

 「やったか」

 エルフ達がこちらへ近づいてくる。さっきの魔法で仕留めたと思っているようだ。まあ一人一人の魔法の威力はアレだけどあの数だしね。油断しても仕方ないかな。
煙が晴れ中から無傷の私達が現れる。

 「な、何だと!?」

 「あれだけの魔法を受けながら無傷だと!?」

 「…それで?何か用事?急いでるんだけど」

 集団の中からリーダーらしき人物が出てきた。

 「そこの銀髪のエルフを引き渡せ。そうすれば行ってもいいぞ」

 「…お断り」

 「そうか、ならば仕方ない。こちらには人質がいる。お前達と親交がある精霊の里の精霊と…そこの銀髪エルフの親だ」

 「……え?お父さんと、お母さんが……?」

 「…精霊達だけじゃなかったんだ」

 これは予想外だった。マヤがこの事に気付いていれば良いけど…大丈夫かな。

 「おい、人質を連れて来い」

 「はい」

 手下のエルフが恐らく人質がいるであろう場所に向かおうとする。しかし────

 「た、大変だあっ!!」

 「どうした」

 「ひ、人質が誰も居なくなってるんだ!見張りのやつと様子を見に行った奴らが縛られてたんだ!」

 「何だと!?」

 どうやらマヤは上手いこと救出出来たようだ。人質が誰も居ないということはミーちゃんの親も助けたということになる。
ここからは私の番だね。暴れるよ。

 「…どうやら人質は居なくなってるみたいだね」

 「くっ……!」

 「…あなた達、覚悟はいい?私、怒ってるんだ。ミーちゃんを悲しい顔にさせたこと。だから、制裁してあげる。安心して?殺しはしないから」

 私はローブを外して鬼族オーガの象徴である角を見せる。こうした方が、恐怖を煽れる。

 「な……!!その角は…!鬼族……!!!」

「…一人残らず、私達に喧嘩を売ったことを後悔させてあげる」

 「い、いけえぇぇぇぇぇ!!!!!怯むなぁぁぁぁ!!!」

 「「「おぉぉぉーーー!!!!」」」

 直接近接戦闘をしようとする者、魔法を撃とうとする者と分かれる。どちらにしても関係ない。全員、吹き飛ばす。

 「《ウインド》」

 短文詠唱をして起こした魔法はシンプルな突風の魔法。通常だと相手の足を止める程度の魔法だが伊達にLv.147ではない。

 「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 竜巻を起こしたように風が吹き、エルフ達を上に上げる。魔法を解除し全員地面に墜落する。この時点で骨を折っている者や戦闘不能の者もいる。が、容赦しない。

 「…流石に精霊装ラリューザル神斬テナーは勘弁してあげる。あれ使うと王都の近くぐらいまで被害出そうだし」

 これは冗談でも何でもない。スキルが発現した時誰もいない平原で試したことがあるが半径5kmには確実に被害を受ける。近くに人がいたとしたら何も残らずこの世を去るだろう。

 「…その代わりに、これで痛めつけてあげるから」

 愛用の鞭を取り出し鞭を振る。

 「「ぐわぁぁぁぁ!!!」」

 鞭自体が強いのもあるが力が並大抵の人とは違う。

 「…ほら、ほら。まだよ。あなた達がミーちゃんにした事に比べるとまだ温い。早く立ちなさい。ほら、ほら!」

 ミーちゃんが辛い逃亡生活を送ってたことは最初見た時に分かった。話を聞いたら尚更。しかもあれを一年間も。この程度でどうにかなるものじゃない。

 「シェイさん!これ以上やると……その人達が危ないです!私はもう大丈夫なので、やめてください!」

 「…でも、こいつら…」

 「シェイさん……!」

 「………ミーちゃんが言うなら……」

 私は攻撃をやめる。でも、まだ足りない。どうしたものか……。あ…あれ使えばいいや。

 「…ミーちゃんに免じて攻撃は止めるけど、最後にあなた達には呪いにかかってもらう」

 「の、呪い……?」

 倒れているエルフ達は死ぬ程ではないが殆どの者が喋れる状況ではなかった。

 「…そう、呪い。あなた達には二度とミーちゃん達家族に近付けなくしてあげる。ミーちゃん達に近付くに連れて身体は軋み、悲鳴をあげる。もし苦しみに耐えてミーちゃん達に触った瞬間、絶命する。分かった?」

 「わ、分かった……も、もう二度と近付かない………」

ちなみにこの呪いは感染型となっている。エルフにだけ感染させる呪いにした。別部隊が来ても大丈夫なように。

 「…さて、じゃあ一旦集合場所に戻ろっか」

 「はい!……シェイさん、私の為に、ありがとうございました!」

 「…うん。私はその笑顔が見れただけで十分だよ」

 久しぶりに見た気がするミーちゃんの笑顔は、とても輝いていた。

 
 

 


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