邪神使徒転生のススメ

黒イライ

21.模擬戦

 3階層で大熊ジャイズリーを倒した後、魔法石を取ってから《迷宮ミゴン》を出るべく上へ向かっていた。

 「そう言えば、この後ちょっと模擬戦に付き合ってもらってもいいか?」

 「…何で模擬戦なの?」

 「いや、人との戦い方も一応練習しておいた方がいいかなーって思ってな。」

 模擬戦については俺達は邪神使徒だから女神教の奴らに狙われる可能性があるという話をシェイから聞いた時から考えていたことだった。
 もし女神教に襲われた時に実戦経験がなくて負けました、なんてことにはなりたくない。
 シェイのお荷物にはなりたくないのだ。

 まだ俺は強さではシェイの足元にも及ばない。だからシェイに人との戦い方を教えてもらおうと考えていた。

 「…ふーん、まぁそれぐらいなら別に大丈夫だけど。」

 シェイが満更でも無さそうな感じで返答した。

 ちなみにシェイは俺と二人きりの時は《迷宮》の中でもフードは取っているから顔は見ることが出来る。

 「そっか、ありがとなシェイ。」

 「…大丈夫。気にしないで。これからも毎日この時間ぐらいには切り上げて模擬戦にする?」

 「そうだな、それでお願いする。」

 「…ん。分かった。」

 シェイが快く受けてくれたので早く《迷宮》を出ることにする。


 10分程して《迷宮》を出た後、最初にシェイに魔法を教えてもらった森の中に入った。魔法の練習をした森は少し開けた感じになっていて練習場所には打って付けだ。


 「…じゃあとりあえずやってみよっか。魔法は有り?無し?」

 「じゃあ有りで。」

 武器はその辺りにあった片手剣程のサイズの木刀を二人とも使っている。

 「…ん、分かった。とりあえず最初は特にハンデ無しでやるね。」

 「おう、分かった。」

 「…じゃあかかってきて。」

 シェイが攻撃を受ける体勢になったのでお言葉に甘えてこちらから仕掛けることにした。

 「清廉なる水よ、貫く刃。《ペネトレイトウォーター》!」

 水で作られた刃をシェイに向けて放つ。
 だがシェイは避けようとせずに一歩も動かず佇んで右手を前に出した。

 「…防げ、《プロテクション》。」

 シェイが一言呟くと水の刃は見えない壁のようなものに阻まれ弾け飛んだ。
 ていうか何だあれは、詠唱時間短すぎるだろ。

 「じゃあこれでどうだ!全ての空気よ火へと為れ。《カーロスフィア》!闇の刃よ、虚無に帰せ。《フォンセボイド》!」

 魔法を連続で発動し《カーロスフィア》は横から、《フォンセボイド》は正面からシェイへと向かうようにコントロールする。

 「…無駄だよ。消滅せよ。《ラディーレン》。」

 俺が放った魔法はシェイに触れる前に全てが消えた。
 なんだよあの魔法…。全然魔法が通じない。
 それなら────。

 「魔法が無理ならもう近接戦闘しかねーな…!」

 魔法は恐らくこのままだとシェイに防がれてしまう。それならいっそ近接戦闘をしつつ魔法を織り交ぜていくしかない。

 「…まあそうなるよね。」

 シェイがそう呟くと木刀を構えた。

 お互い木刀を構えて睨み合いが続く。やはりシェイは自分から動く気はあまりないようで全く動かない。ということは必然俺から動くことになる。
 まあ練習だしシェイから動くことはあまりないか。最初は俺の動きを見て見極めるみたいな感じか。

 シェイが攻めてこないためこちらからシェイに向かって木刀を横に薙ぐ。シェイは木刀を縦にしてそれを防ぐと俺の木刀を跳ね除け俺の首に向けて突きを放ってくる。俺は何とか突きを回避して横に転びながら次は足に向かって木刀を振る。
 足に向けて放った木刀はシェイに踏みつけられた。

 「なっっ!」

 シェイは木刀を踏みつけたまま俺に木刀を叩き付けようとした。

 「…っ!」

 「…ふぅ。何とか逃げることは出来たか…。」

 「…今のは…さっきの《カーロスフィア》だね。1発だけ後ろに忍ばせておいたのかな。」

 「ま、そんなこった。まあ普通に木刀踏まれた時はどうなるかと思ったけどな…。」

 俺はさっき撃った《カーロスフィア》を1発だけ自分の背中に忍ばせておいてもし危険な状態になった時対処出来るようにしておいた。あれがなければさっきでもう終わってただろう。

 「…今日はここまでにしよっか。」

 「最後までやらなくていいのか?」

 「…まあ初日だしとりあえず大丈夫。どんな感じで戦うか知りたかっただけだし。」

 まあ最初だしそんなもんか。というより、全く相手にならなかったな。魔法では手も足も出なかったし近接戦闘でもすぐに武器を封じ込められてやられそうになった。やっぱ戦い慣れてないからキツいものがあるよなぁ。これから頑張っていかねーとな。

 「…まぁ多分マヤは自分の課題点ぐらいは分かってると思うからあんまり言わないよ。」

 「そっか。まあ一応課題点は色々考えてたからな。それよりさ…あの魔法すごかったな。全部封じられたし、それに詠唱時間も短かったよな。」

 「…詠唱時間が短いのは私に詠唱時間短縮のスキルがあるからだよ。簡単な魔法なら詠唱無しでも発動出来るよ。あとあの魔法は別に特別強い訳じゃないよ。ただ単に魔力の練り方が違うだけ。」

 「魔力の練り方?」

 「…私は極限まで魔力を練り込んで無駄のないように魔法を構築してるの。それに比べてマヤの魔法は表面的なものばかりで練り方が甘い。元々の魔力の質はマヤの方が上だから練り方がよくなればあの魔法も破れるよ。」

 なるほどな…。一筋に魔法って言っても色々あるんだな。
 練り方か…魔力を練るんだからやっぱ魔力に触れないと駄目だな。暇な時間があれば魔力を練り込む練習してみるか。

 「…まあ今日はこの辺りで帰ろっか。ギルドでステータスボードも買わないといけないし。」

 「そうだな、帰るか。」

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