邪神使徒転生のススメ

黒イライ

11.初戦闘とシェイ

 色々あったけどとりあえず魔法も教えてもらったし、少しは戦い方も教えてもらえたから俺達は《迷宮ミゴン》に向かうことにした。

 「ここの《迷宮》は何か特殊な造りになってるのか?」

 このあいだシェイが言ってた《迷宮》の特殊性、この街の《迷宮》には無いのかな。………決してびびっているわけではない。

 「…ここは特にこれといった特徴は無かったはず。確かに《迷宮》によって色々変わるのは変わるんだけど、半分ぐらいは普通だよ。」

 なんだ。そんなに普通のところ多いのか。まあ別に普通が1番いいよな。


そんなことを話している間に《迷宮》に着いた。いよいよ異世界転生後初戦闘だ。少し緊張するが体が動かない程ではない。

 「じゃあ行くか。ここまで何か長かった気もするが。」

 「…細かいことは気にしない。早く行こう。マヤは宿代がないんだから最低でも宿代分ぐらいは稼ごう。」

 あ、そうだった。俺今金1銭も持ってないんだった。宿代稼げなかったら野宿になってしまう。それは避けねば。

 「そうだな。俺も野宿は嫌だからな。」

 「…私ってそんなに厳しいと思ってる?マヤが宿代稼げなかったら私が代わりに出すよ。…野宿されると後味悪いし。」

 「マジか、まあでも女の子に代わりに出してもらうのもカッコ悪いし稼がねーとな。」

 そんな話をしながら俺とシェイは《迷宮》の中へと入っていった。


 初めて入った《迷宮》の中は思った通り少し暗い洞窟みたいな場所だった。
 シェイから聞いた話だと各階に下へと続く階段があるらしい。今日は地下2階あたりまで探索するらしい。
 何でも、それぐらいならマヤ1人でも倒せるから、らしい。俺もシェイに助けてもらわずに1人で戦える様にならないといけないから丁度良かった。

 「…マヤ、前から敵、来るよ。」

 シェイがそう言ったすぐ後、狼のような四足歩行のやつが出てきた。

「…あいつは虎狼バーグウルフ、見た目ちょっと強そうな感じするけど、基本体当たりかかみつくぐらいしかしてこないから冷静に対処すれば余裕。」

 シェイ様から有難い情報を貰ったところで早速戦闘を始めることにした。

 「さて、初陣なわけだけどさっさと片付けますかな。」

 俺は武器の短剣を構えた。ちなみにギルドでは二刀流みたいなーとか言ってたけど戦闘練習の時に、シェイから慣れるまでは片手だけで使えと言われたから1本しか持っていない。

 まず最初に仕掛けて来たのは虎狼バーグウルフだった。
 虎狼が速いのかと思ったけどそうでもなかった。練習の時シェイに教えてもらった通りに最小限の動きで避ける。
 少し掠ってしまって腕の部分の服が少し破れてしまった。もう少し練習しないとな、これ以上速い魔獣も出てくるだろうし。
 

 ひとしきり攻撃を避ける練習をしたのでそろそろ攻撃に移ることにする。

 「…マヤ、そろそろ攻撃。もう避ける練習も充分でしょ。」

 シェイにも催促されたので攻撃する。

 相手の動きをよく観察し、動きを読む。虎狼が噛み付いて来た時横に避け、短剣を虎狼の喉笛へと突きつける。

 「……ふぅ。何とか倒せたな。シェイ、どうだった?俺の初陣。」

「…30点。」

 「え。」

 シェイが辛口評価をした直後、俺の背後、虎狼が爆ぜた。

 「…こ、これは?」

 俺は恐る恐るシェイに問いかけた。

 「…私の魔法。そいつバーグウルフ、まだ生きてたから。」

 え、マジか。ちゃんと喉笛切ったと思ったのに。

 「…マヤ、虎狼は雑魚だけど意外としぶとい。だから喉笛1回切っただけで満足しないの。片手剣ならまだしも、マヤが使っている短剣は手数は多いけどその分威力が低いんだから。」

 「…とまあ、これがマヤの初戦闘への評価かな。」

 大分辛口ではあったが全て正論である。シェイが助けてくれなかったら俺は大きくはないだろうけどダメージを受けてただろうし。

 「…誠に有難いお言葉ありがとうございます。これからも精進致しますので、何卒ご協力をお願いしたく。」

 「……ふふっ、ふふふっ。何、それ?変な敬語。」

 あれ?精一杯の誠意を込めてお礼を言ったはずなのに何故笑われてしまったんだ。
 うーむ。女の子の考える事は理解出来んな。

 というか、何気にシェイがこうやって自然に笑うの見たの、初めてじゃないか?
いつも顔までローブがかかってて顔はほとんど見えないし、笑う時は大体俺を嘲笑う時だからな。

 「なあ、シェイ。もし良かったらローブ外してくれないか?」

 「…一応聞こう。何故?」

 「今、シェイの笑ってる顔をローブで隠れてない状態で見たいから。」

 何か、こういう事普段言わないんだけど、何か急に言いたくなった。

「…マヤは、変わってるね。…私の姿を見たら、殆どの人が私から離れていく。離れなかった人間は2人だけ。…マヤは、どうかな?」

 少し試すような表情でシェイが俺の目を見てきた。少し悪戯心があるようにも見える。

 「大丈夫だ。シェイの姿がどんなのでもシェイはシェイだ。心配すんな。」

 「…ふふっ、ほんと、マヤは変わってる。……いいよ、私の姿、見せてあげる。」

 そう言ってシェイはローブを取った。ローブを外した先のシェイの姿は──



 「……なんだ、別に普通じゃん。」

 ローブを外したシェイの姿は、小さな角が生え、澄んだサファイアの髪が神々しく、《迷宮》中で輝きを放っていた。

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