邪神使徒転生のススメ

黒イライ

01.邪神ご対面

  高校に入学して半年が経った。最初は高校に馴染めるか不安だったが、今はそんな不安はない。毎日そこそこに楽しく生活している。家族関係もそれなりに良好だ。

  だが、そんな普通の暮らしは唐突に終わりを迎えた。自分の身体が謎の光に包まれ、光に全身が包まれた瞬間身体に激痛が走った。今まで普通に暮らしてきた魔夜にとって経験したことがない痛さだった。いや、そもそも人間なら誰しも味わったことがないであろうという程の痛さだった。全身が軋む、声が出てこない、一歩も動けない。まるで呪いのようだった。そして、魔夜の意識はそこで途切れた。







「………ここ、は?」

   俺はゆっくり目を覚ました。しかし、目を開いてみた光景は全く見たことがない場所だった。というよりこんな場所世界中どこを探しても無いんじゃないか?周りは炎が噴き出していたりマグマが絶えず流れ続けていたりと、全く現実的ではなく、少なくとも日本にこのような場所は無かったはずだ。

「一体ここはどこなんだ…」

    そう呟いた瞬間、突然虚空から少女が飛び出してきた。

「っと。…ようこそ、死後の世界へ…って言えばいいのかな…?」

   ……え?今なんて?死後の世界?ちょっと待て、どういうことだ?もしかして物語系によくある転生イベントみたいのだったりするの?
    俺が無言になっているのを見て、目の前の少女は慌てていた。

「あ、あれ?セイラに言われた通りやってみたんだけど…何かおかしかったかな…?」

   目の前の少女が慌てているのを見て少し冷静になった俺は、もう一度周りをよく見渡してみた。地球ではあり得ない自然環境、何もないところから現れた少女、そして目が覚める前のあの謎の光、からのあの激痛。…こんだけ不思議なことが起きているということは、何か理由があるはず。もし俺が死んでいたとしても、この少女は事情を知ってそうだ。取り敢えず聞いてみよう。

「あの、さ。ここが死後の世界ってことは、俺は死んだのか?」

「あ、はい!あなたはついさっき死にました!」

   満面の笑みで少女が答える。…なんかちょっと傷付くな。俺は改めてこの笑顔が似合う少女を見てみた。白い肌に腰まで伸びた綺麗な黒髪、身長は145cm前後ぐらい。服は動きやすそうな黒のドレス、黒のスパッツを履いて靴も黒だ。ここまで黒が揃うと違和感があると普通は感じるが、この少女に至っては違和感ではない。むしろこれが正しい服装だ、という感じがする。

「えー…と。とすると君は誰?もしかして神様とか?」

   俺は冗談混じりに笑いながら問いかける。この少女は神の風格的なのがあまり感じられない。

「まあ、一応そんなものです。」

   本当だった。こんな可愛い神っているのか?

「マジか…じゃあここってどこなんだ?」

    俺は気になっていた部分を聞いてみた。

「うーん…なんて説明したらいいんでしょうか…。私専用の部屋みたいなものと思ってくれたらいいですかね。」

  「部屋…か。にしてはちょっと…いや、かなり物騒な感じがするぞ。」

 「まぁ、私神は神でも邪神ですからねぇ。」

 「へー…そうなのか。…………………は?」
 
 え、この子邪神なの?こんなに可愛いのに?天使にだってこんなに可愛い子いないよ?天使なんて見たことないけど。

 「まあ、私も自分が邪神らしくないっていうのは分かってるんですけどね…。セイラにも言われました。」

 「そのさっきからちょこちょこ名前が聞こえるセイラ?ってのは?」

 「私と真逆の存在の女神様です。」

 ほー…。神様…。……もうスケールが大きくなってよく分かんなくなってきた。神様と邪神なのに何となく仲よさげな感じするな。この辺も俺のイメージとは違うな。

 「なるほどな。…いろんなことが起きて頭の整理はまだ追いついていないけど…、取り敢えずあんたの名前聞いてもいいか?」

 「あ、申し遅れました。私の名前はシンラといいます。以後お見知りおきを。あと邪神ですけど敬語はいらないですよ。…最初から使ってなかったですけどね。」

 邪神の少女…シンラがジト目でこちらを見つめてきた。

 「う…す、すまん。あまりに驚きのことが起きすぎてそこまで気が回らなかったんだ…。」

 「ふふっ。大丈夫ですよ。怒ってないですから。」

 シンラが笑ってこちらを見る。かわいい。

 「そ、それで、何で俺はシンラのところに来ているんだ?俺は死んだんだろ?」

 俺はここに来てずっと疑問に思っていたことを聞いた。すると何故かシンラから変な汗がぶわっと噴き出して下を向いた。

 「えー、と、それは、です、ね、普通は死ぬとここを経由せずに悪人は地獄へ、それ以外は天国の方で処理が行われるわけなんですよ。」

 「じゃあ何で俺はここに来ているんだ?」

 「………うぅ。それは…ですね…、………てしまったから……。」

 「ん?最後の方がよく聞こえなかったんだが…」

 そこでシンラは何か吹っ切れたかのように顔を上げた。

 「わ、私が!間違えて!魔夜さんを!殺してしまったからです!」

 ……………あんだって?

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