とある事件の物語

ryuka

とある事件の真相(1)

はぁ……退屈だ。
そう思いながら、私は目の前の4人を見ていた。
4人の名前は
『アレン』『イヴ』『ラド』『ルト』
アレンはこの館の主でイヴはその娘。
ラドは天才的な科学者らしく、
ルトは地位の高い警察の様だ。
何故この4人が集まったかと言うと、
それは数時間前に遡る。

「妻が……殺された……」

青ざめた顔でアレンが言った。
「お前らの誰かが殺したんだろう!?」
表情は一転、顔を火のように赤くした。
被害者はアレンの妻『レイラ』。
首から流れ出る血はまだ固まっていないので、
アレンはこの中の誰かが殺したと思っているようだ。
それもそのはず。無駄に広い館なのにメイド等
一人も雇って居ないため、この4人しか人はいなかった。

「客人を疑うのか?……もしかしてその娘が殺した……とか」

目も、髪も、肌も真っ白なラドが恐ろしく冷たい声で言った。

「そんなことある訳が無い!
イヴはまだ十二歳だし、第一首を
何者かに噛み切られている!」

娘を疑われたアレンが怒鳴る。
その時にアレンの鈍色(にびいろ)の髪が揺れ、
同じ色の目も見開かれた。
「そもそも首を噛み切られるとは
どういう事だ?動物でも入ったのではないのか?」

腹が立ったのか、すかさず言い返すラドに
続き、今度はルトがラドに反論した。

「動物など入ったら、我々がすぐに気付く
だろう。小さな部屋なのだし、首を噛み切られて
出血多量で死に至る程の動物なら、奥方も悲鳴を上げ
隣の部屋にいた我々が気づくだろうし、
ドア以外には産まれたての赤ん坊が通るような通気口しかないではないか」

ルトがイライラしながら言った。
手を後ろに回し、束ねている黒髪を
結び直しながらも、前髪から覗く目はしっかり2人を見ていた。
……いや、睨んでいた。

「悲鳴も出さず、油断しながら殺せる……
やはり、この娘しかいないだろう」

鋭い目つきでラドがイヴを見た。
イヴが視線に気付き、細い身体を
微かに震わせた。
それを見たラドが冷笑を交え、
目を細めながら

「何てったって、私達は3人とも
隣の部屋で話をしていたではないか。
途中で部屋を抜け出したのはその娘しか
いない。どうだ、全て繋がるぞ?」

と言った。

しかし、もうイヴは震えていなかった。
俯いていて、表情は見えないが。
つまんないな。とでも言うように、
静かにラドが鼻で笑った。

「だが、もしもイヴが犯人だとして、
妻は悲鳴を上げるはずだ!!
悲鳴など、聞こえなかったぞ!?」

言い争っている内に時間が過ぎていき、
今に至る。という訳だ。
私が考え事をしていると、
バンッ!!
と、突然音がした。
黙っていたイヴが壁を叩いたようだ。

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