憂鬱日和

飯田三一(いいだみい)

1話 奴隷

君はきっとこう思うだろう
この、残酷な世界にも、きっと希望が、あるはず
そんな言葉は嘘だ
ってね
 
1話 奴隷
「やっと、ついた!」
「お前、寝顔最悪だったぞ?」
「うっせー」
みんなの声が聞こえる、みんな楽しそうだ

私は作業を続ける
 
誰かが私を蹴った
それをみんなが笑っている
 
私は作業を続ける
 
けれど、これはきっと、当然の報いだ
トレンチコートを着た女性は言う 
「いつもありがとうね」 
この人だけは、いつも優しい
私は一つお辞儀をした
 
私は作業を続ける

屈強な男がやってきた
「おい、お前何をしている」
「なんでもないわ、少し調教していただけ」 
「おい、奴隷、サボったら、殺す」
「はい」 

私は作業を続ける  
 
「アイツは使えないな、機会があれば殺してしまっても構わんぞ」
「なら俺が殺すぜ!」
「君にはまだ早いぞ~」
気にしてはいけない、いけない
 

やっぱりだめだ、ここでサボって死にたいと思ってしまう
私は感情を捨てたい、けれどやっぱり捨てられない
結局人間はそうなのだ
自分は自分に絶望した
 
私は作業を続ける
 
 
 
 
数ヶ月が経った
この間に起こったことと言えば
トレンチコートの女性が崖で足を踏み外し死んだこと位だ  

この時、私は目から吹き出すものがあった
何故かは知らない
知るべきではない
ここで、私は
奴隷は泣くべきではないと言われた
泣くとは、今私がしてる行為だろう
でも何故だろう、止めることが出来ない
「泣き止まないなら、殺す」
銃を背負った男が言う

私はこれを抑えることはできなかった

私は男に撃たれて死んだ
 
これは別に大したことではないだろう

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