貧乏だけど、ハイスペックです!
第9話 にしても広い。
桃華の説教から解放された二人は、廊下を歩いていた。
風子が誠也に屋敷を案内していたのである。
「それにしても本当に広いですよね〜、このお屋敷」
誠也がのんきにそんなことを言っていると、
「まあ、私や桃華ですら、この屋敷の全容を把握しているのか怪しいところだからなー」
まじかよ、そんな広いのかよこの屋敷っ!
と、ついプライベートモードの口調で心の中でツッコんでしまう誠也。
だが、それも致し方ない。
住人が把握しきれていないほどの広大な屋敷でこれから働くというのだから、それくらい驚いて当然なのだ。
むしろ、驚かない方が異常と言えるくらいだ。
「ほ、本当にとんでもなく広いんですね〜」
「ああ、とんでもなく広いぞ、ここは」
と、着々と案内は進んでいく。
「ここがシアタールームで、映画以外も映画気分を味わいたいと思ったら、いつでもここでアニメもドラマも映画気分で堪能できるぞ。好きに使うといい」
もう、なんでもありかよ。
またもプライベートモードになってしまう誠也。
無理もない。普通、こんなのありえないのだから。
「あっはは、こんな広い部屋で映画気分で視聴するなんて、僕にはとてもじゃないけど無理ですよ。落ち着きません。貸切は嬉しいですけど、やはり、こういうのは誰かと一緒じゃないと……」
「まあ、そうだよなー。実際、私も桃華もここはそんなに使ってないんだ。まっ、気が向いたら使ってみるといいさ。それと、一人が嫌なら私や桃華がいつでも一緒に映画気分を味わいに来てやるぞ?」
「わあ、それはありがとうございます。では、気が向いたら声をかけさせていただきますね」
たぶん気なんて向かないと思うけどね……。
「ああ、遠慮せずにな。ささっ、次だ次!」
と、次の部屋のドアを開ける風子。
お気に入りの部屋か何かなのか、浮き足立っている。
「じゃーんっ!ここは、プレ◯テ部屋だ!」
なっ、なに!プレ◯テ部屋だとっ……?!
って、なんだそれ……!!
なんでプレ◯テ部屋?!
ゲーム部屋でいいじゃんっ!なんでっ?!
心の中で激しく一人ツッコミをする誠也。
その様子をみて風子は、誠也が喜んでいると思ったらしく、
「なんだ、お前もひょっとしてゲーム好きなのか?!」
目を爛々とさせている。
それを見た誠也はやれやれといった感じで、
「いや〜、興味あるにはあるんですけど、生憎今までが今までというか、親が親というか、まあ、そのいろいろあってゲーム、したことないんですよね……」
「あ……あぁ、そうだったのか、悪いな、なんか。
あっ、そうだ!じゃあちょっと今から軽くゲームしていかないか!?
私もちょうど遊び相手が欲しいと思っていたのだ!
桃華はやってくれるけど、仕事ばかりであんま時間取れないんだよ〜」
と、頰を風船が如く膨らませて愚痴を言うお嬢様。
贅沢なこったい、と思いつつもじゃあ、と誠也はコントローラーを手に取った。
「それで、どうすれば良いんですか?お嬢様」
「ああ、これはだなまず十字キーで移動して、四角ボタンが弱攻撃、三角ボタンが強攻撃でだな……このキーとここを入力してやればこういうコンボが……あっ、十字キーってのはこの左の文字通り十字形のキーのことで……おお、そうそう、上手い上手い!」
といった感じに、お嬢様の長い長い格闘ゲーム講座は幕を閉じた。
「さて、まあだいたい案内はこんなもんでいいだろう、
そろそろ夕食の時間だな、桃華がきっと支度して待ってくれてるはずだぞ」
「あ、僕も手伝えば良かったですかね。なんだか、とても申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「あ〜、心配はいらんさ、お前の仕事はきっと時期にすぐ入るだろうからな」
といって、同じくらいの歳の小さなお嬢様は踵を返して、食堂へ向かう。
ってか、食堂とかあんのか、流石はありえへん大豪邸。
さて、僕も行こうか、と誠也は歩みを進める。
風子と誠也のそんなこんななやり取りがあった一方で、メイドの桃華はせっせと夕食の支度をしていた。
「う〜ん、さっき叱ったばかりだから、食堂に来づらいのかしら?
ちょっと様子を見にいきますか」
と、食堂を後にした。
この後、風子と誠也が食堂へ入った時には当然ながら、桃華の姿はなく、用意された高級そうなサラダとステーキ、そして銘柄米であるつやひめだけが卓上に置いてあったという。
桃華は、しばらくして食堂へ戻ると、またまた長い説教が始まったそうな。
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