転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

対校戦1日目らしい後編

対校戦の参加校は付近の8校だ。
それぞれの4国がそれぞれ魔法学園と騎士育成学園の2種類が出場するのだ。


「ルーシャ、気になっていたんだが……レアン先輩って何で今年は出場しないんだ?」

「…リリーシアの魔法学園は闘技大会の上位5人が本メンバーの出場権をとるんです。
レアン先輩は…その…初戦で私が…」


言い難いが…私が最初に倒しちゃったんだよね。


「マジかよ…。
あのレアン先輩を……?
ルーシャって1年だろ?」

「はい、そうですが…」

「…すげぇな」


それは賞賛だった。
たった一言の言葉だったがそれでも嬉しい。


「で、何処で話す?」

「控え室でいいと思いますよ」

「分かった。
行くぞ」


イラは私の手をとると歩き出す。
私が少しだけ早足になるとイラは私に合わせるように速度を緩めた。

そして、控え室に着くと早速話し出す。
……前に私はリオを呼び出した。
すると、それに合わせイラも悪魔を呼び出した。

その悪魔はリオとは違い、青い髪に金の瞳をした大人びた様子の悪魔だった。


「…ふむ。
久しいな、憤怒」

「久しぶり、傲慢」


2人はまずそんな挨拶を交わすと傲慢の悪魔、ルシファーは私をジッと見つめてきた。


「ほぅ?
これが魔王様の奥様となる者か…」

「……なるつもりはないのですが…?」

「何故だ?
魔王様以上に良い者がいないと思うが?」


……本当に不思議そうに言っているルシファーに私はため息をつく。


「…私は、ルシャーナと申します。
憤怒の悪魔であるリオの契約者です」

「ルシファー・エルファルト。
七つの大罪、傲慢の悪魔にしてイラニの契約者だ」


私とルシファーがきっちりと挨拶をする中、リオだけは……。


「えっとねー、僕はサタン・エスカリオス!
七つの大罪の、憤怒を司る悪魔で~、ルーシャの契約者!
リオンって呼んでね~」


物凄く軽かった。
…思わず私とルシファーがため息を着くほどに。


「……辛くはないのか?」

「そう、ですね…。
時々、何故私なんだろう…と考える事がありますが後悔はしていません。
それに、リオのおかげでエリー……妹や友人を助けられるんです。
感謝はしても恨むような事はありません。
何より、私は色々な人達に助けられていますから!
私に出来ることはやりたいんです」


すると、ルシファーは安堵したように微笑んだ。
ルシファーなりにリオの事を心配していた事が伺える。
だが、イラは悲しげに瞳を揺らしていた。

そして、リオはルシファーに話しかけた。


「ねぇ、ルシファー。
注意した方がいいと思うんだ。
僕、ここに来てから嫌な予感しかない…。
絶対に何かが起こる。
そんな気がする…」

「……お前の感は外れた事がないからな…。
承知した。
私も注意する事にしよう……。
イラニ、魔力は出来るだけ温存しておけ」

「あぁ、分かった。
んじゃ、俺は行く。
またな、ルーシャ!」


そんなイラに私は笑みを浮かべて応援する。


「はい。
試合、頑張ってくださいね」

「っ……。
ル、ルーシャもな」


また、何故か顔が赤くなった。
だが、止める前にイラは出ていってしまったしまった。
リオには大丈夫と言われたため心配だが、そのままにしておく事にした。


ーーーイラニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺は一撃で負けた。
それは驚くほどに高威力でありながらも仲間を傷つける事もなく、手加減していた事が伺えるような魔法だった。
…そんな魔法で負けたのが悔しくて、俺はそいつにリベンジしてやろうと名前を聞きに行った。


「……おい、テメェ。
…名前は?」


すると、魔法を放った彼女は無視をし通り過ぎようとした。
そのため、何としてでも名を聞こうと彼女の腕を掴んだ。

すると、そいつは漸く俺を見た。
そして俺は驚愕した。

白銀に輝く髪と海を思い浮かべるような綺麗で深い蒼の瞳。


「……何でしょうか?」


彼女は少しだけ冷ややかな声を発した。
それにハッとなり俺は慌てて質問をする。


「……名前は?」

「人に名を尋ねるのであればまずは……」


という彼女に俺は名前を告げた。


「イラニだ!
カーナヴァル魔法学園、2年イラニ・レグイスだ!」


すると、彼女は一瞬顔をしかめたあと、何事も無かったように微笑んで名乗った。


「ルシャーナです。
家名はありません。
……先程は試合とはいえやりすぎてしまい申しわけありませんでした……」


俺は顔が熱くなるのを感じた。


「っ……いや、試合だからな……当たり前だ…!」


俺が思わず顔を背けると彼女、ルシャーナは俺をじっと見ていた。
すると、いきなり俺の手をとった。


「レグイス先輩、少し手を見せてください」

「っ……お、おい!?」


ルシャーナは俺の手の傷を見ていた。


「少し我慢してください。

『聖なる光よ。
私はここに願います。
この者の傷が癒され完治する事を』」


すると、あっという間に傷が消えていく。
王宮の治癒術師でももっと時間がかかるのに、だ。
それだけルシャーナの治癒魔法は上手い。


「これで大丈夫だと思います」


心から安堵したように微笑むルシャーナを見て俺は綺麗だと、そう思った。


「っ…悪い……。
…イラ、そう呼んでくれ」


自然とそう口にしていた。
ルシャーナは少し戸惑いつつも了承してくれる。
イラ先輩、そう呼ばれると心が軽くなったような気がした。

そして、俺はルーシャと呼ぶ事になり、ルーシャは俺をイラと、敬称を付けずに呼ぶことになった。




そして、ルーシャと昼飯をとる事になった。
俺はその時、思いもしなかった事実を知ることになる。

それは、彼女、ルーシャが俺と同じだったという事。
俺と同じように悪魔契約者であり、その悪魔も七つの大罪の一人だった。

俺はこの契約のせいで余計、家や国に縛られて生きてきた。
それは、きっと平民のルーシャの方が大変だったに違いない。
…それを受けても笑っているという事は、だ。
ルーシャは家名がないと言ったがきっと王家に引き取られたのだろう。

大切な人と離れるのは辛かっただろう。
そう思い、俺はルーシャに聞いてみた。


「……辛くはないのか?」


ルーシャが辛いと言うのなら、俺が助けてやれるかもしれないと考えたからだ。
きっと、親父もルーシャの力の事を伝えれば力になってくれるだろう。

そう思っていた。
だが、ルーシャは俺が思っているよりも強かった。


「そう、ですね…。
時々、何故私なんだろう…と考える事がありますが後悔はしていません。
それに、リオのおかげでエリー……妹や友人を助けられるんです。
感謝はしても恨むような事はありません。
何より、私は色々な人達に助けられていますから!
私に出来ることはやりたいんです」


俺とは違う。
ルーシャは俺なんかと一緒じゃない。
俺なんかよりも強くて、綺麗で、何にも負けない強い意思を持ってる。
俺は容姿だけは確かに整っているかもしれない。
そして、力に恵まれている。
だが、ルーシャとは違い周りにただ流されるだけだ。
時々言う、自分の意見だって否定ばかりだ。
そんな俺がルーシャと同じ訳が無かった。


俺は自分の学園の控え室に戻るとルシファーに話しかけた。


「……なぁ、ルシファー。
なんで俺と契約したんだ?」

「…私は傲慢を司る悪魔だぞ?
私がお前と対等である契約を結んだのはお前という人間が気に入ったに過ぎない。
…私はお前の事を意外と気に入っているらしい」


だが、気に入っているだけと言うのであれば対等でなくとも良かったはずだ。
…それこそ、今までのように従属契約だって…。
なのに、何故俺とは対等の契約を望んだのか?


「ふっ…それ以降は教えるつもりはない。
自分で考えろ」


そう告げるとルシファーは俺の中に戻ってしまった。
その答えが分からないまま次の試合の番がやってくる。
そして、入場の前、作戦の段階で先輩が恐る恐る俺に話しかけてくる。


「…えっと、殿下は今回はどうなさいますか…?」

「…イラニでいい。
俺は…指示に従う。
どうすればいい?」


ルーシャは俺のように孤立しては居なかった。
だから、まずはそこから変わり、少しでも近づきたいと思った。


「え……いいの、ですか?」

「…あぁ。
それと、敬語もやめてくれ」

「っ…あ、あぁ…。
そうだな……じゃあ……」


作戦が決まると俺達は何故か勝てるという自信があった。
そして、万全の状態で試合が始まった。
………はずだった。


『っ!?
イラニ!!
避けろ!!
私の名を…』

「っ…ルシファー!!」


俺が名を叫んだ瞬間、目の前が赤く染まった。


「リオ!」


会場外からルーシャの声が聞こえる。
ようやく、周りが晴れ、見渡すとそこには大きなクレーターが出来ていた。
その中心には2人の魔族。
以上な程の力を持つ2人の魔族はルシファーが警戒する程だ。
…という事は、多分、七つの大罪の悪魔だろう。


『あーあ、面倒臭い…。
僕は憂鬱を司る悪魔、バアル。
憤怒と傲慢の王、そして…その契約者を殺しにきた』

『同じく、憤怒と傲慢の悪魔とその契約者を殺しにきた 
虚栄の王、リリスよ』


と、いう事らしい。
憂鬱と虚栄といえば七つの大罪の元だったはず。
となれば相当の実力者だろう。

俺が一人、ルーシャが一人でいけるだろうか?


「駄目だ。
イラニ、お前はまだ私の力を使いこなせていないだろう。
そんなお前では無理だ」

『見つけた。
あの方の命に従い殺させてもらう』

『あの方のために大人しく死になさい』


2人はそう言って俺に向かって魔法を放ってきた。
そんな中、俺は何も動く事が出来ずにいた。



ーーールシャーナーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「リオ!
何なのあの2人は!」

「八つの枢要罪、その2人だよ」


八つの枢要罪か……。
それであの強さ…。
というか、何故私とイラを狙うのだろうか?

そんな事を考えていると、イラに魔法が放たれた。
何をしているのか、イラは避けることをせずにただ、呆然と見ているだけだった。


「『聖なる光よ。
私の願いのもと、この場にいる全ての者に確たる防御となりし結界を!
代償は私の魔力、私の意思!』」


ここでアマテスを呼ぶのは簡単だ。
名前を呼べばいいだけなのだから。
だが、闇と光は相性が悪い。
闇は光を侵食し、光は闇を浄化する。
そんな中、アマテスを呼び出したりでもしたら……ただでは済まないだろう。
だからこそ私は最大の味方になるだろうアマテスを呼べずにいる。


『…光…。
聖属性?
この魔力、巫女…?
だとしたら面倒……』


あっさりとバレた。
他の人を傷つける事なく終わるには……。
そう考えるが全く考えがうかばなかった。

「転生したようなので妹のために奮闘することにしました」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く