転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

対校戦選手らしい


リマに全てを話した翌日。
私達は朝から学園にいた。
その日の授業は全て魔法実技だ。
だが、違うことがあるとすれば対校戦の選手とその補欠の選手は免除され必ず会議室に集まらなければならない事だろう。

と、言う事で私とリマとエリーの3人は会議室に向かっていた。


「お、3人とも来たのか」

「レオニード先輩、昨日はありがとうございました」

「おう!
仲直り出来たみたいで良かったな、ルシャーナ!」

「はい!」


本当に昨日は助かった。
あのままだったらリマとの仲はきっと壊れていただろうし。

他に顔見知りが居ないこともあり私は許可をとり、レオニード先輩の隣に腰掛けた。
そして、私の隣にはリマが座りその隣にはエリーが座った。

そこで最後の1人が入ってくる。
その人物はナレーション担当だった先輩で、名前は……。
……忘れた。


「全員揃っているみたいだね。
じゃあ、まずは自己紹介から始めようか。
放送委員で、対校戦の進行役も務めることになった3年のアンダーです。
説明は僕からやらせてもらうことになってるんだ。
宜しくね」


アンダー先輩らしい。
……多分覚えた。


「同じく、3年のカルアだ。
得意魔法は土。
一応、水も初級程度なら使える。
これでも本メンバーだ。
宜しく頼む」


淡々と説明するように語った先輩のイメージは物静かな先輩だ。
でも、珍しい土属性だけでなく水も初級とはいえ使えるのか。
一応、覚えておこう。


「本メンバーの3年、レオニードだ。
得意魔法は火だな。
それと、光の攻撃も使える。
大抵は複合が多いな。
宜しくな!」


そして次は私の番らしい。
どうやら学年順ではなく本メンバーから先に言っていく形式のようだ。


「本メンバーになりました、1年のルシャーナです。
得意な属性は光です。
扱える属性は……リマ、どうしよう?」

「私に聞かれても知りませんの!

……本メンバーの1年、リマーニですわ。
得意属性は光の結界魔法ですの。
他には水が少々扱えますわ。
宜しくお願いしますわ」

「…あ、えっと、本メンバーになりました、1年のエリアスです!
得意属性は火で、風と光も多少は……。
お姉ちゃんと一緒に頑張ります!」


うん。
エリーは可愛い。
家の妹は世界一可愛い。
それは私が認めよう。


「…補欠の3年、ガルード。
得意属性は風」

「同じく、3年のレミーアです。
得意なのは治癒関連かな。
あとは…強化系のものも得意。
属性は光しかもっていないんだけどね」


ガルード先輩は私にとって、複雑な相手だった。
2人を侮辱された事に対する恨みとリオとアマテスがやった事に対する申し訳なさ。
その2つの相見えぬ感情がぶつかり合っているのだ。


「……3年、レアンだ。
得意なのは水。
無属性には温度変化もある」


先輩は敗者復活戦からだそうだ。
氷を出していたのは温度変化も使ったのだろう。


「ぼ、僕は2年のラサナっていいます……。
得意なのは水…ですぅ…」


気弱そうな先輩だった。
こんな人が強いのかと思ってしまうくらいに。


「あ、僕か。
僕は、2年のフェイ。
得意なのは風。
一応、防御持つかえるよ。
宜しく」


一人称は僕だが女の先輩だった。

アンダー先輩は皆が自己紹介をした事を確認すると私に目を向けた。


「ルシャーナさんは何属性の魔法がどの程度使えるのかな?」


という質問に私は固まった。
何属性と言えばいいか分からなかったからだ。
とりあえず、光(全て)と風は確定として…。


「光と風…でしょうか?」

「嘘だね。
…ねぇ、巫女様?」


……バレてたようです。


「なっ!?」
「は!?」
「……は?」
「……ふぇ?」


などと間抜けな声が先輩方の口から漏れる。
ついつい笑ってしまうのは許してほしい。


「……リマ、エリー…バレてたみたい…?」

「「ルー(お姉ちゃん)ですもの(だもん)」」


あれ?
2人からの言葉と視線が痛い?
何か求めていたものと違う?


「見たことがあったからね。
で、何属性が扱えるのかな?」

「全てです」

「………は?」


私は別に言ってもいいだろうと判断し素直に答えた。
すると、やはり間抜けな回答が返ってくる。


「ですから…全て扱えます。
契約しているので闇も扱えますし
光なら、友人(?)が力を貸してくれます」


闇はリオで光はアマテスだ。
…そういえば、風…シルフィーもいたな。


「風も多分、契約は可能です」

「……巫女ってどれだけ…」

「私はルシャーナです。
巫女なんて知りません。
少なくとも学園にいる間は巫女ではありません」


と一応、言っておく。
すると先輩は苦笑して謝罪をかえしてきた。
それに慌てて頭を上げてもらった。


「えーと…一応、光と風と、もう1つ何か属性を入れてやろうと思っています」

「光へ何を?」

「え…全てじゃ駄目ですか?」

「……分かった」


…何が分かったのだろうか?
私は全く分かっていないのだが。

だが…何属性を使うか?


『ルーシャ!
僕がやる!!』


……リオだと、ねぇ?
…ま、いっか。
使い方だよね。
よし、最後は闇にしよう。


「リオ、お願いだからやり過ぎないようにね?」

『もう…分かってるって!』


リオはえへへ、と笑っているがどうも不安でならない。


「……ルシャーナさん」

「あ、すいません。
契約悪魔って紹介した方がいいですか?」

「……お願いします」


私は頷くとリオに魔力を渡し実体化をしてもらった。


「僕はルーシャの契約悪魔で、リオって呼ばれてるんだぁ!」


リオは可愛らしい笑顔で自己紹介をする。
すると、ガルード先輩に怯えられた。


「な……こ、この前の!?」

「あはっ!
ルーシャ、ルーシャ、これ消そ?
ね、ね?
いいでしょ?
僕の大切な主であるルーシャを侮辱したんだ!
それくらい、いいよね?」


リオは地味に怒っていたらしく魔力で威圧している。
私はすかさず防御結界をはると、怯える先輩を横目にリオに注意をした。


「リオ、駄目。
リオの言う事は洒落にならないから。
リオがやると学園どころか街が消えるから」

「そうだよ!
それに、そんな事したらお姉ちゃんが困るから!」

「……ルーシャが困るなら辞める…。
けど、今度ルーシャを侮辱したら消してあげる!
ルーシャの敵も、ルーシャを侮辱する奴も、そいつの大切な人も…ぜーんぶ、消してあげる!」


渋々だが了承してくれたのかリオは魔力を収めた。
それを確認してから先輩に謝罪をする。


「先輩、申し訳ありません。
リオの言葉は気にしなくて大丈夫です。
後で、よぉーく、言っておきますので」

「あ!
僕、聞きたい事あったんだぁ。
その、対校戦ってやつに、イラニって人出る?」

「……あぁ、カーナヴァルの魔法学園の代表選手か…」


リオの言った人物が誰なのかはよく知らないが問題があるらしく渋い顔をしていた。


「んー…そっかぁ……。
ねぇ、ルーシャ。
…勝ちたいなら僕の力を充分に使わないとキツイよ。
イラニって人、ルシファーの契約者だから」

「…仕方ないか。
アンリ呼んでくる…。
エリー、リマ、悪いけどリオの事…」

「分かりましたわ」

「うん!
任せて、お姉ちゃん!」


先輩に一言断ってからアンリを呼びに職員室へと向かった。
アンリは今日の授業は無いらしいのだ。
……元々人数が少ないのもあるが、何より結界術担当なので他の魔法の所から救援と言う事で生徒が向かったりすることがあるのだ。
その関係で今日は誰一人居なかった。


「失礼します。
アンリ…先生、少しお時間をいただけませんでしょうか?
会議室で少し問題が……」

「分かりました」


廊下に出てからアンリに説明を始めた。
アンリは少し考えてから私の好きにしていいと言ってくれた。


「ありがとうございます。
どうせ、向こうにはバレてしまうので話そうと思います!
幸い私はリオの力をあまり使った事がありませんから」


だからこそ、不意打ちにいいだろうし。
何より、この国にとってもいい結果になるだろうしね。


「分かりました。
あなたがそう決めたのであれば私には何も言う事がありません。
ですが、一応後ろで見ている事にします」


いつも迷惑をかけてしまい申し訳ないと思いつつも甘えてしまっている自分が恥ずかしく感じる私がいた。


「失礼します。
リオ、自己紹介のやり直し」

「ルーシャ、じゃあ!」

「うん。
許可は取った」


アンリからはね。
つまりは本来とるべきもう一人の人物。
国王にはとっていない。
ついうっかり忘れてしまったという体でいこう。
事後報告になるがいいはず。


「やったぁ!
じゃあねぇ、改めて僕はぁ、サタン!
サタン・エスカリオス!
列記とした七つの大罪の悪魔の1人、憤怒を司る悪魔!
今はぁルーシャと主従契約を交わしてるんだぁ」

「ほぼ強制だった気がするけど…」


私がそうボヤくも誰にも聞こえなかったらしい。
……いや、聞き流しているのかもしれない。
特にリオは。


「ルーシャ以外はぁ、リオンって呼んで!」

「憤怒……これがか……。
…ん?
待ってくれ…!
つまり、僕との試合の時…普通に呼び出していたのか!?
どれだけ無尽蔵な魔力なんだ…!!」

「せいぜい5000程度だったと思いますが……。
あれ?
1万5000だったっけ?」

「……おかしいだろ…」


おかしいのは自覚しているから大丈夫だ。
……自覚していればいいという問題でもないと思うが。


「なぁ、ルシャーナ。
その、リオン?
の力ってどんなのなんだ?
見てみたいんだが…」

「そう…ですね……」


私はチラッとアンリを見てお伺いをたてておく。
アンリはため息をついてからいくつかの条件を出した。
その条件とは、私がいつも行っている軍管理の場所出やることと、魔力の解放はしないこと、アンリのいるところでやることの3つだ。
それを了承すると私は早速魔法を行使した。


「リオ」

「りょーかい!」


リオは私の中に入ると転移陣を開いた。
そして一瞬だけ闇に入ったかと思うと次の瞬間には既にいつもの訓練場にいた。

驚く皆を尻目に私は魔法の詠唱を始めたのだった。

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