転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

またもや失敗したらしい



それから何日かたち、魔法の授業は属性別授業へと切り替わった。


「ルー、行きますわよ」

「うん!
エリー、またあとでね」

「うん!
お姉ちゃん、頑張ってね!」

「エリーも頑張って」


エリーは相変わらず無邪気で可愛い。
ただ、この頃フィールと仲が良いのが気になるが。


「ルー、そういえば結界魔法はどの程度まで扱えますの?」

「結界魔法は苦手なんだよね……。
だから精々中級程度かな…?
まぁ、一部使えない魔法もあるけど…」


結界魔法はリオがいるため中々上達しないのだ。
無属性よりも難しいとさえ感じる程だ。
無属性は魔力弾とかの属性がつかないせいで魔力の透明度ってのが必要になるって分かってるからまだ対処はできるけど……。
結界魔法に関してはやりようがない。
リオと離れる訳にもいかないし。


「ルー……簡単に言いますけど初級を使えたらいい方ですわよ?
まぁ、私は上級までなら扱えますが……」


呆れたように口にするリマに私は神妙な表情になってしまう。

確かに、普通ならば初級でいいのかもしれない。
だが、私は巫女だ。
巫女は国を守る砦であり、時には世界を守らなければいけないとさえ言われる。
そんな人物が中級で戸惑っていたら駄目なんだ。
それでは、皆を救えない。
エリーやリマの様な大切な人をいざと言う時に守れないかもしれない。
それは嫌だ。
だから、こんな所でつまづくわけにはいかない。


「……ルー、あなたが何を抱えているかは私にはわかりませんわ。
ですが、私はあなたの事を親友だと思ってますの。
ですから、ルーが話したいと思ったらいつでも話してくださいまし」


リマは少しだけ悲しげな表情をしていた。
私はそんなリマの表情に驚いてしまう。
いや、正確には戸惑ってしまった、そういうべきであろう。
私はそんなリマによって気付かされた。
大切な人を守る、そればかりを考えていて私は周りを見れていなかったのだと。
こんな悲しげな表情をさせるつもりでは無かった。
そう思ったところでもう遅い。
私は意を決してリマに伝えようとした。


「…リマ!
わ、私後で話したい事がある!
リマに聞いて欲しい事があるんだ!
その…嫌かもしれないけど……」

「嫌なんていうはずありませんでしょう?
もう…本当にルーは臆病ですわ。
いつもはずかずかと人の心に踏み入ってくるくせに肝心なところでは自分から引いてしまうのですもの」


臆病、そう言われたのは初めてだった。
いや、それよりも…。
私はリマにそんなことを思われていたのか。
人の心にずかずかと踏み入るとか、私はそんな神経が図太くないのだが。


「ルー、早くいかなければ授業が始まってしまいますわよ」


そう言われて気づいた。
…今から授業じゃないか!
と。
何でこんな話になったんだ、などと思いつつも早足で授業に向かう私達だった。


「ふっ…生徒諸君!!
私が聖属性担当のアルベール・カミリオンだ!!
聖属性は神に1番近い魔法なんていわてはいるが、私は断じて!
神なんて信じな……」


そこで、先生はもう一人の先生に殴られる。
ゴンッと鈍い音が響いたため相当な力が込められたのだろうと思う。


「アルベール、よくも私の前でそんな話が出来たものですね?」

「おい!
何をするんだ、アンリミテッド!!」


まさかの殴ったのはアンリでした。
……何でここにいるんだろうね?


「私は聖属性の中でも結界魔法を担当する特別講師のアンリミテッド・デスタナートと申します。
1年間、宜しくお願いいたします。
アルベールは攻撃魔法となりますが何か問題がありしたら何時でも仰ってください」

「私は治癒専門の講師を務めるサミナよ。
アルベールが何かしでかしたら治癒の授業に来るといいわ」

「……ラルフ。
防御専門。
よろしく」


それぞれの自己紹介を聞き、攻撃を選んだのを後悔した。
……確か変更できるはずだし攻撃から治癒に変えようかな?


「さて!
じゃあ、それぞれの専攻に別れようか!
攻撃を選んだ者は私のところへ!
結界はあの狂信者のもとへ!
治癒はサミナ、防御は無口な奴のところへ!
それぞれわかれてくれ!」


……サミナ先生以外まともな呼び方してない気がするが?
戸惑いつつも私とリマは立ち上がりアンリのところへと向かう。


「……リマ、私副専攻変えようと思うんだ。
やっぱり治癒にする。
あの先生やだ」

「……えぇ、それをオススメいたしますわ」


なんて会話があったのを誰も知ることはない。


「それにしても…まさかアンリミテッド様が特別講師だなんて……」

「アンリがどうかしたの?」


リマが何故か蕩けたような表情をしていたため訪ねてみる。
すると、リマにため息をつかれた。

……意味が分からない。


「アンリミテッド様は結界魔法の最高の使い手ですのよ!?
ルーはそんな事も知らないのですの!?
それに、ちゃんとアンリミテッド様とお呼びなさいな!」


え?
知らなかった。

結界魔法専攻の人が集まる中でも最後尾に着くとアンリは私に気付いたのか微笑んで近付いてきた。


「ルーシャ様、結界魔法を選んでくださりありがとうございます」

「苦手なものは無くしておきたかったので…。
ですが、アンリが特別講師だとは思ってもいませんでした」


私がおどけたように口にする中、隣にいたリマはただ、目を見開いていた。
少しだけ会話をした後、アンリは先頭に戻り、生徒を先導した。


「ル、ルー…さ、先程アンリミテッド様と…」

「その事も含めて後で話すよ」

「絶対ですわよ!?」

「約束する」


リマの勢いに押されつつも私はちゃんと話すと約束をした。



「改めて、私はアンリミテッド・デスタナートと申します。
1年間、特別講師として担当することとなりましたのでよろしくお願いいたします。
では、早速ですが…結界魔法についてです」


アンリはそう言って簡単な説明を始める。
何度か聞いたがやはりアンリの説明は要点が抑えられていて1番わかりやすい気がする。

説明が終わり、とりあえず結界を貼ることとなった。
結界ならば何でもいいらしい。
各個人の実力を確かめたいということで全力で貼るようにと言われている。
無詠唱は禁止で詠唱をちゃんとしなければいけないらしい。
なんでも、無詠唱でやったものが暴走させる事があったとか。

この結界専攻の人数は11人と少ないため、1番最後だった私の番が早いと感じた。
ちなみに、リマの結界はやはり強度がシャレにならない。
今までの生徒の中で1番凄い。
だから、私は私でリマを超えられるように頑張ろう。
……と、いう事で自作の結界を選択することにした。


「Sクラス1番、ルシャーナです。


『全てを照らす玉なる光よ。
私の求めに応じその大いなる力の一端を貸してください。
私の願いへと導く光となりて私を優しく包み込む。
その光は暖かく、優しく、軽やかで………
冷たく鋭い闇さえもあなたの光が包み込み未来を明るく照らすだろう。
その光は私の心、私の全て。
全ては私の光で形成される。
私の魔力を糧に柔らかな光へと』」


少し詠唱は長いがその分、効力は保証する。
これは合成魔法の1つだ。
織り交ぜたのは、強化、浄化、治癒の3つだ。
中でも浄化に力をいれている。
自分の魔法を強化する事により浄化と治癒の力をより強力にしている。
浄化と治癒を混ぜたのはちゃんと理由がある。
浄化することにより出た疲れや傷を治癒で瞬時に治していくためだ。
そのため、この3つを織り交ぜて作った私だけの結界魔法だ。


「……ルーシャ様、やりすぎです。
いつの間に作ったのですか?」

「先程組んだばかりです。
ちゃんと発動するか不安でしたが…良かったです」


ちゃんと私の周り……というか、学校の上に結界が出来ていた。
どこまで貼れているかは分からないが…。
とりあえず先は見えない。
……どこまで私は結界を広げてしまったのだろうか?


「アンリミテッド!!
あなた、一体何をしたのよ!?」

「………国全体に広がってる」


他の先生達が来てしまったようだ。
それも、全員アンリがやったと思い込んでいるようだ。
というか、国全体……?
嘘…そこまで広げちゃった?


「す、すいません……。
結界広げたの私です…」

「…私がルーシャ様の力を見くびっていたのがわるいのです」

「生徒がこんな事出来るわけないでしょうが!」

「…………異常」


何か地味に傷付くのだが…。
あと、異常って言われた。
異常って……。


「…リマ、泣いていい……?」

「………ルー、申し訳ありませんが私も異常だと思いますわ」


リマにまで異常って言われた!?
さすがに私も傷付く。


「…『解除』」


私は異常と言われた事にショックを受けたこともあり、その原因となった結界を解除した。


「ルー、あなた本当に何者ですの?」

「私は普通の農民の子供だってば……。
至って普通なんだよ!?
何で異常とか言われないとなの!?」


異常って…異常って……!!
そんなのあんまりだ!!

淡い期待を込めてアンリを見つめるが気まずそうに視線を逸らされてしまった。


「……よく見たらこの子…。
試験の時に会場破壊した子じゃない!」

「わー!!
違います!
違いますから!!
私はちゃんと直しました!!
それに少し出力を間違えただけです!
私は至って普通の農民の子供です!!」


ちょっと称号がおかしいだけで!!

……否定はしたものの、リマやアンリからの視線が痛かった。


「直されたのであれば問題ありませんね。
大丈夫です、ルーシャ様。
まだ子供ですから出力を間違えてしまう事くらいあります」

「そ、そうですよね」


アンリが慰めてくれて、私がホッと胸をなでおろす。
すると、周りで見ていた(聞いていた)人達が叫んだ。


「無いわよ!」

「ありませんわ!」

「……ない」


皆に否定されてしまった。
……少しくらいはあると思うのだが。

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