最強になって異世界を楽しむ!
修行の成果
「剣よ、舞え!」
セレナーデの言葉に呼応するように、周囲に浮いていた10本の剣が、一斉にワタルへと襲いかかる。
セレナーデは両手を空けており、魔法も警戒しなければならない。
次々と襲い来る剣を捌いていたワタルは、このままでは埒が明かないと攻勢に出る。
「手数が多い……なら!」
無詠唱で水の剣を10本作り出せば、セレナーデの剣を全て受け止める。
その間にワタルは地を蹴り、セレナーデとの距離を縮めていく。
今セレナーデには近接武器がない。
接近戦に持ち込めば、と思っていたワタルだったが、セレナーデの余裕の表情を見て、背筋を悪寒が駆け抜ける。
考えるより先に体が動いた。
攻撃を中断、その場で思いきり横に飛んだのだ。
次の瞬間、先程までワタルの体があった場所を水の剣が通り抜けた。
もし横に飛んでいなければ、今頃串刺しになっていただろう。
「禁忌の魔術……」
「そうだ。お前の行動は悪手だったな」
元々の剣と水の剣、合計20本がワタルを取り囲み、セレナーデが右手を挙げる。
そして、セレナーデが右手をワタルに向けて振り下ろせば、20本の剣が全方位から襲いかかった。
「ふぅ……」
ワタルは大きく深呼吸し、心を落ち着かせる。
窮地といえるこの場面だが、ワタルはそれほど焦っていなかった。
自分にはこの窮地を切り抜けられる手段があると、わかっているから。
「魔法剣!」
ワタルが右手に持つ剣、デュランダルが水を纏う。
得意の魔法剣だが、今回は少し様子が違った。
纏った水はデュランダルの刀身の3倍の長さがあった。
「失敗か? その長さでは、全方位の剣は捌けないだろう」
セレナーデの言う通り、あれでは長すぎて迫り始めた剣を全て捌くのは不可能だ。
「それはどうかなっ!」
ニヤリと笑ったワタルが体を右に回転させながら、デュランダルを振る。
すると、纏っていた水が鞭のようにしなり、直前まで迫っていた剣を全て弾き返したのだ。
水の剣は霧散し、セレナーデの剣は再びセレナーデの周囲を漂う。
これが修行の成果の1つで、魔力が増加し繊細にコントロールできるようになったからこそ、可能になった芸当だ。
「まあ、元々それで殺せるとは思っていない」
既にセレナーデは次の行動に移っていた。
右手をワタルへと向け、魔法陣を展開。
火力の高い魔法を行使する準備が出来ていた。
「らぁっ!」
ワタルとセレナーデの間にはまだ距離があるが、今の魔法剣ならば届く。
水の鞭をしならせ、ワタルはセレナーデ目掛けて横薙ぎにデュランダルを振る。
「死ね」
セレナーデは向かい来る水の鞭を、6本の剣を並べて壁を作ることで簡単に防ぐ。
そして、セレナーデの魔法が発動する。
直径5mはあるかという巨大な岩、がワタルへと迫っていく。
すぐにワタルは水の鞭を振るって鉱石を斬ろうとするが、まったく歯が立たず弾き返される。
「硬っ!?」
ワタルが今使っている魔法剣では斬ることが出来ない、異常な密度だ。
「あんまり使いたくなかったのに……このっ!」
これをどう凌ぐのか観察しているセレナーデの目に映ったのは、剣に纏っている水を消し、デュランダルを大上段に構えるワタルの姿だった。
そこからは岩に隠れて見えなくなったが、何らかの攻撃手段を隠していることは間違いない。
岩は綺麗な切断面を残し、真っ二つに斬られたのだから。
「何をした?」
「別に、斬っただけだよ」
笑って答えるワタルに、セレナーデは自らの周囲を漂う10本の剣、その全てに炎を纏わせる。
「お前の言う魔法剣とはこれのことだろう。私の放った岩は、この程度の魔法で斬れるものじゃない」
「そうだね。じゃあタネ明かしを。圧縮だよ。マリーの見よう見まね」
圧縮はマリーの禁忌の魔術だ。
流石にあれだけの規模の圧縮など不可能だが、あれに少しだけ近づけるのなは、今のワタルならできる。
水を圧縮しデュランダルに纏わせ、斬れ味を底上げした。
これがタネ明かしだ。
「次はこっちから!」
ワタルがデュランダルに薄く水を纏わせ、セレナーデに向けて振る。
纏っていた水は斬撃となり、セレナーデの胴体を切断すべく向かっていく。
それなりに魔力を込めた一撃だったのだが、セレナーデは身動き1つすることなく、炎を纏った剣が防ぎ、水の斬撃を蒸発させた。
「くっそ……」
「試すのは終わりだ」
魔法の水が蒸発するということは、セレナーデの炎の方が魔力量が多く、強いということ。
セレナーデは今までとは違う、本当の殺意をワタルに向けて両手に魔方陣を展開する。
「やっば!」
慌ててワタルが数百の水の弾丸を放つが、その全てが炎の剣に阻まれ、セレナーデには届かない。
「炎よ、飲み込め」
そんなことをしている間に、セレナーデの両手から魔法が放たれる。
それはワタルの全身を包み込んでも余りある、大量の炎だった。
「今のままじゃ絶対勝てないし……よっし!」
その光景を前にワタルは覚悟を決め、神経を研ぎ澄ませる。
「魔法剣・二重奏」
ワタルがそう呟くと当時にデュランダルを縦に一閃。
実態を持たない魔法の炎は見事に断ち切られ、霧散する。
「それが本来のお前か」
そこに立っていたのは、今までのような緩んだ顔とは違い、セレナーデを見据え、静かに剣を構える人間だった。
「ふー……」
ワタルを大きく息を吐き、デュランダルを握りしめる。
デュランダルの刀身の色は、先程まで薄い水色だったのに対し、まるで海のように深い青色。
「お前……魔法を重ねがけしたのか?」
セレナーデは自分の言葉に自信を持っていないような口調だ。
それもそのはずで、魔法を剣に重ねてかけるなど、普通はやらない。
いや、できないが正しいだろう。
そんなもの、一歩間違えれば魔法が反発し合い、制御できなくなってしまう。
余程魔力のコントロールが上手く、自信がなければできる芸当ではない。
「師匠との鍛錬で編み出したんだ。絶対に負けない」
「上等だ。やってみろ」
そう言ってセレナーデが動くよりも早く、ワタルが飛び出した。
足元に風魔法を使い、走るというより飛び込むような形だ。
「いい的だ!」
後手に回ったセレナーデだが、対応は早い。
ワタルの速度を見極め、挟み込むように炎の剣を左右から3本ずつ振る。
「はぁっ!」
それに対しワタルは再び風魔法を使い急ブレーキをかけ、地に足をつけると素早くデュランダルを振る。
青色の刀身が美しい軌道を描くと、ワタルの左右にあった炎の剣は、全てが中ほどから切断されていた。
だか、勢いは殺せた。
セレナーデは残った4本の剣のうち、2本を真っ直ぐワタルへと飛ばす。
近距離からの攻撃にもワタルは反応し、水を纏ったデュランダルにより、炎の剣は今度は縦に両断される。
「ふっ!」
炎によってワタルの視界が一瞬遮られた隙をつき、セレナーデが両手に握った炎の剣剣を、ワタルの首元目掛けて振る。
セレナーデは距離を取らずに、剣術による接近戦を選択したのだ。
「っ、甘い!」
視界の外からの攻撃に驚くが、今のワタルはその程度では崩せない。
シュインッ、という音を響かせ完璧に受け流せば、まだ振るわれていない方の炎の剣を狙い、デュランダルを振る。
「このっ!」
セレナーデも負けじと受け流そうとするが、本気のワタルの剣速は目で追えない程で、易々と炎の剣は断ち切られる。
「はあああああっ!」
「うおおおおおっ!」
2人が叫び、気迫と気迫がぶつかり合う。
セレナーデの大上段からの振り下ろしと、ワタルの振り上げが交差し……決着は一瞬でついた。
キィン
「ちっ……」
鉄の折れる甲高い音を響かせ、倒れたのはセレナーデだった。
ワタルがセレナーデを斬る瞬間、魔法剣を解除し柄を90度回転させ剣背で叩いたため意識はあるようだが、もはや立つ気力も残っていないようで、セレナーデは倒れ込んだままだ。
魔女と人間、そして2人の魔法剣士の死闘はワタルに軍配が上がった。
セレナーデの言葉に呼応するように、周囲に浮いていた10本の剣が、一斉にワタルへと襲いかかる。
セレナーデは両手を空けており、魔法も警戒しなければならない。
次々と襲い来る剣を捌いていたワタルは、このままでは埒が明かないと攻勢に出る。
「手数が多い……なら!」
無詠唱で水の剣を10本作り出せば、セレナーデの剣を全て受け止める。
その間にワタルは地を蹴り、セレナーデとの距離を縮めていく。
今セレナーデには近接武器がない。
接近戦に持ち込めば、と思っていたワタルだったが、セレナーデの余裕の表情を見て、背筋を悪寒が駆け抜ける。
考えるより先に体が動いた。
攻撃を中断、その場で思いきり横に飛んだのだ。
次の瞬間、先程までワタルの体があった場所を水の剣が通り抜けた。
もし横に飛んでいなければ、今頃串刺しになっていただろう。
「禁忌の魔術……」
「そうだ。お前の行動は悪手だったな」
元々の剣と水の剣、合計20本がワタルを取り囲み、セレナーデが右手を挙げる。
そして、セレナーデが右手をワタルに向けて振り下ろせば、20本の剣が全方位から襲いかかった。
「ふぅ……」
ワタルは大きく深呼吸し、心を落ち着かせる。
窮地といえるこの場面だが、ワタルはそれほど焦っていなかった。
自分にはこの窮地を切り抜けられる手段があると、わかっているから。
「魔法剣!」
ワタルが右手に持つ剣、デュランダルが水を纏う。
得意の魔法剣だが、今回は少し様子が違った。
纏った水はデュランダルの刀身の3倍の長さがあった。
「失敗か? その長さでは、全方位の剣は捌けないだろう」
セレナーデの言う通り、あれでは長すぎて迫り始めた剣を全て捌くのは不可能だ。
「それはどうかなっ!」
ニヤリと笑ったワタルが体を右に回転させながら、デュランダルを振る。
すると、纏っていた水が鞭のようにしなり、直前まで迫っていた剣を全て弾き返したのだ。
水の剣は霧散し、セレナーデの剣は再びセレナーデの周囲を漂う。
これが修行の成果の1つで、魔力が増加し繊細にコントロールできるようになったからこそ、可能になった芸当だ。
「まあ、元々それで殺せるとは思っていない」
既にセレナーデは次の行動に移っていた。
右手をワタルへと向け、魔法陣を展開。
火力の高い魔法を行使する準備が出来ていた。
「らぁっ!」
ワタルとセレナーデの間にはまだ距離があるが、今の魔法剣ならば届く。
水の鞭をしならせ、ワタルはセレナーデ目掛けて横薙ぎにデュランダルを振る。
「死ね」
セレナーデは向かい来る水の鞭を、6本の剣を並べて壁を作ることで簡単に防ぐ。
そして、セレナーデの魔法が発動する。
直径5mはあるかという巨大な岩、がワタルへと迫っていく。
すぐにワタルは水の鞭を振るって鉱石を斬ろうとするが、まったく歯が立たず弾き返される。
「硬っ!?」
ワタルが今使っている魔法剣では斬ることが出来ない、異常な密度だ。
「あんまり使いたくなかったのに……このっ!」
これをどう凌ぐのか観察しているセレナーデの目に映ったのは、剣に纏っている水を消し、デュランダルを大上段に構えるワタルの姿だった。
そこからは岩に隠れて見えなくなったが、何らかの攻撃手段を隠していることは間違いない。
岩は綺麗な切断面を残し、真っ二つに斬られたのだから。
「何をした?」
「別に、斬っただけだよ」
笑って答えるワタルに、セレナーデは自らの周囲を漂う10本の剣、その全てに炎を纏わせる。
「お前の言う魔法剣とはこれのことだろう。私の放った岩は、この程度の魔法で斬れるものじゃない」
「そうだね。じゃあタネ明かしを。圧縮だよ。マリーの見よう見まね」
圧縮はマリーの禁忌の魔術だ。
流石にあれだけの規模の圧縮など不可能だが、あれに少しだけ近づけるのなは、今のワタルならできる。
水を圧縮しデュランダルに纏わせ、斬れ味を底上げした。
これがタネ明かしだ。
「次はこっちから!」
ワタルがデュランダルに薄く水を纏わせ、セレナーデに向けて振る。
纏っていた水は斬撃となり、セレナーデの胴体を切断すべく向かっていく。
それなりに魔力を込めた一撃だったのだが、セレナーデは身動き1つすることなく、炎を纏った剣が防ぎ、水の斬撃を蒸発させた。
「くっそ……」
「試すのは終わりだ」
魔法の水が蒸発するということは、セレナーデの炎の方が魔力量が多く、強いということ。
セレナーデは今までとは違う、本当の殺意をワタルに向けて両手に魔方陣を展開する。
「やっば!」
慌ててワタルが数百の水の弾丸を放つが、その全てが炎の剣に阻まれ、セレナーデには届かない。
「炎よ、飲み込め」
そんなことをしている間に、セレナーデの両手から魔法が放たれる。
それはワタルの全身を包み込んでも余りある、大量の炎だった。
「今のままじゃ絶対勝てないし……よっし!」
その光景を前にワタルは覚悟を決め、神経を研ぎ澄ませる。
「魔法剣・二重奏」
ワタルがそう呟くと当時にデュランダルを縦に一閃。
実態を持たない魔法の炎は見事に断ち切られ、霧散する。
「それが本来のお前か」
そこに立っていたのは、今までのような緩んだ顔とは違い、セレナーデを見据え、静かに剣を構える人間だった。
「ふー……」
ワタルを大きく息を吐き、デュランダルを握りしめる。
デュランダルの刀身の色は、先程まで薄い水色だったのに対し、まるで海のように深い青色。
「お前……魔法を重ねがけしたのか?」
セレナーデは自分の言葉に自信を持っていないような口調だ。
それもそのはずで、魔法を剣に重ねてかけるなど、普通はやらない。
いや、できないが正しいだろう。
そんなもの、一歩間違えれば魔法が反発し合い、制御できなくなってしまう。
余程魔力のコントロールが上手く、自信がなければできる芸当ではない。
「師匠との鍛錬で編み出したんだ。絶対に負けない」
「上等だ。やってみろ」
そう言ってセレナーデが動くよりも早く、ワタルが飛び出した。
足元に風魔法を使い、走るというより飛び込むような形だ。
「いい的だ!」
後手に回ったセレナーデだが、対応は早い。
ワタルの速度を見極め、挟み込むように炎の剣を左右から3本ずつ振る。
「はぁっ!」
それに対しワタルは再び風魔法を使い急ブレーキをかけ、地に足をつけると素早くデュランダルを振る。
青色の刀身が美しい軌道を描くと、ワタルの左右にあった炎の剣は、全てが中ほどから切断されていた。
だか、勢いは殺せた。
セレナーデは残った4本の剣のうち、2本を真っ直ぐワタルへと飛ばす。
近距離からの攻撃にもワタルは反応し、水を纏ったデュランダルにより、炎の剣は今度は縦に両断される。
「ふっ!」
炎によってワタルの視界が一瞬遮られた隙をつき、セレナーデが両手に握った炎の剣剣を、ワタルの首元目掛けて振る。
セレナーデは距離を取らずに、剣術による接近戦を選択したのだ。
「っ、甘い!」
視界の外からの攻撃に驚くが、今のワタルはその程度では崩せない。
シュインッ、という音を響かせ完璧に受け流せば、まだ振るわれていない方の炎の剣を狙い、デュランダルを振る。
「このっ!」
セレナーデも負けじと受け流そうとするが、本気のワタルの剣速は目で追えない程で、易々と炎の剣は断ち切られる。
「はあああああっ!」
「うおおおおおっ!」
2人が叫び、気迫と気迫がぶつかり合う。
セレナーデの大上段からの振り下ろしと、ワタルの振り上げが交差し……決着は一瞬でついた。
キィン
「ちっ……」
鉄の折れる甲高い音を響かせ、倒れたのはセレナーデだった。
ワタルがセレナーデを斬る瞬間、魔法剣を解除し柄を90度回転させ剣背で叩いたため意識はあるようだが、もはや立つ気力も残っていないようで、セレナーデは倒れ込んだままだ。
魔女と人間、そして2人の魔法剣士の死闘はワタルに軍配が上がった。
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