最強になって異世界を楽しむ!
帰還
「それにしても、幹部が2人ですか。魔王も本気ですね」
ハラルはコラールとロンドを見ても、落ち着いた様子で現状を理解する。
「なんであるか、貴様は」
「悪魔に名乗る名前は持ち合わせていません」
コラールの問いに、ニコリと微笑んでそう答えると、ハラルは黒い手袋を両手に付け、接近して殴り掛かる。
「愚直な攻撃が、2度も通用すると思うでないわ!」
コラールは大鎌を横薙ぎに振る。
大鎌の刃がハラルの拳に迫り、そのまま斬られる。
とは、ならなかった。
バキンッ!
金属が折れるその音と共に、コラールの大鎌が粉々に粉砕される。
「なんだと!?」
「音魔法、ってわかります?」
明らかに動揺するコラールへ、ハラルの拳が腹に直撃する。
今までワタルの攻撃をものともしなかったコラールは、ハラルの拳がよほど効いたのか、口からどす黒い血を吐き、後ろに数歩下がる。
「音魔法で拳を振動させて、破壊力を上げてるんですよ。あ、ごめんなさい。悪魔の頭じゃ理解できませんよね」
「貴様!」
煽るハラルへ、コラールが突っ込もうとするが、その肩をロンドが掴み止める。
「落ち着け」
「……我としたことが、取り乱してしまったのである」
ロンドの一言で冷静を取り戻したのか、コラールはハラルへ突っ込むことはなかった。
「邪魔が入った。今回は退くぞ」
「まあ、それも仕方ないであるか」
2人はこれ以上戦闘をする意志はないのか、周囲の魔族を引き上げさせる。
「だが、最後に少しぐらい攻撃しなければ、我も気が済まないのでな」
ロンドも退こうとするが、コラールはやられっぱなしでは気が済まないのか、魔法を発動する。
コラールが作り出したのは大量の風の刃だが、ワタルの水の刃とは数も大きさも桁違いだ。
それが全て、ハラルへ向かっていき、避ける暇もなく両手を交差させて防御の姿勢をとった、ハラルに直撃する。
「悪魔の攻撃なんて、効きませんよ」
人間どころか、魔族ですら原型も残りそうにないその攻撃を、ハラルは体に擦り傷を多く作っただけで、その表情はコラールを嘲笑していた。
「本当にムカつくやつであるな。名も知らぬ人間の女よ。貴様はこの我が必ず殺してやる。それまで首を洗って待っているのであるな」
コラールは最後にそう捨て台詞を残し、ロンドと共に撤退していった。
「改めて、また会いましたね。ワタル」
完全に魔族たちが去ったのを確認し、ハラルは振り向いて微笑んだ。
魔族の軍勢も撤退したため、現在ワタルたちは馬車に乗って王都へ帰っている。
「ハラル様はなんでここに来れたんですか?」
「ハラル、で。あと喋り方も、マリーやエレナと同じにしてください」
「え、でも」
「そうじゃないと喋りませんよ。だって……」
ハラルはもじもじと、恥ずかしそうに顔に片手をあてる。
ツンデレなのかもしれない。
とわワタルはハラルの意外な1面を見た気がした。
「ワタルを、調教したくなりますから……」
ワタルは言葉を失った。
ちなみに、ハラルはエレナとマリーとは既に打ち解けていた。
その時に自分のことを、
「神様の使いの天使で、ワタルとは友人です」
と、言っていた。
この世界には種族として、目撃情報は少ないが、確かに天使が存在するらしい。
それに加え、ハラルを呼び出した魔法陣が、神である雷帝がいた場所の地下にあったものであるため、それで納得したらしい。
「それにしても、悪魔に負けるなんて情けないですよ。それでも私の友人ですか」
「俺あれでもかなり頑張った方なんだけど……」
ワタルは全員を走る激痛で倒れるように馬車に乗っており、マリーもハラルを呼び出す時に魔力のほとんどを使ったのか、杖に貯めていた魔力を自分移動させ、どうにか動ける状態だった。
エレナは無傷に近い。
「まあ、それはいいでしょう。それよりも」
ハラルの視線が鋭いものとなり、ワタルの体に隠れるように魔剣の状態になっていた、レクシアへ向けられる。
「神殺しの魔剣レクシア。ここで壊しておきますか」
「やろうって言うなら、私だって受けて立つよ!」
ビクっと体を震わせたレクシアが、人間の姿になり、ハラルへファイティングポーズをとる。
「2人とも、喧嘩はやめようよ」
2人はしばらく睨み合っていたが、先にハラルが視線を逸らした。
「私自身は別に恨みはないですし、構いませんよ」
そう言ってエレナと話し始めたハラルを見て、レクシアがワタルに小声で話しかける。
「ワタルくん、ワタルくん」
「どうしたの?」
「ハラルって、本物の女神だよね」
「わかるものなの?」
「魔力の感じが、最初に殺した神や雷帝と似てたから」
神殺しの魔剣だからか、レクシアは確信を持った声で言う。
そういうものなのか、とワタルが考えていると、馬車が王都に到着した。
「皆さん、お疲れ様でした!」
王都に戻ると、ギルド職員が総出で出迎えてくれた。
「今回参加した皆さんに報酬を渡しますので、冒険者の方はギルドまで、兵士の方はお城まで足を運んでください」
それを聞き、冒険者たちはギルドへ移動する。
ワタルたちも、それに続いて移動する。
「ハラルも、いいタイミングだし、今冒険者カード作る?」
「あ、私はもう冒険者カード持ってますよ。たまに地上に降りますから」
ハラルは懐から冒険者カードを取り出し、4人に見せる。
ハラル Lv.78
ステータス
筋力:369
技量:185
敏捷:162
耐久:1860
魔力:497
スキル
魔法耐性
魔法に対する強力な耐性。
物理耐性
物理攻撃に対する強力な耐性。
状態異常無効
自身のバッドステータスの無効化。
「壁じゃん」
ハラルのステータスは、ネットゲームなどで言うところのタンク、壁だった。
「ハラル、武器はなんだったっけ?」
「これですね」
壁ステータスだというのに、ハラルは盾を持っていない。
そういえば、武器はなんだったかと思いワタルが聞くと、ハラルは銀色の手袋を出してくる。
「……盾は?」
「盾は可愛くないですから」
ハラルは平然とした顔で、そう言い放った。
「ハラルには、タンクはなにかを教えないといけないね」
「私に教えるなんて、偉くなりましたね」
元の世界にいた頃は、ワタルはネットゲームでタンクをしていた。
ハラルの態度に耐えられなかったのか、珍しく真面目な顔で、ハラルへ詰め寄る。
「平和じゃな」
「これを見てると、そう思えてくるな」
「だね〜」
ぎゃーぎゃーと言い合う2人を、マリーたち3人は笑いながら眺めていた。
結局、その言い合いはハラルが満身創痍のワタルを叩いたことにより、ワタルが倒れて終わった。
残った4人は報酬を受け取ると、笑いながらワタルを家に運ぶ。
その日は、目覚めたワタルを交え、ハラルのパーティ加入祝いとして、少しだけ豪華な食事を取って楽しく過ごしたのだった。
ハラルはコラールとロンドを見ても、落ち着いた様子で現状を理解する。
「なんであるか、貴様は」
「悪魔に名乗る名前は持ち合わせていません」
コラールの問いに、ニコリと微笑んでそう答えると、ハラルは黒い手袋を両手に付け、接近して殴り掛かる。
「愚直な攻撃が、2度も通用すると思うでないわ!」
コラールは大鎌を横薙ぎに振る。
大鎌の刃がハラルの拳に迫り、そのまま斬られる。
とは、ならなかった。
バキンッ!
金属が折れるその音と共に、コラールの大鎌が粉々に粉砕される。
「なんだと!?」
「音魔法、ってわかります?」
明らかに動揺するコラールへ、ハラルの拳が腹に直撃する。
今までワタルの攻撃をものともしなかったコラールは、ハラルの拳がよほど効いたのか、口からどす黒い血を吐き、後ろに数歩下がる。
「音魔法で拳を振動させて、破壊力を上げてるんですよ。あ、ごめんなさい。悪魔の頭じゃ理解できませんよね」
「貴様!」
煽るハラルへ、コラールが突っ込もうとするが、その肩をロンドが掴み止める。
「落ち着け」
「……我としたことが、取り乱してしまったのである」
ロンドの一言で冷静を取り戻したのか、コラールはハラルへ突っ込むことはなかった。
「邪魔が入った。今回は退くぞ」
「まあ、それも仕方ないであるか」
2人はこれ以上戦闘をする意志はないのか、周囲の魔族を引き上げさせる。
「だが、最後に少しぐらい攻撃しなければ、我も気が済まないのでな」
ロンドも退こうとするが、コラールはやられっぱなしでは気が済まないのか、魔法を発動する。
コラールが作り出したのは大量の風の刃だが、ワタルの水の刃とは数も大きさも桁違いだ。
それが全て、ハラルへ向かっていき、避ける暇もなく両手を交差させて防御の姿勢をとった、ハラルに直撃する。
「悪魔の攻撃なんて、効きませんよ」
人間どころか、魔族ですら原型も残りそうにないその攻撃を、ハラルは体に擦り傷を多く作っただけで、その表情はコラールを嘲笑していた。
「本当にムカつくやつであるな。名も知らぬ人間の女よ。貴様はこの我が必ず殺してやる。それまで首を洗って待っているのであるな」
コラールは最後にそう捨て台詞を残し、ロンドと共に撤退していった。
「改めて、また会いましたね。ワタル」
完全に魔族たちが去ったのを確認し、ハラルは振り向いて微笑んだ。
魔族の軍勢も撤退したため、現在ワタルたちは馬車に乗って王都へ帰っている。
「ハラル様はなんでここに来れたんですか?」
「ハラル、で。あと喋り方も、マリーやエレナと同じにしてください」
「え、でも」
「そうじゃないと喋りませんよ。だって……」
ハラルはもじもじと、恥ずかしそうに顔に片手をあてる。
ツンデレなのかもしれない。
とわワタルはハラルの意外な1面を見た気がした。
「ワタルを、調教したくなりますから……」
ワタルは言葉を失った。
ちなみに、ハラルはエレナとマリーとは既に打ち解けていた。
その時に自分のことを、
「神様の使いの天使で、ワタルとは友人です」
と、言っていた。
この世界には種族として、目撃情報は少ないが、確かに天使が存在するらしい。
それに加え、ハラルを呼び出した魔法陣が、神である雷帝がいた場所の地下にあったものであるため、それで納得したらしい。
「それにしても、悪魔に負けるなんて情けないですよ。それでも私の友人ですか」
「俺あれでもかなり頑張った方なんだけど……」
ワタルは全員を走る激痛で倒れるように馬車に乗っており、マリーもハラルを呼び出す時に魔力のほとんどを使ったのか、杖に貯めていた魔力を自分移動させ、どうにか動ける状態だった。
エレナは無傷に近い。
「まあ、それはいいでしょう。それよりも」
ハラルの視線が鋭いものとなり、ワタルの体に隠れるように魔剣の状態になっていた、レクシアへ向けられる。
「神殺しの魔剣レクシア。ここで壊しておきますか」
「やろうって言うなら、私だって受けて立つよ!」
ビクっと体を震わせたレクシアが、人間の姿になり、ハラルへファイティングポーズをとる。
「2人とも、喧嘩はやめようよ」
2人はしばらく睨み合っていたが、先にハラルが視線を逸らした。
「私自身は別に恨みはないですし、構いませんよ」
そう言ってエレナと話し始めたハラルを見て、レクシアがワタルに小声で話しかける。
「ワタルくん、ワタルくん」
「どうしたの?」
「ハラルって、本物の女神だよね」
「わかるものなの?」
「魔力の感じが、最初に殺した神や雷帝と似てたから」
神殺しの魔剣だからか、レクシアは確信を持った声で言う。
そういうものなのか、とワタルが考えていると、馬車が王都に到着した。
「皆さん、お疲れ様でした!」
王都に戻ると、ギルド職員が総出で出迎えてくれた。
「今回参加した皆さんに報酬を渡しますので、冒険者の方はギルドまで、兵士の方はお城まで足を運んでください」
それを聞き、冒険者たちはギルドへ移動する。
ワタルたちも、それに続いて移動する。
「ハラルも、いいタイミングだし、今冒険者カード作る?」
「あ、私はもう冒険者カード持ってますよ。たまに地上に降りますから」
ハラルは懐から冒険者カードを取り出し、4人に見せる。
ハラル Lv.78
ステータス
筋力:369
技量:185
敏捷:162
耐久:1860
魔力:497
スキル
魔法耐性
魔法に対する強力な耐性。
物理耐性
物理攻撃に対する強力な耐性。
状態異常無効
自身のバッドステータスの無効化。
「壁じゃん」
ハラルのステータスは、ネットゲームなどで言うところのタンク、壁だった。
「ハラル、武器はなんだったっけ?」
「これですね」
壁ステータスだというのに、ハラルは盾を持っていない。
そういえば、武器はなんだったかと思いワタルが聞くと、ハラルは銀色の手袋を出してくる。
「……盾は?」
「盾は可愛くないですから」
ハラルは平然とした顔で、そう言い放った。
「ハラルには、タンクはなにかを教えないといけないね」
「私に教えるなんて、偉くなりましたね」
元の世界にいた頃は、ワタルはネットゲームでタンクをしていた。
ハラルの態度に耐えられなかったのか、珍しく真面目な顔で、ハラルへ詰め寄る。
「平和じゃな」
「これを見てると、そう思えてくるな」
「だね〜」
ぎゃーぎゃーと言い合う2人を、マリーたち3人は笑いながら眺めていた。
結局、その言い合いはハラルが満身創痍のワタルを叩いたことにより、ワタルが倒れて終わった。
残った4人は報酬を受け取ると、笑いながらワタルを家に運ぶ。
その日は、目覚めたワタルを交え、ハラルのパーティ加入祝いとして、少しだけ豪華な食事を取って楽しく過ごしたのだった。
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