双子の大神

緋想山 黒乃

序章 龍神王

其れを見届けた老人は、入り口近くに居た二人の方へ向き直り云った。
「ようこそ。お入り下さい。私が龍王、緋想丸です。」
そう云われて招き入れられた部屋は、奥の方に龍の像が有るだけの殺風景な場所だった。龍の像の傍には神気しんきまとった二つのかたなが祀られて在った。其れを視た瞬間、背筋に何か冷たいモノが走った。
なんの御用でしょう。神界しんかいの方で何か有りましたか。」
行き成り核心を突かれた事に驚いた様子の紅に対し、漆の方は何か後ろめたい事が有る様な顔をしていた。
「はい。龍王様、先程は失礼を致しました。」
深々と頭を下げた漆を緋想丸は穏やかに見詰みつめた。頭を上げて下さい。大神おおかみ様がそんな事する者ではありません。ですから、と漆に云った。少し黙ったままだった漆は頭を上げ、有難う御座います、と云った。漆は、本題に、と云い話を続けた。
「事の始まりは数日前、龍神王様が亡くなられた事からです。ずは此のふみに御眼を御通し下さい。」
そう云われた紅は胸から、大事に包まれた布の塊を取り出した。ゆっくりと開くと其処には、和紙の手紙が折畳まれていた。其の侭緋想丸に渡すと丁寧に開き、中身を詠んだ。一言、そうかもう、と呟き二人へ向き直したのだった。悲しげな色を瞳に宿らせながらに、礼を伝えた。
「そうですか、、還って仕舞いましたか。最後はどの様でしたか。彼奴あやつの事です、綺麗な事を云いながらでしょう。」
何か懐かしむ様に尋ねた。二人が答える事は無かったが、緋想丸は其れでも満足した様であった。
「すみません。取り乱しました。葬儀は出席させて頂きます。彼奴にう最後の時ですから、必ず、死んで仕舞ったとしても、、」
「はい。承知致しました。其の日には高位な遣いが来る筈ですので。準備の方はわたくし達が行わさせて頂きますので御心配はなさらず。」

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