不幸な男は異世界で最強になったようです

大島 こうのすけ

42#魔城ガルガンド、ハクアVS魔人ベリアル

作戦はこうだ。
俺とハクア、クレアとそれ以外に分かれる。俺達は直接アテナの救出&魔王を抑える、クレアたちはおそらく悪魔達によって捕えられた他の戦天使全員を牢獄より救出&反撃。『移動』が使えないのかと言われると、牢屋は行ったことがないし、城の方にも、転移魔法反射の魔法が施されているために無理なのである。いわゆるゴリ押しである。
現在、いつしかここに来た時に乗った、ペガサスの馬車でガルガンドに向かっていた。


「見えてきました、あれが城です!」

「なんだあれ。元の原型とどめてねぇじゃねぇか」


俺達が見たのは暗黒のオーラに包まれ、表面に結界が張られた今は黒き、聖なる城。街の方もほとんど無人な感じでとても静まり返っている様子が上空からわかった。


「まずは、結界の破壊か......エレナ何とかならない?」

「ん〜私には結界の構造がわからないわ。ルビーは?」

「.......あ、そういう作りでしたか。あれはですね、光魔法で簡単に打ち破れますよ。私とエレナさんで何とかします」

「分かった、そっちは任せるぜ。.......!?クレアさん、避けさせて!」


クレアが手網を右へ向け馬を右方向に曲がらせる。先程まで俺達がいたところには斬撃の衝撃波が発生していた。


「ふむ、なるほど。さすが天翼十二議会の二人といったところか」

「お前は!魔人ベリアル!!」

「如何にも。俺はここの門番をサタン様より預かった魔人ベリアルだ。ここを通りたければ俺を倒すがいい、最もこの数を相手出来るとは思わんがなぁ!!」


ベリアルが叫ぶとともに大量の悪魔が空中を覆い尽くした。もう城への道が見えなくなっていた。そして、後にも悪魔が出現し、完全に囲まれた。


「.....ショウタ、クレア、皆、先に行ってくれ。ここは私が相手する」

「ハクア!?何を言って.......」

「じゃあ、ここで無謀に突っ込んで全員死ぬか?安心しろ、私は帰る場所がある以上負けるわけには行かない。すぐに追いつくさ」

「ハクア........」

「クレアさん!突っ切りますよ!ハクア、頼む!」


ハクアは翼を羽ばたかせ、馬車から飛び降りる。そして馬車と同じ高度を保ちながら一気に突っ込んでいく。


「『転身』騎士王の鎧!そこをどけ!エクスカリバー!」


ハクアが放った光の光線はベリアルの後ろにいた、城を見えなくするほどの悪魔を一瞬で消し炭にする。俺達はその瞬間にそこを突破し城の結界へ近づいていく。


「何!貴様ら!すぐに追え!」

「おいおい、そんなことさせると思うか?エンチャント『風』、『天空波』!」


俺が馬車から放った風の刃は追ってきた悪魔の半数以上の命を刈り取る。それでも追ってきた悪魔は約50程になった。


「ハクアあとは頼んだぞ〜!」

「任せろ!すぐに行く!」


俺達は城の結界に到達した。すぐにエレナとルビーが解除に取り掛かったため、俺とクレアが前衛、ミリアとエミリで後方支援という形で護衛する。


「天翼十二議会第3位、天翔ける鎧フライアーマーのハクアか。面白い」

「その名を聞いたのは久しいな。天翼十二議会の名にかけてお前を倒す!」

「やってみろ、貴様が勝てるならな!」


ベリアルが自身の剣を取り出し、ハクアと対峙する。


「『魔炎』!」

「『転身』麒麟の鎧、『蒼雷刃』!」


ベリアルの炎の斬撃とハクアの麒麟の雷の斬撃が衝突する。その衝撃で発生したエネルギーがハクアの後ろにいた悪魔をすべて殲滅させる。それほどに強力な技の衝突と言ったところだろう。


「ならこれでどうだ!『プロミネンスブレイド』!」

「舐めるな!『蒼き刃』!」


再び剣同士がぶつかり合う。互いに剣を弾いたあと、打ち合いが始まった。ベリアルは首を狙い横薙ぎに一閃するがそれをハクアは剣を縦に振り上げ防ぎ、剣が上を向いたときにベリアルの心臓を狙い突きを繰り出すが振り下ろされた剣を防ぐために咄嗟に剣を横にして防御、一旦距離をとる。


「ふむ、なかなかの腕と見た。まさか剣で負け知らずの俺をここまで楽しませてくれるとはな」

「さっきのが序の口か?面白い。貴様は到底ショウタには及ばんようだな」

「さっきの人間の小僧のことか。いずれ貴様を倒したあとに地獄に送ってやる。今は貴様を倒すことだけを考えといてやる」

「なるほど、じゃあこれじゃ無意味だな。『転身』剣王の鎧!」


ハクアの体が光り、胸を包帯一枚で巻き、剣は長めの刀、下は長い袴のようなもので草履を履いた、露出が多い鎧が顕現する。


「貴様、防御を捨てたか!実に無意味なことだ!さぁ、いたぶらせて貰おうか!」

「なに、当たらなければどうということはないさ。さぁこい」


再びベリアルとハクアの打ち合いが始まる。だが、刀のリーチが長い分ハクアの方が有利であり、今までのベリアルの攻撃では、到底ハクアの剣の腕の領域には到達できていなかった。


「なぜ貴様に攻撃が通らない!貴様は鎧を変えただけのはず!」

「そうか、そういえば誰にも言ってなかったな。私の無限の鎧達アンリミテッドアーマーはそれぞれに加護がある。そしてその全てに常時として剣技上昇(極)が付与されている。これの場合は剣技上昇(神)、身体能力上昇(極)、腕力上昇(極)が付与されている。まず貴様の剣は届かん」

「なんだと!そんなもの貴様の女神の権能にもなかったはず!」

「......違う、これは元々アテナ様から授かったものではない。これは私自身に生まれた時から付与されている能力だ。だから、私は第3位まで登りつめた、そういうことだ」

「っち!貴様に本気を出さねばならんとはなぁ!」


強引にハクアを吹き飛ばしたベリアルが怒号とともに能力を出す。


地獄の鎧・悪魔の祝福ヘルアーマー・サタンズリバティ!さぁ、この形態の俺はもう止められんぞ!」

「なるほど、では私も本気を出そう。『転身』聖女の鎧!『複合』騎士王の鎧!」


ハクアの体は虹色に光り輝く。決して相交えることないフランスの英雄、ジャンヌ・ダルクとブリテンの王、アーサー・ペンドラゴンの鎧が複合し、左手に旗を掲げ、手には聖剣エクスカリバー、背中の鞘には聖剣カラドボルグが納刀されており、青い生地に、五センチの黄色い線でブリテンの証とフランス軍の証が複合されたマントも装着されていた。


「ふん、そんな両手塞がりで何が出来る!これで死ね!『ヘルフレイム・サタンズパワー!』

「私が負けに行くと思うか?舐めるな!『落ちる事なき聖歌の旗ラ・ドラピュー・デュエ・シャンソン・トンバー』!」


ハクアが旗を自身の前に地面はないが勢いよく突き立てる。それと同時にハクアを半径5mの円(黄金の魔法陣)が守るように展開され、ベリアルによって放たれた、暗黒の炎を真ん中から左右に弾く。そのまま威力は減少されず、爆発によって煙が発生した。


「はっ!流石に貴様でもこれは無償ではすみまい!さぁ、そのボロボロになった鎧を見せてみろ!」

「なら見せてやろう、ただしどこも傷がない複合鎧をな」

「なっ!貴様いつの間に!」


ハクアは爆発の間に、自身の飛行術を使って瞬時にベリアルの近くまで接近していた。


「.......貴様に教えておいてやろう。聖女の旗には全耐性『究極』が付与されている。貴様の三流以下の技など私には届かん。そしてこの2本の剣には邪悪撃滅『究極』、勝利『極』、光上昇『栄光』が付与されている。聖女の旗は決して落ちず、騎士王の2本の聖剣は勝利を必ず導く。...........終わりだ、『聖人の舞』!」


ハクアは2本の聖剣で乱舞をし、ベリアルの体を切り続ける。


「ぐぁぁぁぁ!貴様などに!貴様ら羽が生えただけのゴミ共に!この俺が負けるなど、あっては.........」

「そのゴミに負けるのが貴様だ、魔人ベリアル。終わりだ!はぁぁぁぁ!」


光り輝いた2本の聖剣がベリアルの体に真下に振り下ろされる。ハクアは瞬時に光に包まれるベリアルから距離をとる。


「なぜだ!なぜだなぜだなぜだ!貴様.........など............に..............」


そこまで言ったころで光がペリアルを包み込み、一瞬縮小して、大爆発を起こした。


「......久々の本気は少々答えるな。だがまだこいつらが余っている、か。さて、すまないショウタ、遅れる」


ハクアはそのまま周りの悪魔を残滅していった。



数刻前、エレナとルビーの結界が解除され、追ってきた悪魔もすべて倒した直後。


「開いた!よし、行くぞ!」

「クレアさん、みんなを頼んだ!」

「任せてください!皆さん、こっちです!」


俺達は門を突破し、俺は中央の階段を駆け上がり、クレアたちは左の扉から地下の牢獄に向かって行った。俺はそのまま突き進み、元女神の間にたどり着いた。


「......やっと見つけた」

「ふむ、アテナこやつが言っていたのは貴様か」


こちらを向いたサタンに俺の体がこわばる。
これが強者の余裕、魔神の威圧というやつか......!
俺は元女神の玉座に座り、不敵に笑うサタンと睨み合った。

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