不幸な男は異世界で最強になったようです
24#ハクアさんの結婚大騒動(前編)
「なぁ、なんだよこれ」
ヘラクレス討伐からさらに五ヶ月ほどたったある日、クランが俺たちをある部屋に集めて手紙を差し出してきた。俺はその手紙の内容を見て冒頭の言葉を紡いだ。
手紙の内容はこうだ。
ーーーーーーーーーーーー
我が親愛なるパーティーメンバーへ
突然ですが私ことハーネスト・クリスチャン・アリシアは結婚することとなりました。
相手はとある領主を収めている男性。
というわけでパーティを抜けることになります。お手数をかけますがご了承ください。
その下に結婚相手と場居と日時、開演時間が書かれ、最後に
今までありがとう。そしてさようなら
ハクア
ーーーーーーーーーーーー
俺は手紙の内容を読んだあと手紙を思いっきり破り捨てた。
「ショウタ!?」
「おいおい、悪い冗談だぜ?こんなの。にしてもタチが悪いな。どこから届いた、ぶっ飛ばしてやる」
「恐れ入りますが旦那様、その手紙は完全にハクア様の字で、ハクア様から手渡されました。そして、私に「世話になった、ここに戻ることは二度とない」と言って天界へ帰っていきました」
「ショウタ......」
「っ!!」
俺はソファに座り込み拳を机に叩き込んだ。痛かったがそんなことよりも怒りが勝っていた。
ハクアが結婚?しかも手紙で知らせ?馬鹿か。あいつが、つい昨日まで楽しく笑っていたあいつが、悲しそうな顔をひとつもしてなかったあいつが、なんの相談さえもなかったあいつが、俺たちに何も言わないで去るなんてことがあるわけが無い。
「ショウタ......」
「悪い、ちょっと出てくる」
「ショウタ(さん)!」
後から3人の声が聞こえたが俺は気にせず『移動』でガルガンドのアテナのところに向かった。ついた瞬間俺は兵士に発見され、要件を伝えると女神の間まで案内された。
「ショウタ、いらしたのですね。本日は何用ですか?」
「女神様、知ってることをすべて教えてくれ」
「....どういう意味ですか?」
「知らないとは言わせない。知ってるんでしょう?ハクアの結婚の事を」
「っ!そ、それは......」
アテナは表情を曇らせ考える。だが数分後決心したように話してくれた。
「ええ、知っていますよ、ハクアの結婚のことを。まっさきに私たちのところに言いに来ましたからね。でも、私にはわかりました。これが望まない結婚だと言うことに」
「どういう事ですか?」
「あの子の私に報告する時の顔はものすごく悲しい顔でした。私はやめたらいいだろうと言いましたが、それは絶対にできない、これは絶対なんだと言っていました」
「何かあるのかも知れませんね」
「私もそう思って宮廷の戦天使や私自身も調べているのですが一向に尻尾が掴めないのです、私はもしかしたら悪魔の仕業じゃないかと思っているんです。結婚相手はずっと前からハクアに目をつけていたそうで、おそらく、悪魔と手を組んだのではないかと」
「そして何らかの理由で結婚をしないといけない状況に陥れた....と?」
「私はそう思っています。ショウタさんはどう思いますか?」
「俺は、ハクアの実情も知らないので分かりませんが、絶対に言えることが一つ。あいつは無言でパーティーを抜けるようなやつじゃないってことです」
「....よくハクアを見ているのですね、とても安心しました。もう夜になってます。今日はここに泊まっていきませんか?」
「そうですね、泊まれるなら泊まりたいですが今、いいタイミングなので遠慮しておきます」
「どういう意味ですか?」
「ガサ入れですよ。それじゃ!」
「まっ!ガサ入れって何......」
俺は『移動』でガルガンドを出た。
なら俺がどこに行ったかというと、もちろんハクアの家、ハーネスト邸である。
何故か外に警備が巡回していた。しばらく様子を見てみると玄関からとある男が出てきた。かなり太っていて、かっこよくもない。恐らくあれが手紙に書かれていた結婚相手のバトラス伯爵だろう。
バトラス・アンデルセン。この世界でも有名な悪徳貴族。複数の女に手をかけ飽きては捨てるを繰り返している外道野郎だと聞いたことがある。その上金も持っているから女は何も言えないらしい。
バトラス伯爵は玄関で誰かと話していた。あれは....ハクアである。三つ編みを結い、肩から下ろしてワンピースにスカートという落ち着いた格好をしていた。めちゃくちゃ可愛い。
そんなことはどうでもいい。問題なのはハクアの顔だ。バトラス伯爵はゲスい笑みを浮かべて話していたがハクアは笑って入るもののどこから悲しそうで、寂しそうだった。俺はそんなハクアの表情を見た瞬間怒りが噴水のように湧き上がってくる。
「落ち着け主。ここで出ていったら計画を実行する前にお縄だぞ!」
俺は神威の制止でなんとか思いとどまったが怒りが収まらない。しばらくしてなんとか怒りを抑えた俺はその光景を見ていた。するとそこから数分後、今度こそバトラス伯爵は飛び去って行った。警備の人数も減り、俺は突撃するため行動に出た。
「....なんだお前....はっ!」
「どうした!?ぐわっ!!」
俺は窓の近くにいた警備の人に峰打ちを食らわせ駆けつけた人に後頭部にチョップをいれ気絶させる。そして窓を『透過』の魔法ですり抜け、『隠密』の魔法で姿を隠す。
『探知』で俺が知っているハクアの魔力を探す。どうやら中に入ってから自分の部屋にいるようだ。この家は前にハクアの家に止まった時に案内してもらったため全部が頭に入っている。俺は難なく部屋の前まで行くと俺は中に入るするとハクアが
「はぁ.....誰か助けてくれないかな.....」
と言ったので
「俺が助けてやろうか?」
◇
私は今、客人の対応をしていた。
私の結婚相手、バトラス・アンデルセン伯爵だ。私はとある事情によってこの男と結婚することになった。この男は実に変態で隙があればセクハラをしてくる。
お尻を触られたこともあったし太ももを触られたこともあった。私はその度にあしらってきたが。しばらくすると帰ろうとしたので私は見送った。玄関先でも話すことが多いのなんの。そしてやっと帰ってくれた。明日も来ると言っていた。私はとても疲れていた。部屋に入りベッドに仰向けになる。こんなことなら、逃げればよかった。でも、もうどうすることも出来ない。だから私はせめてもの希望をかけて
「はぁ.....誰か助けてくれないかな.....」
「俺が助けてやろうか?」
◇
俺は姿を現しハクアに声をかける。もちろんハクアはとても驚いた表情をしていた。
「なっ!お前はショウ.....むぐぅ!」
俺は咄嗟にハクアの口を塞いでなんとか声を上げるのを阻止する。ハクアがベットに倒れていたため傍から見れば俺が口を塞いで押し倒したように見えていることだろう。
「お嬢様!?どうされましたか!」
ちっ、もう来たのか早ぇな。ハクアは俺の手を掴みもう誤魔化すから放せと言わんばかりの視線を送ってくるので口を解放した。
「何でもない!今日は休んでいいぞ!」
「わ、わかりました!何かあれば叫んでくださいね!!」
そういうとメイドがドア前から去っていく音が聞こえた。
「全く、何してんだお前」
「それはこっちのセリフだ!何をしに来た!これがばれたらまず間違いなく牢にぶち込まれるぞ!」
「お前を助けに来た」
「は?」
「だから!お前を助けに来た」
「何で....?」
「お前さっき助けて欲しいつってたじゃんか。正直に話してみ?ほら」
「ダメだ。これはお前が関わったとしても何も変わらない」
「言うだけ言ってみろ」
「....30億レス、当家はバトラス伯爵から30億レスの借金をしている」
「さ、30億!?なんでそんな大金を!?」
「分からない、だがある日この家に30億レスの請求が来た。差出人、バトラス伯爵から当家に向けてそして、その下には約定があった。もし、当人が払えなかった場合、娘をもらう、とな」
「おいおい、マジかよ」
「そして、今お父様は謎の病にかかって払えない状況にある」
「だから、お前と結婚してそれを取りやめにしてやるってことか?」
「そういうことだな」
「そんなことあんまりだろ!不当な請求で払えなかったら結婚!?理不尽にも程がある!」
「だが、貴族にはそんな理不尽さえも通る。これが世の中の定石だ。だから」
そういうとハクアは俺の顔を見てくる。
なんだなんだ?
「私とここで大人にならないか?どうせあいつに捧げるならよほどお前に捧げるほうがマシだ。どうだ?」
ん?つまり俺がハクアと.....うんんんん!?待て待て!俺はそんなつもりできたんじゃなくてだな!?そもそもそういう気は無いと言いますか!?確かにここに来てから一度もそういうことはしてないけど!?いやいやでもでもでも!!
俺の思考回路がパンクしているとハクアが俺の手を取り流石にいきなり胸に持っていく気はなかったのかお腹に手を置いてきた。なぜか、ここで俺は思っていたことを言ってしまった。
「お前、割と肉あるんだな」
◇
俺はあの後いきなり頬を殴られた。見るとハクアが立ち上がり俺を鬼の形相で見ていた。そう、こいつは死んだあの日に見た俺の母親と似た表情をしていた。てかめちゃ怖い!
「お前というやつは.......もう許さん!!」
「お、おい待て!はやまるな!」
「助けてーーーー!!!」
屋敷中に響き渡るような声で、ハクアが叫んだ。すると、どこからか複数の足音が近づいてくる。俺は『隠密』と『透過 』で逃げ出した。
「ショウタ!待て!!貴様ァ!!」
やばい、次アイツに会ったら殺される。早く逃げねば!!俺はとりあえず屋敷の廊下を走って逃げていた。すると前からメイドやら執事やらが迫ってくる。この『透過』は扉や机はすり抜けれても人間はすり抜けれないらしい。
俺はドアに背を向けてなんとか避けようとするが、俺はドアをすり抜けることを忘れて完全に体重を後ろに向けていたためそのまま背中から一回転して部屋にダイナミック入室した。
「ってぇ!!」
「....そこに誰か....いるのか....?」
俺が痛みに声を上げていると弱々しく声を出して俺の方を寝転んだ状態で見ている50代くらいの男性がいた。
「あ、あなたは.....」
「君はトドロキ ショウタくんだね?」
「え、ええ。でも何で?」
「君のことはよくハクアから聞いているよ。それに新聞でこの前君の顔を見たからね」
あの盗撮新聞ここまで浸透してんのか。今度編集者見つけたらとっちめてやる!
じゃなくてだな。
「ひとつお聞きしたいことが」
「何かね?ハクアの結婚のことかね?」
「借金のことです。あなたはバトラス伯爵から不当な借金を請求された。でも女神の側近なら、それを返せる金もあるのでは?」
「ないよ。せいぜい用意できたのは20億がやっとだ。あと10億が足りんのだよ。ショウタ君、娘と逃げてくれないか?私としてはあのようなやつに娘をやる気はさらさらないんだ」
「いや無理ですよ。あいつ今本気でキレてますから。次会ったら俺殺されますもん」
「ほっほっほ。仲のいいことだ」
そんなことを話していると、なんともタイミングが悪い。ハクアが入室してきた。
「失礼しますお父様、侵入者が徘徊しているためお守りを.....ショウタ!!」
「お前はタイミングって言葉知らねぇのか!おっと!今攻撃すんなよ!?親父さんの前だぞ!」
「くっ!こいつ!!」
「ハクア、ショウタ君と逃げなさい」
「っ!?、お父様何を!?」
「ハクアから出てくるのはいつもショウタ君の事ばかり。それほど気に入った相手になら娘をどうされようと私は構わない。だから逃げるんだ」
「.....親父さん、ハクア、俺はここにハクアを連れ出すために来たんじゃない。俺は宣言しに来た」
「宣言だと?何を今更.....」
「当日、必ず助けに行く。それまで耐えろよ」
俺はハクアの頭に手をポンポンと置き、窓から脱出した。背中から落ちて一気に肺の空気が飛び出すがすぐに『移動』を俺の部屋と繋いで逃げた。
二話本気で書くと言ったな、あれは嘘だ。
というわけでこのあと、中編、後編と続きます。このあとの二話も本気で書きます。合計三話になりますがお楽しみに!
ヘラクレス討伐からさらに五ヶ月ほどたったある日、クランが俺たちをある部屋に集めて手紙を差し出してきた。俺はその手紙の内容を見て冒頭の言葉を紡いだ。
手紙の内容はこうだ。
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我が親愛なるパーティーメンバーへ
突然ですが私ことハーネスト・クリスチャン・アリシアは結婚することとなりました。
相手はとある領主を収めている男性。
というわけでパーティを抜けることになります。お手数をかけますがご了承ください。
その下に結婚相手と場居と日時、開演時間が書かれ、最後に
今までありがとう。そしてさようなら
ハクア
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俺は手紙の内容を読んだあと手紙を思いっきり破り捨てた。
「ショウタ!?」
「おいおい、悪い冗談だぜ?こんなの。にしてもタチが悪いな。どこから届いた、ぶっ飛ばしてやる」
「恐れ入りますが旦那様、その手紙は完全にハクア様の字で、ハクア様から手渡されました。そして、私に「世話になった、ここに戻ることは二度とない」と言って天界へ帰っていきました」
「ショウタ......」
「っ!!」
俺はソファに座り込み拳を机に叩き込んだ。痛かったがそんなことよりも怒りが勝っていた。
ハクアが結婚?しかも手紙で知らせ?馬鹿か。あいつが、つい昨日まで楽しく笑っていたあいつが、悲しそうな顔をひとつもしてなかったあいつが、なんの相談さえもなかったあいつが、俺たちに何も言わないで去るなんてことがあるわけが無い。
「ショウタ......」
「悪い、ちょっと出てくる」
「ショウタ(さん)!」
後から3人の声が聞こえたが俺は気にせず『移動』でガルガンドのアテナのところに向かった。ついた瞬間俺は兵士に発見され、要件を伝えると女神の間まで案内された。
「ショウタ、いらしたのですね。本日は何用ですか?」
「女神様、知ってることをすべて教えてくれ」
「....どういう意味ですか?」
「知らないとは言わせない。知ってるんでしょう?ハクアの結婚の事を」
「っ!そ、それは......」
アテナは表情を曇らせ考える。だが数分後決心したように話してくれた。
「ええ、知っていますよ、ハクアの結婚のことを。まっさきに私たちのところに言いに来ましたからね。でも、私にはわかりました。これが望まない結婚だと言うことに」
「どういう事ですか?」
「あの子の私に報告する時の顔はものすごく悲しい顔でした。私はやめたらいいだろうと言いましたが、それは絶対にできない、これは絶対なんだと言っていました」
「何かあるのかも知れませんね」
「私もそう思って宮廷の戦天使や私自身も調べているのですが一向に尻尾が掴めないのです、私はもしかしたら悪魔の仕業じゃないかと思っているんです。結婚相手はずっと前からハクアに目をつけていたそうで、おそらく、悪魔と手を組んだのではないかと」
「そして何らかの理由で結婚をしないといけない状況に陥れた....と?」
「私はそう思っています。ショウタさんはどう思いますか?」
「俺は、ハクアの実情も知らないので分かりませんが、絶対に言えることが一つ。あいつは無言でパーティーを抜けるようなやつじゃないってことです」
「....よくハクアを見ているのですね、とても安心しました。もう夜になってます。今日はここに泊まっていきませんか?」
「そうですね、泊まれるなら泊まりたいですが今、いいタイミングなので遠慮しておきます」
「どういう意味ですか?」
「ガサ入れですよ。それじゃ!」
「まっ!ガサ入れって何......」
俺は『移動』でガルガンドを出た。
なら俺がどこに行ったかというと、もちろんハクアの家、ハーネスト邸である。
何故か外に警備が巡回していた。しばらく様子を見てみると玄関からとある男が出てきた。かなり太っていて、かっこよくもない。恐らくあれが手紙に書かれていた結婚相手のバトラス伯爵だろう。
バトラス・アンデルセン。この世界でも有名な悪徳貴族。複数の女に手をかけ飽きては捨てるを繰り返している外道野郎だと聞いたことがある。その上金も持っているから女は何も言えないらしい。
バトラス伯爵は玄関で誰かと話していた。あれは....ハクアである。三つ編みを結い、肩から下ろしてワンピースにスカートという落ち着いた格好をしていた。めちゃくちゃ可愛い。
そんなことはどうでもいい。問題なのはハクアの顔だ。バトラス伯爵はゲスい笑みを浮かべて話していたがハクアは笑って入るもののどこから悲しそうで、寂しそうだった。俺はそんなハクアの表情を見た瞬間怒りが噴水のように湧き上がってくる。
「落ち着け主。ここで出ていったら計画を実行する前にお縄だぞ!」
俺は神威の制止でなんとか思いとどまったが怒りが収まらない。しばらくしてなんとか怒りを抑えた俺はその光景を見ていた。するとそこから数分後、今度こそバトラス伯爵は飛び去って行った。警備の人数も減り、俺は突撃するため行動に出た。
「....なんだお前....はっ!」
「どうした!?ぐわっ!!」
俺は窓の近くにいた警備の人に峰打ちを食らわせ駆けつけた人に後頭部にチョップをいれ気絶させる。そして窓を『透過』の魔法ですり抜け、『隠密』の魔法で姿を隠す。
『探知』で俺が知っているハクアの魔力を探す。どうやら中に入ってから自分の部屋にいるようだ。この家は前にハクアの家に止まった時に案内してもらったため全部が頭に入っている。俺は難なく部屋の前まで行くと俺は中に入るするとハクアが
「はぁ.....誰か助けてくれないかな.....」
と言ったので
「俺が助けてやろうか?」
◇
私は今、客人の対応をしていた。
私の結婚相手、バトラス・アンデルセン伯爵だ。私はとある事情によってこの男と結婚することになった。この男は実に変態で隙があればセクハラをしてくる。
お尻を触られたこともあったし太ももを触られたこともあった。私はその度にあしらってきたが。しばらくすると帰ろうとしたので私は見送った。玄関先でも話すことが多いのなんの。そしてやっと帰ってくれた。明日も来ると言っていた。私はとても疲れていた。部屋に入りベッドに仰向けになる。こんなことなら、逃げればよかった。でも、もうどうすることも出来ない。だから私はせめてもの希望をかけて
「はぁ.....誰か助けてくれないかな.....」
「俺が助けてやろうか?」
◇
俺は姿を現しハクアに声をかける。もちろんハクアはとても驚いた表情をしていた。
「なっ!お前はショウ.....むぐぅ!」
俺は咄嗟にハクアの口を塞いでなんとか声を上げるのを阻止する。ハクアがベットに倒れていたため傍から見れば俺が口を塞いで押し倒したように見えていることだろう。
「お嬢様!?どうされましたか!」
ちっ、もう来たのか早ぇな。ハクアは俺の手を掴みもう誤魔化すから放せと言わんばかりの視線を送ってくるので口を解放した。
「何でもない!今日は休んでいいぞ!」
「わ、わかりました!何かあれば叫んでくださいね!!」
そういうとメイドがドア前から去っていく音が聞こえた。
「全く、何してんだお前」
「それはこっちのセリフだ!何をしに来た!これがばれたらまず間違いなく牢にぶち込まれるぞ!」
「お前を助けに来た」
「は?」
「だから!お前を助けに来た」
「何で....?」
「お前さっき助けて欲しいつってたじゃんか。正直に話してみ?ほら」
「ダメだ。これはお前が関わったとしても何も変わらない」
「言うだけ言ってみろ」
「....30億レス、当家はバトラス伯爵から30億レスの借金をしている」
「さ、30億!?なんでそんな大金を!?」
「分からない、だがある日この家に30億レスの請求が来た。差出人、バトラス伯爵から当家に向けてそして、その下には約定があった。もし、当人が払えなかった場合、娘をもらう、とな」
「おいおい、マジかよ」
「そして、今お父様は謎の病にかかって払えない状況にある」
「だから、お前と結婚してそれを取りやめにしてやるってことか?」
「そういうことだな」
「そんなことあんまりだろ!不当な請求で払えなかったら結婚!?理不尽にも程がある!」
「だが、貴族にはそんな理不尽さえも通る。これが世の中の定石だ。だから」
そういうとハクアは俺の顔を見てくる。
なんだなんだ?
「私とここで大人にならないか?どうせあいつに捧げるならよほどお前に捧げるほうがマシだ。どうだ?」
ん?つまり俺がハクアと.....うんんんん!?待て待て!俺はそんなつもりできたんじゃなくてだな!?そもそもそういう気は無いと言いますか!?確かにここに来てから一度もそういうことはしてないけど!?いやいやでもでもでも!!
俺の思考回路がパンクしているとハクアが俺の手を取り流石にいきなり胸に持っていく気はなかったのかお腹に手を置いてきた。なぜか、ここで俺は思っていたことを言ってしまった。
「お前、割と肉あるんだな」
◇
俺はあの後いきなり頬を殴られた。見るとハクアが立ち上がり俺を鬼の形相で見ていた。そう、こいつは死んだあの日に見た俺の母親と似た表情をしていた。てかめちゃ怖い!
「お前というやつは.......もう許さん!!」
「お、おい待て!はやまるな!」
「助けてーーーー!!!」
屋敷中に響き渡るような声で、ハクアが叫んだ。すると、どこからか複数の足音が近づいてくる。俺は『隠密』と『透過 』で逃げ出した。
「ショウタ!待て!!貴様ァ!!」
やばい、次アイツに会ったら殺される。早く逃げねば!!俺はとりあえず屋敷の廊下を走って逃げていた。すると前からメイドやら執事やらが迫ってくる。この『透過』は扉や机はすり抜けれても人間はすり抜けれないらしい。
俺はドアに背を向けてなんとか避けようとするが、俺はドアをすり抜けることを忘れて完全に体重を後ろに向けていたためそのまま背中から一回転して部屋にダイナミック入室した。
「ってぇ!!」
「....そこに誰か....いるのか....?」
俺が痛みに声を上げていると弱々しく声を出して俺の方を寝転んだ状態で見ている50代くらいの男性がいた。
「あ、あなたは.....」
「君はトドロキ ショウタくんだね?」
「え、ええ。でも何で?」
「君のことはよくハクアから聞いているよ。それに新聞でこの前君の顔を見たからね」
あの盗撮新聞ここまで浸透してんのか。今度編集者見つけたらとっちめてやる!
じゃなくてだな。
「ひとつお聞きしたいことが」
「何かね?ハクアの結婚のことかね?」
「借金のことです。あなたはバトラス伯爵から不当な借金を請求された。でも女神の側近なら、それを返せる金もあるのでは?」
「ないよ。せいぜい用意できたのは20億がやっとだ。あと10億が足りんのだよ。ショウタ君、娘と逃げてくれないか?私としてはあのようなやつに娘をやる気はさらさらないんだ」
「いや無理ですよ。あいつ今本気でキレてますから。次会ったら俺殺されますもん」
「ほっほっほ。仲のいいことだ」
そんなことを話していると、なんともタイミングが悪い。ハクアが入室してきた。
「失礼しますお父様、侵入者が徘徊しているためお守りを.....ショウタ!!」
「お前はタイミングって言葉知らねぇのか!おっと!今攻撃すんなよ!?親父さんの前だぞ!」
「くっ!こいつ!!」
「ハクア、ショウタ君と逃げなさい」
「っ!?、お父様何を!?」
「ハクアから出てくるのはいつもショウタ君の事ばかり。それほど気に入った相手になら娘をどうされようと私は構わない。だから逃げるんだ」
「.....親父さん、ハクア、俺はここにハクアを連れ出すために来たんじゃない。俺は宣言しに来た」
「宣言だと?何を今更.....」
「当日、必ず助けに行く。それまで耐えろよ」
俺はハクアの頭に手をポンポンと置き、窓から脱出した。背中から落ちて一気に肺の空気が飛び出すがすぐに『移動』を俺の部屋と繋いで逃げた。
二話本気で書くと言ったな、あれは嘘だ。
というわけでこのあと、中編、後編と続きます。このあとの二話も本気で書きます。合計三話になりますがお楽しみに!
コメント
垂直抗力(元ラノベ大好きサムライ)
このすばのパクリやん(*´-`)