不幸な男は異世界で最強になったようです

大島 こうのすけ

20#完成、エンペラー

俺は『移動』で親方の店の前まで帰ってきた。
時刻は昼を過ぎて2時頃だろうか。


「親方〜ただいま〜」

「おうショウタ帰ってきたか。意外と早いんだな」

「まぁ、魔法使えば一瞬なんだよな帰りは」

「んで?」

「うん?あぁ籠ね。んじゃちょっと来て」


俺は親方の服をつかみ『移動』で草原に出る。


「どわぁ!?なんだ今のは!?」

「俺の無属性魔法『移動』だよ。他にも使えるけどな」

「お前、無属性魔法は個人の魔法で人の数だけあるっていうのに他にも使えるだと!?」

「そうゆうこと。まぁ、今は収穫の話をしよう。役に立ったぜこの籠。よっと」

そういい俺は籠を開け、中身を放り出す。籠の中から大量に確保したレア鉱石とメタルスコーピオン、プラチナドラゴンが出る。


「うぉぉぉぉ!?なっ、なんだぁこの量はぁ!?メタルスコーピオンにプラチナドラゴン!?お前、どんだけ山奥に行ったんだ?」

「親方に言われたところを突き進んでたら出たけど?」

「...あのな、こんな奴らは雪山の相当中央に行かねぇと出ねぇんだよ。だから名前の上に希少モンスターって書いてあるだろ?」


そう言われ俺はモンスターリストを見てみる。
本当だ、書いてある。全然気づかなかったわ。


「それにこの鉱石の山....もしかしてオリハルコンタートルに会ったのか?」

「会ったよ。小島みたいに広かったけど全部掘り抜いてやったぜ。1時間半くらいで」

「お前....こいつに会えるのどんだけ希かわかってるのか?しかも山のようにある鉱石を1時間半で?何もんだお前?」

「ただの冒険者だぜ?」

「....そうか。んで俺をここに連れ出したのはこいつらが原因ってわけか」

「こんなの工場でぶちまけられたら迷惑だろ?」

「あぁ大迷惑この上なくなる。じゃあ、とりあえず素材バラしてプラチナドラゴンの方だけお前の剣の素材に使うことにするわ」

「なんでそっちだけ?」

「メタルスコーピオンは加工ができないのさ。どんな熱でもこいつの甲殻は溶かせねぇ。ただ、肉は上手いらしいぞ」

「んじゃ俺の魔法でも?」

「流石にお前がバケモンみたいな採掘スピードだからってこいつの甲殻は溶かせねぇだろ」

「んじゃちょっと失礼して」


俺は『豪炎インフェルノ』を近くの巨大な岩の一部に放つ。着弾後ものすごい火炎が渦巻き、岩を一部ガラスに変えるに飽き足らず、そのまま蒸発させてしまった。残ったのは焼かれなかった岩のみだった。
忘れている人のために説明しておくが俺は魔法も使える。


「な、なんだあの威力の魔法はァ!?お前剣士なのにこんな魔法まで使えるのかよ!?」

「そういう職業だからな」

「ま、まぁお前が凄いのは充分に分かった。確かにあの魔法なら加工できそうだ」

「今からやるのか?」

「こっちも色々用意があるからな。加工と焼入れの時に呼ぶからそん時に来てくれ。んじゃ俺はこいつらを解体してから運ぶから帰っていいぞ」

「分かった。んじゃ俺は待機してるわ。じゃあな親方!」


俺は『移動』で屋敷に帰った。玄関にはお仲間総出でめちゃくちゃ怒った顔をした待っていた。そういや、あたりめっちゃ暗いじゃん....


「ショウタ(さん)!」

「どこに行ってたんですか!」

「い、いやその....あ、新しい剣を....」

「言い訳無用!」

「こっちへ来い!」


このあと俺はハクアに首根っこを掴まれ、とある部屋に連れていかれ、そこで4人に理由を話したがなぜかこっぴどく叱られました。
解せぬ。



あの二日後、ようやくエレナ達は機嫌を直してくれた。
未だになぜ怒っていたのかは謎である。
そしてその二日後、親方から電話があった。あらかじめ電話番号を教えておいて正解だった。


「ショウタ様、親方という方よりお電話でございます」

「ありがとう。もしもし?」

「おうショウタか!いよいよ加工だ!来てくれ!」

「分かった。今すぐ行く」 


俺は受話器を起きクラムに渡す。


「クラムさん、今すぐ、俺は1日街の工場にいると4人にに伝えてください」

「かしこまりました」


クラムはそれだけ言うと退室していった。


「よし、俺も行くか」


俺は『移動』で街の工場へ向かった。
出てみると親方の横だった。


「うおっ!ショウタいきなり出んなよ!びっくりしただろ!」

「すいません。んで、加工だっけ?」

「おうよ、こいつらの解体に三日もかかっちまった。とりあえず準備は出来てる。早速行くぞ!」

「おっけ!」


俺は『豪炎』の魔法を溶鉱炉に入れる。
瞬間溶鉱炉の中が燃え盛りそのまま燃え続ける。
親方が素材やら鉱石やらをそこで溶かしていく。


「まさか本当に溶けちまうなんてな。呆れたぜ」


親方はそう言いながらも淡々と続けていく。俺の世界普通剣が完成するのは1ヶ月後くらいなのだが、この世界では1日で完成するらしい。素材や溶けた鉱石が融合してひとつの合金になり果てた。その後すぐに溶鉱炉から出して剣の形を作っていく。


「親方、それは?」

「これは、特殊な素材やこんな希少な鉱石を加工する時に使う、魔法が付与されてるハンマーだ」

「それで叩くのか?」

「ああ、これで叩いて剣の形を作る。どうだ、やってみるか?自分の剣は1回ぐらい自分で打ちたいだろ?」

「やってみる」


俺は親方からハンマーを受け取り叩く。火花が飛び、剣が形作られていくのがわかった。その後も作業が進み気がつけば夜になっていた。今や剣の形はしっかりと出来ており後は研ぐだけらしい。


「お前はそろそろ帰りな。あとは研ぐだけになったからな」

「ありがとう親方。んじゃ明日でいいんだよな?」

「ああ、明日また電話する」


俺はそれだけ聞くと『移動』で屋敷に帰り明日を待った。

〜翌日〜

親方から電話があったため俺は『移動』ですぐさま工場へ向かった。今日は昼までいる、とクランさんに4人に伝えてもらって。


「うおっ!?だからショウタ、その瞬間移動的なやつなんとかならんのか!心臓に悪いぞ!」

「お、親方!目にクマが.....」

「俺も集中してたみたいでな、ふぁ〜あ、つい気合が入っちまった。ほら」


親方が研ぎ終わった剣を見せてくれた。紫色の刀身に左右の刃から中心に向けて幅5cm程ある青色の線が刃先まで伸び、柄が紺色のとても綺麗な剣が仕上がっていた。


「す、すげぇ、これが俺の剣.....」

「いいリアクションだ。実はな、まだ完成じゃねぇんだ」

「どういう事?」

「まぁ、折れねぇとは思うが一応希少鉱石は魔法を受け付ける性能があってな。オリハルコン、ダイアモンドメタル、プラチナをふんだんに使ったり、魔法を吸収して利用できるメタルスコーピオンの甲殻まで使ったんだ。魔法をかけて完成させることが出来るがどうする?」

「かけることにする。どうやるんだ?」

「なぁに、簡単だ。その剣自体に魔法をかければいい。そしてこの名前の刻印を剣に推し当てれば正真正銘お前の剣だ」

「ということは名前もつけなければならない...?」

「そういう事だな。さて、時間を....」

「貸してくれ。俺はもう決めた」


俺は親方が持っている剣を強引に奪い魔法をかける。かけるのは『超硬化』、『魔法利用(全属性)』、『絶折』、『超軽量化』。(ちなみにこれらは全て無属性魔法)この4個の魔法が剣に吸われる。

「そんなにかけるのか...まぁ、折れたら元も子もねぇもんな。んで名前はどうすんだ?」

「....エンペラー.......」

皇帝エンペラーか.....いい名前だ。この剣にふさわしい名前だな」

まぁ、俺は昔やってた某ロボットアニメで主人公の次に強いやつが使ってた機体に色とかすべて似てたからこの色にしたんだけどな。

俺は魔法で刻印にエンペラーと刻み刀身に押し込む。エンペラーの文字と魔法付与の刻印が刀身に染み込み跡形もなくなる。瞬間刀身が薄く紫色に光り、消えた。


「よし、これで世界で一つだけのお前の剣ができた。試し斬りしてみるか?」


そういうと、親方は初めて会った時に出た木のカカシを用意する。


「んじゃ、遠慮なく!」


俺は一歩踏み込み剣を振り抜く。
刀身はめちゃくちゃ軽く地面まで突き刺さってしまった。だが、それでカカシがスパンと切れただけでは終わらず、剣速があまりにも早かったために軽く工場内で突風が起きた。


「な、なんだぁ!?突風が起きたぞ!」

「す、すげぇー!ショウタ兄ちゃん!この剣スゲーな!」

「ああ、ビスケ。でもな、これを打ってくれたのは親方だ。だからすごいのは親方だぜ?」

「でも、兄ちゃんもすごいよ!あんなに早い剣撃見たことないよ!」

「ありがとう。そして親方、お世話になりました」

「あぁ、俺も満足だ、ほら、これが鞘な。んじゃ帰ってくれ。俺は寝る」


俺はそのまま工場を跡にした。
そうだ、これは隠しておこう。もしみんながピンチの時に驚かせれるかもしれないしな。

この時、この翔太の発言がフラグになるとは、まだ誰も思っていない。もちろん翔太でさえも。

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