不幸な男は異世界で最強になったようです

大島 こうのすけ

11#王都への旅路、何故かドラゴン

翔太は気怠い感覚とともに目を覚ました。そしてまだ覚醒していない脳は昨日のことを思い出させる。
....忘れよう
必死にそう思いドアノブに手をかけ外へ出る。そして昨日食事の時に案内された部屋へと行く。入った時、もう皆は集まっていた。


「ショウタ遅いわよ~もうご飯出てきてるんだから」


ショウタはエレナにそう言われ時計を見る。時刻は10時を示していた。ショウタもテーブルにつき、食事を始める。貴族というだけあり昨日今日、とても豪華な食事になった。特に何も起こることなく食事を終えたショウタ達はエミリの屋敷をあとにして街の東門へと向かっていた。なぜかと言うと、そこから出発する姫君の護衛の為だ。


「にしても、私たちの初クエストが護衛任務なんてね~」

「仕方ないさ、王様からの頼みなんだし」

「まぁ、それもそうよね。断るわけにも行かないしね」

「お、見えてきた見えてきた」


ショウタが指を指したその先、たくさんの馬車と王国騎士達が集まっていた。ショウタ達も馬車に乗るべく、そこに向かった。とある騎士の一人がこちらに気づいて声をかけてくる。


「やぁ、ショウタ君。久しぶりだね、今回はよろしく頼むよ」


そう気軽に声をかけてきた人物、それは騎士団長のレオだった。


「あぁ、レオさん。お久しぶりです」


翔太は挨拶を交わし一段と目立つ高貴な馬車へと近づく。


「王様の娘様とご対面したいのですが.....」


翔太は一番近くの護衛を任せられていた騎士に声をかける。


「ん?あなたはショウタ様。少しお待ちくださいませ」


ショウタは若干の違和感を感じながらも馬車の中から姫君が出てくるのを待った。数分して馬車の扉が開かれ姫君が出てきた。


「誰だー私を呼んだのはー!」


元気と一緒に明るいものが飛び出してきた。飛び出てきた姫君はまだ12歳くらいの子供で全体的に幼いという印象を与えられる。翔太の予想の斜め上を行ったため驚きを隠せないでいた。


「誰だー?名前教えて?」


純粋に悪意のない笑顔でこちらを見てくる姫君。
まじか、まさかのロリ属性か.......俺そういう趣味はないからなぁ.....
少し脳で驚きを隠しながらも返答する。


「はじめまして、姫君。俺は轟 翔太。よろしくね!ええと.....」


翔太が名前の分からない姫君の呼び方に困っている中


「んー?ショウタ?聞かない名前だねー!あ、わらわはルミ・シルフォードじゃ!くるしゅうないぞ!ショウタ!」


と自分から名前を出してくれた。


「よろしくな、ルミ」

「此度は護衛頼んだぞ!ショウタ!」


どうやら俺は早速娘さんに気に入られたらしい。恋愛対象外だが。
さすがに翔太も幼女属性はよろしくなかったのか、それとも単純にそういう目で見ない方針にしたのか、それはともかくとして、ショウタは挨拶だけ済ましエレナたちの元へ帰った。


「あなた随分と仲良くなったみたいね」

「どうやら俺にはそういう才があるらしいわ」

「どうでもいいけど早く馬車に乗って?今から出発よ」


ショウタは後ろから乗り込みリターナをあとにした。
昼間、そして夜と特に代わり映えすることなく安全に過ぎていった。護衛の騎士達も、ほかのクエストを受けた冒険者たちも眠った中、見張り番となっていた翔太はただただぼーっとしていた。


「暇そうだな主よ」

「うぉっ!急に喋んなよ.....めちゃくちゃびっくりしたぞ。下手したらこの世界に来て一番かもしれない」

「大げさも度を超えれば笑いとなる、しかしだ暇そうだな主?」

「全くだよ、なにせやることねぇんだから」

「では、我がこの世界の通貨について教えてやろう」

「神威そんな知識知ってんの?」
「はっ、笑わせるな。仮にも我は数多のものに使われてきた神剣ぞ?それぐらいは熟知しているさ、おっと主よ、この世界は金貨と銀貨と銅貨だけで出来ていると思ったら大間違いだ。この世界は『ネス』という通貨が基本だ。1ネスは主の世界でいう100円だ」

「なぁ、なんでお前俺の世界のこと知ってんの?てかなんで転生してきたこと知ってんの?」

「主は全世界線共通の神に選ばれたのだ。そして我は神が主のキャラを作っている時既に召喚されていたのさ」

「つまりあれか?実態なかったけど精神だけあって全部聞いてたのか」

「そういうことになる」

「盗み聞きかよ」

「盗み聞きとは失礼な、あれは仕方の無いことだったのだ。....話がそれたな。それで、だ。ネスというのはこの世界ではどこに行っても使える。万能通貨というわけだ。だから、主が今所持している金貨10枚はこの世界では10万ネスというのだ。わかったか?」

「なるほど、わかりやすくて結構。お前絶対あっちなら教師なれるぞ?」

「戦いの剣が教師か....悪くないな。まぁそういうことだ。そして我はこんなふうにいつでも話しかけれる。もちろん主から我を呼んでも同じだ、我も返事をしよう」

「便利だなお前らいろいろと」

「おっと、誰かが起きたらしい我はもう黙る」

「?おい待てなんで黙る、ってこら!喋れよ!」
傍から見たら俺が剣に怒鳴ってる図にしか見えないのだが.....人が見てなくてよかった....

「ショウタぁ交代ねぇ~ふわぁ~あ」
大口を開けてあくびをするエレナを見て素直に思ったことを言ってみた

「お前さ、もう少し自重しろよ?そんなとこ人にでも見られたら評価ガタ落ちだぞ?」

「?何のこと?まぁ、いいわ。眠いでしょ?私はもうじゅうぶん寝たから交代ね。さ、入った入った」


なぜか追い払われるように手を振ったエレナを背に、翔太は馬車の中で眠っている仲間と眠った。目が覚めたら既に馬車は動いていた。どうやらかなりの間眠っていたらしくエレナたちは外に出て護衛の任をこなしているようだった。
よし、サボるか.......
翔太はこの世界に来て初めて訪れた怠けの感情を適用した。
気がつけば昼であることは胃の調子から分かった
それにしてはエレナたちも何も言ってこない。どういうことだ?
翔太は疑問を解消すべく外へ出る。だが変わりなく馬車は進み前にはとある門が見えた。そのもんは城壁と言うよりは魔物よけの壁と言った方が正しい。立っているのも村民らしき人であって騎士ではなかった。その男と騎士、(よく見るとレオ)が話をしていた。しばらくして要件が済んだのか門が開き馬車が中へと進む。さすがに翔太もずっと馬車内でサボっていたため罪悪感があったのか馬車を降りて歩く。だがすぐに馬車は止まり、兵士たちやそのほかの冒険者たちが一斉にある家へと歩いていく。


「ショウタ起きてたの?なら言ってよね」


と、馬車の反対側を護衛していたらしいエレナが声をかけてくる。


「あ、悪い悪い。気がついたら昼だったんだわ。そういや皆は?」

「エミリは木の上からここまで見張ってたからじきに来るわ。ルビーは精霊で周りを見張ってくれてたからどこかにいるわよ。それじゃ私達も行くとしましょうか」


エレナは翔太の手を引っ張りさっき、大勢が入っていった家へと向かった。


「どこにいくんだよ、てかどこだよここ」

「ここは、王都までにある途中の村よ、この間で来るのに1日半、ここから王都まで1日、


計2日半よ、今日はここで休んで明日からまた目指すから3日半になるけど。それに今お昼よ?食堂に行くに決まってるじゃないの」


「てかなんで起こしてくれなかったんだ?」

「あなた昨日、と言うより今日の夜明けくらいまで見張りしてたのよ?実感なかったらしいけど私が見張りについて数分くらいしてから日の出になったの。だから、あなた以外起きたら話し合って起こさないでおこうってことになったのよ」


「それはありがたい。おかげでさぼ.......いい休養になったぜ」

「今サボってたって言わなかった?」

「き、気のせいだ。気のせい。な?」

「とりあえず席に座ってご飯来るまで待ちましょう」


そう言われショウタはエレナの横に座り飯を待つ。よく見るとまだ昼だというのに酒を飲んでいる冒険者や騎士がチラホラと見える。非常に気が抜けていると思えた。その後すぐにエミリとルビーが合流しパーティで食事を味わったあと、各自の自由時間となった。


「さてと.......」


翔太は席を立ち家の外へと出ようとする

「ショウタ、どこに行くの?」

「飯食ったらやることはただ一つ!昼寝だ!というわけで自然と寝るのに憧れていたからどこかの木陰で休むとするよ」


翔太ははそう言い 家をあとにする。そんなこんなでエレナたちとは別行動となった。
にしてもやけに盛り上がってるよな、周りは森だから魔物もいるはずなのに。さすがに気を抜きすぎじゃないか?そんなに安全なのか、あの壁。
翔太はそんなことを思いながらも木陰で休めるような場所を見つけた。木に体重を預け目を閉じる。
さすがに魔物とか来ないよな.....寝るか。
そう思いつつウトウトし出す。だがこんな時に限って翔太の危惧は当たりを見せる。つまりどういうう事か。


「魔物来襲!魔物来襲!ドラゴンもいるぞ!女子供は公民館に集まれ!それ以外の男は武装して迎撃準備だ!」


こういう事だ。その声を聞いて翔太の意識は再び覚醒する。睡眠を害されたことに怒りを覚えながら半ギレの表情でエレナたちの元に急ぐ。


「ショウタ!って、顔どうしたの.....」

「心配すんな、ちょっとイラッときただけだ」


エレナが聞いてくるのもわかるだろう。なぜなら翔太の顔には、眉間にとても深いシワが刻み込まれていたからだ。


「ドラゴンもいるそうよ、私は木に登って狙撃してくる!」


エミリはそう言うと近くにあった木へとかけて行った。


「私は精霊でトラップを仕掛けてこの村に来る前に数を減らしておきます!」


そう言うとルビーはそのまま門へと走っていった。そして残された二人は


「ここで迎撃するか」

「そうね、私はあっち行っても数減らす前に森に被害が及ぶし」


同意見でここで迎撃することとなった。まもなくしてどこかの木から稲妻を帯びた矢が空へ向かって射出された。おそらくエミリのスキルだろう。外からは赤い光や青い光がチラつくようになってきた。これはルビーのものだろう。ここに戦いの狼煙が切られたらしい。


「それじゃ行きましょうかね。雷魔法『サンダーレイン!』」
エレナが放った魔法は空を飛んでいるドラゴンの頭上に展開され、一気に多数のドラゴンにダメージを与えた、はずだった。


「何よあれ!まだピンピンしてるし!」


そう、あれは目視でもかなりの威力を誇っていると確認できる。それをくらってもまだ平然と空を飛行していたドラゴンは魔法耐性が高いらしい。特に群れのリーダー格と思える真ん中にいるホワイドラゴンには魔法が作用していなかった。


「エレナは周りの魔物を何とかしてくれ!あいつは俺が叩く!」


エレナへ指示を飛ばし、こちらに飛来してくるドラゴンに剣を構える。


「エンチャント『豪炎インフェルノ』!」


翔太は炎の最上級魔法の原点である『豪炎』を剣に付与させドラゴンに向かって放つ。放った炎は見事1頭のドラゴンに命中し地面へと落とす。だがまだ、ドラゴンがいるため気は抜けなかった。


「きりがねぇな!やるか、神威!」


その声に反応するように剣が光り始める。


「剣よ、罪を砕け!『雷切』!」


翔太は剣を横に一閃する。そこから放たれた光の光線はドラゴンの群れを全て包み込み上空で大爆発を起こした。煙が晴れて数々のドラゴンが地上へ落ちる中先程の白いドラゴンだけは翔太へと飛来してきて、牙を見せる。翔太は噛みつきを既のところで躱し、再びたいを取り直す。だが、ドラゴンは上空に留まったまま何かを喋っていた。


「何してるんだあいつ?」

「ふむ、「貴様がさっきの光の原因か、我らドラゴンを地へと意図的に落とした罪として食いちぎってくれる」と言っているな」

「神威!?てか分かるのか!?」

「ああ、分かるぞ。そして待っていろ。貴様!どこのドラゴンだ!我の主にそのようなくちを聞くなぞ無礼にもほどがあろう!む?『龍たちの楽園』?ふっ、ならば貴様は殺してもいいようだ。待っていろ我の主がその首取ってやろう!」


何が何だか分からない翔太はただ呆然と見ていた。


「な、なぁ神威、何してんの?」

「もちろん会話だ。そして決裂、存分にやっていいらしいぞ主よ」

「そ、そうか。じゃぁエンチャント『深淵アビス』!」 


翔太は水の最上級魔法の原点である『深淵を剣に宿し走り出す。だがドラゴンは上空からなおも攻撃してきているためなかなか近づけないでいた。


「なら、『強化ブースト』!」


翔太は無属性魔法を展開し家の屋根へと登る。ドラゴンがまたも上空に逃げようとしたため足に力を込め飛び上がる。


「っ!逃がすかぁ!『アビスブレイク』!」


翔太はスキルを発動させ剣をドラゴンへ叩きつける。ドラゴンはものすごい勢いで体から敷地内の地面へ叩きつけられ地割れが起きていた。アビスブレイクは高濃度に圧縮された水を一気に対象へ送り付け、ダメージを与えるスキル。その威力はエンチャントをしている水魔法のランクにもよるがアビスを元としてスキルを発動した場合、1tの重圧がかかる。故にドラゴンは重力に逆らい地面に落ちたのである。地に落ちたドラゴンに近寄ってみるがなんの反応も示さない。おそらく気絶しているのだろうと予測して他の人の支援に行こうとするが翔太がドラゴンと戦闘になっていたあいだにほかの人が周りの魔物を退治したらしい、ほかの人々は既に警戒状態を解除していた。だがそこに強烈な咆哮が響いた。よく見るとドラゴン達が飛来してきた空から一際大きいドラゴンが飛来してきた。周りの人々や翔太も剣をとるが攻撃しようとしても体が動かなかった。そしてそのままドラゴンの接近を許し翔太の近くに着地した。


「貴殿よ、このホワイトドラゴンを倒したのは誰だ?」

「俺だけど」


てかドラゴンって喋んのかよ!!


「そうか貴殿か。すまない、うちのものが世話になったな」

「うちのもの?どういうこと?」

「全くだ、貴様と貴様のとこのドラゴンスレイヤーはどうなっているんだ」


そこに突然、神威が割って入ってきた。


「その声は神威様!となるとそこの者は......」

「無礼者めが。ここにいるのは我の主なるぞ」

「これは!先程の非礼、お詫びいたします。我が名ははファフニール、『龍たちの楽園』の長でございます。この度はうちのものが大変無礼を.....」


神威の名を聞くと突然かなりかしこまったファフニールが土下座並みに低い姿勢で謝ってくる。もちろんほかの冒険者や騎士達の注目の的であるためざわつき始めた。


「にしてもだ、なぜこんなことになった?ドラゴンは『龍たちの楽園』からは出ないはずだが?」

「実は、我々の監視が行き届いてなかったらしく隙間を見て逃げ出したらしいのです。これがすこし前にも起きまして.....」

「馬鹿者!貴様が長になったのなら長らしく一頭一頭しっかりと確認しておけ!しかも2度だと!?我に権限はないが普通なら長を剥奪するところだ。肝に銘じておけ」


「ははっ!では我らはお暇させてもらうとします。皆の者!帰るぞ!」


ファフニールのその一言で周りのドラゴンが起きあがり再び空へ飛び立った。それは白いドラゴンも例外ではなかった。ファフニールも飛び立ちドラゴンの群れを引き連れ帰って行った。村に損傷はあまりなかったためそのまま全員解散となった。そしてその夜はもちろんのこと宴会となった。日中に酔っていた騎士や冒険者達は更に酔い、ガヤガヤと騒ぎ立てていた。翔太はそうな風景を見ながらジュースを飲んでいた。


「ショウタ君、ちょっといいかな」


そんな翔太に騎士団長であるレオが話しかけてきた。


「君、昼はすごかったね、あのドラゴンの群れを一瞬で落とすんだもんなぁ....すごいや」

「いやいや。俺なんかレベル高いだけのポンコツもいいところですよ」

「はは、謙遜を、君は本当にどっちも強いよ。僕はカミュを止めれなかった。あいつの悪事に気づけず救ってやれなかっんだ。僕は友人失格だよ。でも、君はどうだい。見ず知らずの他人にも関わらす正しいことを正しいと言って、あいつを救ってやった。僕は君になんか叶わないさ。君が王国騎士団の席に座ってくれたらどれだけ嬉しいか.....すぎたことを言っても仕方ないね。ショウタ君、ありがとう、カミュを救ってくれて。最後にひとつ言わせて欲しい。君は冒険者だ、いくら強いと言っても戦闘力と精神だけじゃ絶対に乗り越えない困難が来る。だから、そんな時に僕の言葉を思い出してほしい。決して仲間を否定してはいけないよ。全て君の思うようにしたらいいんだ。自分の信じることを実行すればいい。いろいろとごめんね、そして明日も護衛頼んだよじゃあね」


レオはそう言うと人混みの中に入っていった。


「なんか、よくわかんねぇなぁ....まぁ、なんか色々教わったような気がするし、いっか」


翔太はそのまま全員が寝静まるまでは寝なかった。
翌朝、翔太は朝は役に目覚めた。どうやらいつの間にか地面で寝てしまっていたらしい。
土の感触って悪くないな.......植物ってこんな気持ちなのかな。
翔太はそんなことを思っていたら、後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえた。振り返ってみるとそこにはエミリが立っていた。まだこちらには気づいてないようで森の方を見ていた。
何してるんだあいつ?
翔太は観察するようにエミリを見ていた。エミリは依然として森の方に目を向けており翔太には全く気づいてない様子だった。いつまでたっても埒が明かないので翔太は声をかけることにした。


「おはようエミリ。早いんだな」

「あ、ショウタ。おはよう、私はいつもこんな時間に起きてるからよ。あなたこそ早いわね?」

「早くに目覚めたからさ~てか何してたんだ?」

「ああ、森には朝早くから活動してる魔物もいるからこちらに来てないか私の『千里眼』のスキルで確認してたの」

「へぇ~狙撃手って便利なこともあるんだな」

「盗賊の『潜伏』のスキルを使ったらもう楽勝。予測しない方向からの矢の完成ってわけよ」

「重複して覚えられるのか?」

「ええ、一応ね。適応するならの話だけど」

「そうか、そんなこともあるのか」

「あなたも覚えみたら?実際私はかなり便利になったわ」

「今度やってみるかな、んじゃ俺も起きたら暇だったし見張り手伝うわ」

「....いいの?」

「ああ、暇だしな。エミリ一人ってのもなんか」

「なによ」

「心配だけど使えないって意味じゃなくてだな」

「あっそう、ならあっち見張ってて、ほら早く行った行った」


翔太は指さされた方向に走って行く。そしてその間何事もなく全員が起き村を出発することとなった。そのまま1日何も起こることなく、夜に王都へと着いた。というわけでクエストをクリアした翔太達の元に一人の王国兵士が駆け寄ってきた。


「あなたがショウタ様ですね、明日王城の門へお越しください。王がお会いになりたいと申しておりますので。それに並行して宿も取っております。それでは私はこれにて失礼致しますね」


宿の場所が書かれた紙切れを渡すと兵士は王城へと戻って行った。
何だったんだ......
翔太は少し戸惑いながら宿の場所が書かれた紙切れを見ながら宿に向かおうとしていた。だがエレナは王城を見たまま微動だにしていなかった。


「......?エレナ、行くぞ~」

「え?あ、ああ、うん。ごめんね、行こ!」


エレナはやっと気づいたように装いながら先へと行く。少しして宿に着いた翔太たちは風呂、食事を済ましあとは各自が寝るだけでいいというところだった。しかしその時、翔太の部屋のドアが鳴った。


「ショウタ、入っていい?」


その声の主はエレナ、もう何度も聞きなれた声からすぐに分かっていた。


「え?ど、どうぞ~」


扉が開き、エレナが中に入ってくる。なぜかパジャマ姿だったのだが、十分に可愛かった。


「ねぇ、ショウタ。ショウタは私が今の私じゃなくてもちゃんと接してくれる?」

「何を言い出すかと思えば。お前はお前だろ?お前がどんなやつでも、どんな身分だろうがお前はお前だ。そんな身分の違いで人を下に見たりなんかしないさ。そういや、なんか浮かない顔してたけどどうしたんだ?」

「え?い、いやぁ、何でもない何でもない。気にしないで」

「そうか?なんかあるなら言ってくれよ?」

「うん、分かってる。ごめんね、もう眠いのに。それじゃあね」


エレナはそのまま扉に手をかけ外へ出る。だが扉を開けて入口で振り返り


「ごめんね、ショウタ。私、色々と嘘ついてた。明日はっきりさせるから」


そう、笑顔でいい扉が閉まった。
嘘?どういうことだ?
翔太はエレナが去った後、ベッドに寝転んで考えていた。
明日、はっきりさせる?全くわかんねぇ
翔太はエレナの発言の意図を全く掴めないでいた。

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