不幸な男は異世界で最強になったようです
09#パーティー結成、王都への準備
目が覚めた。そこは見覚えのない場所。どこかの一室だろう。とても広いベットに右には光を取り入れたり換気をするための窓、左には机がありその前に剣が立て掛けてある。
「ここは........?」
翔太は見覚えのない場所に少々焦る。だがフカフカのベットにとても柔らかい枕、まるで高級ホテルに泊まっているような感覚だった。
翔太が少しあたりを観察しているとドアの方からノック音が聞こえる。
「失礼しますショウタ様、今日もまだお眠りに.....!ショウタ様!起きていらっしゃいますね!?」
驚きを隠さずに叫んだのはタキシードに身を包んだ老人。いわゆる執事と言うやつだろう。
「えっと、誰?」
「.....申し遅れました。私、王直属の執事をしておりますエルス・レオナルドと申します」
エルスは一礼し身分を述べる
「ショウタ様、お食事食べられますでしょうか、食べられるのであればこの下にあります食堂にお越しくださいませ」
エルスはそう述べ退室しようとする。
「ま、待ってください!」
翔太はエルスを呼び止める。
「何でございましょうか?」
「俺はなんでここに?」
翔太はエルスから事のあらましをすべて聞く。
「なるほど、それでここにいるわけですか。ありがとうございます」
「では私めは失礼しますね」
そういいエルスは今度こそ退出する。
んじゃ、俺も行くかな....
ベットから降り、食堂へと向かう。
食堂にはエレナとその右に知らない少女が座っていた。
「あら?ショウタ!?体はもう平気!?」
「あぁなんかすごく長く寝てたみたいだな俺」
「そうよ!もう何日も!心配したのよ!突然倒れるんだから!!」
「悪い悪い、でももう元気だし.....な?」
「全く、無茶しないでよね」
「分かったって。それでその子は?」
「え?あぁこの子はネルソンさんの娘さんの.....」
「エミリ・ネルソンと言います。ショウタさん、父から事は聞きました。よろしくお願いします」
その少女は丁寧にスカートの端を掴んでお辞儀する。身長はエレナより数cmしたくらいだろうか、透き通った青色のセミロングの髪型がとても目立っていた。
「よろしくな、エミリ。それと俺には敬語はいらないよ、普通に親しくしてくれたらいい」
「それでは、よろしくね、ショウタ」
エミリは翔太に満々の笑みで笑いかけた。
やばい、これがギャップ萌えなんだろうか。めちゃ可愛いぞこの子.....
ショウタが悶絶してる間に兵士が食堂へと入ってくる。
「トドロキ ショウタ様が目覚められたと聞きましたので迎えに上がりました。王がお呼びです、こちらへ」
「え~まだ俺朝飯食ってないのにー!」
「後ででいいでしょ!ほら、行くわよ!」
翔太は兵士とエレナに半ば強引に王の間へと連れていかれた。
「おお!ショウタ君ではないか!此度の活躍は見事だった!褒美を取らすぞ!」
「いやいや、それ程でもないですよ。わざわざ城の一室を貸してくださったり執事まで付けてくださったり、色々と迷惑をかけました」
翔太はそういいジレンに一礼する。
「いやはや、強いのに謙虚と来た。まさに完璧だねぇ!私は君をより気に入った!今回呼んだのは君に提案があるんだ」
「提案......ですか?」
翔太は不思議そうに首輪を傾げる。
「そう、提案だ。先日のカミュの件で王国騎士団幹部席が一つ目空いてしまってな、騎士団には幹部に値する実力者があまりいなくてな。そこでだ、君に幹部席に入ってもらいたいのだがどうかね?」
「お断りします」
翔太は迷うことなく速攻で答えた。
「ふむ、どうしてか理由を聞かせてくれるかね?」
「まず、第一として俺は冒険者としてこの街に来ました。自由に、仲間と絆を深めあって楽しく暮らすために、そもそも目的が違いますからね。それに俺は誰かの下で働くということが嫌いですから。自由にやってこその冒険者ですし」
「ふむ、では君は国に忠義を尽くす気は無いと?」
「王国騎士団に入ることがどれだけの名誉なのか知りませんが俺には仲間がいます。その
仲間を見捨てるわけにはいきません。国に忠義を尽くすと言われましてもピンと来ないですし、先述述べたように誰かのしたで働くという事は嫌いですから」
「ふむ、残念だ。君のような実力の持ち主なら騎士団長も夢ではないだろうに」
「そんなのは俺より上の名の知れた冒険者の方がよっぽど可能性があると思いますよ」
「まぁ、この話は終わりにしよう。.....ん、何だと?そうか、分かった。すぐに行く。」
話している途中に大臣がジレンに耳打ちをする。
「すまないが君たち少し来てくれないかね?」
ショウタ達は席を外したジレンの後ろについて行く。しばらくすると一つの扉の前に案内された。
「入ってくれたまえ」
翔太たちは扉を開ける。最初に目に飛び込んできた光景に驚愕した。そこにはベッドがありベッドの上で一人の女性が苦しそうにしながら眠っていた。
「あぁ、エリー大丈夫かい?」
ジレンは眠っている女性の手を握りながら話しかける。
「あの、これはどういうことなんですか?一体何があったんです?」
この言葉を言ったのは翔太ではなくエレナだった。後ろにいたエミリは口を覆い驚いた顔をして固まっていた。
「実は妻は二週間前から原因不明の病に侵されているんだ。今回君を呼んだのはこれが本題でね、医者が言うにはこのままだと命の危険もあるという。宮廷の僧侶に回復魔法使ってもらったのだが最上級の回復魔法でも直せなかった。我が先祖に無属性魔法の、何でも状態異常をかかる前の状態に戻すという魔法を使えた王がいたのだが、残念ながら私は王族に生まれただけのただの人間なのだよ。だから今その無属性魔法を使えるものはこの世にはいない、それに無属性魔法は『個人の魔法』とまで言われる代物だ。もう手がないと思った。でも、レベル99の君ならなんとかなるんじゃないかと思ってここまで来たんだ」
何かを察したようにエレナは翔太の肩に手を置いてくる。翔太が振り返るとエレナは無言で頷いた。
「......ったく、分かったよ!やればいいんだろやれば!ジレン陛下それはどんな名前の魔法ですか?」
「確か、『回帰』という魔法だった気がする。.....まさか君使えるのか!?」
「分かりません、でも可能性はあると思います。俺の無属性のスキルパネルはめちゃくちゃ広いんで、あると思いますが......」
翔太はスキルパネルで回帰の魔法を探しながらそう言う。
「あ、あった」
「本当かね!?これで妻は助かるんだね!?」
ジレンは翔太の肩を掴み前後に揺さぶる。
「王よ、翔太殿が動けませんぞ、お放しください」
大臣が暴走する王をなんとか静止させる。
「おぉ、すまない取り乱してしまった。ショウタ君、出来るか?」
「....これでよし、っと。準備は出来ましたが回帰がその魔法なのかわからない以上治るかは分かりません。でもやってみます」
翔太は眠っているエリーに向かい手をかざす。
「『回帰』」
そう唱えるとエリーが光に包まれ表情が穏やかになっていった、そして目が開いた。見つめる先は天井。そして視線が下がっていきジレンを見つめるようになった。
「エリー、大丈夫かい?どこも痛くはないかい?」
「ええ、悪い夢から覚めたような気分です。なんかスッキリとしました」
エリーは笑ってそう答えた。
「....良かった、本当によかった......ショウタ君、本当に助かったよ。本当に君は妻の命の恩人だ。ありがとう、本当にありがとう......」
「俺も成功してよかったです。これからも末長くお幸せに。」
「それでは、褒美の内容だが.....」
ジレンは大臣に目配せをする。すると、大臣が持っていた袋を机に置く。袋からは金属と金属が擦れるような音がたくさん聞こえた。
「これを受け取ってほしい、金額1000枚と銀貨500枚が入ってる」
「金貨と銀貨?」
この世界に紙幣というものは無いのか、へぇ~
翔太が関心してる横でエレナとエミリが唖然として固まっていた。そんなエレナたちを見て翔太は頭に?を浮かべる
「なんだお前ら固まってんの?」
「だって、あなた金貨1000枚と銀貨500枚よ!?金貨は1枚1万レス、銀貨は1枚五千レスよ!?」
なるほど、ということは......1億250万円!?
「そんなに!?」
「あぁ、これだけしても足りないぐらいだ。君にはほんとに感謝している。それともうすぐ娘が王都へ遊びに行くのだ。護衛として騎士団の者と執事で戦闘能力のあるものを同行させるのだがそれだけでは心配でな、君たちに同行してほしいのだ。これは、私からのクエストとしてギルドに通しておく、どうかね?報酬はギルドに帰ったら渡してくれるように要請しておく。ところで翔太くんのパーティは何人いるんだ?」
「俺とエレナの二人で登録してますが.......」
「それは困った、クエストは余人からでないと受けれないルールになっているんだ。私は
「君たちに同行してほしいんだ。だから明日までに仲間を集めてはくれないか?」
「俺は面白そうだからいいですが、どうする?エレナ?」
「お、王都.....気が乗らないわね」
「なんだよ、何かあるのか?」
「何も無いけど.....」
「じゃあ決まりだな、んじゃあと二人か....どうするかな」
「ねぇショウタ、私忘れてない?」
「え、エミリ冒険者だったのか!?」
「一応冒険者よ、職業は狙撃手なんだけど」
「確かに俺らのとこには後衛支援がいないしな......エミリそれなら俺たちのとこに入ってくれるか?」
「逆にこの流れで断る方がどうかと思うけど.....まぁ、よろしくねショウタ」
「それでは三人目は決まりだな、それではショウタ君、明日までに仲間を余人集めてほしい、頼んだよ」
俺達はジレンのその言葉を聞いて城をあとにした。
「つってもなぁ~いねぇかな~」
とりあえずミラさんの店によるか。
しばらく歩きミラの店へ着く。扉を開けると相変わらずの賑わいで店が輝いて見えた。ちょうど三席あるカウンターの席に腰を下ろす。そうすると、ミラが翔太に気づき話しかけてくる。
「ショウタじゃないか!何日ぶりだい?とにかく久しぶりだね!なんだい、もう女を連れ回してんのかーい?やるねぇこのこのぉ~」
「お久しぶりですミラさん、あとナンパでもなんでもないですから。俺のパーティの仲間ですから」
「はっはっは冗談だよ冗談!で、飯食いに来たのかい?」
「いや、実はパーティメンバーを探していてまして、誰かいい人いないですかね?」
「そうだねぇ......」
ミラは少し考えたあと顔を上げ
「うちのルビーなんかどうだい?」
「え、ルビーちゃんですか?」
「そうさ、うちのルビーはうちのルビーは一応冒険者家業をしてないだけでカードは持ってる。だから籍は冒険者さ。それにうちは私一人でも行けるからね。ルビー!、ルビー!!」
ミラは遠くで客に接待していたルビーを呼ぶ。するとこちらに気づいたルビーが相変わらずパタパタと走ってきた。
「ミラさん何ですか?あ、こんにちわショウタさん!いらっしゃいませ!」
ルビーは翔太たちに一礼してミラへと向き直る
「ルビー、いきなりだけど重要な話だ。しっかりと聞きな 」
ミラは真剣そのものの表情でルビーを見据える。一方のルビーはというとミラのめったに見ない真剣な表情に少し気圧されながらもミラをしっかりと見ていた。
「あんたは元々冒険者だ、だからいつまでもこの酒場に置いておくのももったいない。あんたには冒険が必要だ。だからショウタと一緒に冒険してみてはどうだい?」
予想もしなかったミラの発言にルビーは驚いていた。そして同時に悩んでいた。だがそんなルビーの表情を悟ったのか、はたまた読み取ったのかミラは
「大丈夫、店の事は十分私で元から足りてる。アンタみたいなまだ世間を知らない子には冒険してもらいたいってのが私の願いさ。外の世界を知ってきな、ルビー」
ミラはルビーの頭にポンポンと手を置いて撫でる。ルビーは何かが吹っ切れたのか覚悟を灯した目でミラを見ていた。
「ミラさん、私迷ってたんです。ここでずっと働いて冒険者家業を捨てていいのかって、でもその方がミラさんは助かるからって思ってずっと黙ってました。言い出せなかったんです外の世界に興味があるから今日でやめたいなんて。自分から頼み込んでやっと働かせてもらえるようになって、常連さんとも仲良くなって、今が楽しいって思えてました。だからこそ言い出せませんでした。まさかミラさんからその言葉が出るなんて思いませんでしたし。でも私決心しました。ミラさん、お世話になりました。外の世界を見てまた戻ってきますね!」
そういいルビーは厨房の奥に入っていった。
ミラはその姿を後ろ目で見てまたショウタに向き直る。
「ショウタ、ルビーを頼んだよ。あの子は私にとって子供みたいなもんだ。その子供みたいなもんを預けるんだから、責任は取ってもらうよ」
「だ、大丈夫ですよ、そんなことにはしませんから」
ミラは翔太の発言を聞くなりニカッと笑い
「まぁ、ショウタなら大丈夫だね!重ねていうけどあの子を頼んだよ」
真剣な表情で翔太を見つめる。翔太も真剣な表情で見つめ返す。そうこうしてるうちにルビーが厨房の奥から出てきた。先程までのメイド風な姿とは似ても似つかず完全に冒険者という姿に翔太は驚いていた。なんでかと言うとその姿を見たことがないからである。
茶色のマントに紺色の服の上から胸当て、スカートは赤色でしっかりとマントと色合いがマッチしていた。はっきり言って冒険者なのにものすごくオシャレな格好だと言える。
「ルビー、そんな格好するんだ」
翔太の間の抜けた声を聞いたルビーが
「これが私の正装ですっ!」
と胸を張りそういう。必然と胸に目がいってしまうのは男の性だが、鎧で見えなかった。
それを悟られないようにすぐに目をそらし次の話題へと持ち込む。
「改めて、ルビー、俺たちのパーティに入ってもらえるか?」
「もちろんです!皆さん、よろしくお願いします!」
そして、振り返りミラに頭を下げ
「ミラさん!今まで本当にお世話になりました!いってきます!」
元気にそういいギルドにパーティ登録へ向かう翔太たちのあとに続く。ミラはまるで子の旅立ちを見るかのような目で
「いってらっしゃい、ルビー。元気にやりなよ」
つぶやくような声でそういった。
翔太は後ろについてくるルビーを見ながらエレナ、エミリの顔を順々に見て
俺たちの冒険がここから始まる、楽しみだ!
そう思い再び歩き出した。
※大島先生の次回作にご期待くださいとか言うのはありません。次回も続きます。
「ここは........?」
翔太は見覚えのない場所に少々焦る。だがフカフカのベットにとても柔らかい枕、まるで高級ホテルに泊まっているような感覚だった。
翔太が少しあたりを観察しているとドアの方からノック音が聞こえる。
「失礼しますショウタ様、今日もまだお眠りに.....!ショウタ様!起きていらっしゃいますね!?」
驚きを隠さずに叫んだのはタキシードに身を包んだ老人。いわゆる執事と言うやつだろう。
「えっと、誰?」
「.....申し遅れました。私、王直属の執事をしておりますエルス・レオナルドと申します」
エルスは一礼し身分を述べる
「ショウタ様、お食事食べられますでしょうか、食べられるのであればこの下にあります食堂にお越しくださいませ」
エルスはそう述べ退室しようとする。
「ま、待ってください!」
翔太はエルスを呼び止める。
「何でございましょうか?」
「俺はなんでここに?」
翔太はエルスから事のあらましをすべて聞く。
「なるほど、それでここにいるわけですか。ありがとうございます」
「では私めは失礼しますね」
そういいエルスは今度こそ退出する。
んじゃ、俺も行くかな....
ベットから降り、食堂へと向かう。
食堂にはエレナとその右に知らない少女が座っていた。
「あら?ショウタ!?体はもう平気!?」
「あぁなんかすごく長く寝てたみたいだな俺」
「そうよ!もう何日も!心配したのよ!突然倒れるんだから!!」
「悪い悪い、でももう元気だし.....な?」
「全く、無茶しないでよね」
「分かったって。それでその子は?」
「え?あぁこの子はネルソンさんの娘さんの.....」
「エミリ・ネルソンと言います。ショウタさん、父から事は聞きました。よろしくお願いします」
その少女は丁寧にスカートの端を掴んでお辞儀する。身長はエレナより数cmしたくらいだろうか、透き通った青色のセミロングの髪型がとても目立っていた。
「よろしくな、エミリ。それと俺には敬語はいらないよ、普通に親しくしてくれたらいい」
「それでは、よろしくね、ショウタ」
エミリは翔太に満々の笑みで笑いかけた。
やばい、これがギャップ萌えなんだろうか。めちゃ可愛いぞこの子.....
ショウタが悶絶してる間に兵士が食堂へと入ってくる。
「トドロキ ショウタ様が目覚められたと聞きましたので迎えに上がりました。王がお呼びです、こちらへ」
「え~まだ俺朝飯食ってないのにー!」
「後ででいいでしょ!ほら、行くわよ!」
翔太は兵士とエレナに半ば強引に王の間へと連れていかれた。
「おお!ショウタ君ではないか!此度の活躍は見事だった!褒美を取らすぞ!」
「いやいや、それ程でもないですよ。わざわざ城の一室を貸してくださったり執事まで付けてくださったり、色々と迷惑をかけました」
翔太はそういいジレンに一礼する。
「いやはや、強いのに謙虚と来た。まさに完璧だねぇ!私は君をより気に入った!今回呼んだのは君に提案があるんだ」
「提案......ですか?」
翔太は不思議そうに首輪を傾げる。
「そう、提案だ。先日のカミュの件で王国騎士団幹部席が一つ目空いてしまってな、騎士団には幹部に値する実力者があまりいなくてな。そこでだ、君に幹部席に入ってもらいたいのだがどうかね?」
「お断りします」
翔太は迷うことなく速攻で答えた。
「ふむ、どうしてか理由を聞かせてくれるかね?」
「まず、第一として俺は冒険者としてこの街に来ました。自由に、仲間と絆を深めあって楽しく暮らすために、そもそも目的が違いますからね。それに俺は誰かの下で働くということが嫌いですから。自由にやってこその冒険者ですし」
「ふむ、では君は国に忠義を尽くす気は無いと?」
「王国騎士団に入ることがどれだけの名誉なのか知りませんが俺には仲間がいます。その
仲間を見捨てるわけにはいきません。国に忠義を尽くすと言われましてもピンと来ないですし、先述述べたように誰かのしたで働くという事は嫌いですから」
「ふむ、残念だ。君のような実力の持ち主なら騎士団長も夢ではないだろうに」
「そんなのは俺より上の名の知れた冒険者の方がよっぽど可能性があると思いますよ」
「まぁ、この話は終わりにしよう。.....ん、何だと?そうか、分かった。すぐに行く。」
話している途中に大臣がジレンに耳打ちをする。
「すまないが君たち少し来てくれないかね?」
ショウタ達は席を外したジレンの後ろについて行く。しばらくすると一つの扉の前に案内された。
「入ってくれたまえ」
翔太たちは扉を開ける。最初に目に飛び込んできた光景に驚愕した。そこにはベッドがありベッドの上で一人の女性が苦しそうにしながら眠っていた。
「あぁ、エリー大丈夫かい?」
ジレンは眠っている女性の手を握りながら話しかける。
「あの、これはどういうことなんですか?一体何があったんです?」
この言葉を言ったのは翔太ではなくエレナだった。後ろにいたエミリは口を覆い驚いた顔をして固まっていた。
「実は妻は二週間前から原因不明の病に侵されているんだ。今回君を呼んだのはこれが本題でね、医者が言うにはこのままだと命の危険もあるという。宮廷の僧侶に回復魔法使ってもらったのだが最上級の回復魔法でも直せなかった。我が先祖に無属性魔法の、何でも状態異常をかかる前の状態に戻すという魔法を使えた王がいたのだが、残念ながら私は王族に生まれただけのただの人間なのだよ。だから今その無属性魔法を使えるものはこの世にはいない、それに無属性魔法は『個人の魔法』とまで言われる代物だ。もう手がないと思った。でも、レベル99の君ならなんとかなるんじゃないかと思ってここまで来たんだ」
何かを察したようにエレナは翔太の肩に手を置いてくる。翔太が振り返るとエレナは無言で頷いた。
「......ったく、分かったよ!やればいいんだろやれば!ジレン陛下それはどんな名前の魔法ですか?」
「確か、『回帰』という魔法だった気がする。.....まさか君使えるのか!?」
「分かりません、でも可能性はあると思います。俺の無属性のスキルパネルはめちゃくちゃ広いんで、あると思いますが......」
翔太はスキルパネルで回帰の魔法を探しながらそう言う。
「あ、あった」
「本当かね!?これで妻は助かるんだね!?」
ジレンは翔太の肩を掴み前後に揺さぶる。
「王よ、翔太殿が動けませんぞ、お放しください」
大臣が暴走する王をなんとか静止させる。
「おぉ、すまない取り乱してしまった。ショウタ君、出来るか?」
「....これでよし、っと。準備は出来ましたが回帰がその魔法なのかわからない以上治るかは分かりません。でもやってみます」
翔太は眠っているエリーに向かい手をかざす。
「『回帰』」
そう唱えるとエリーが光に包まれ表情が穏やかになっていった、そして目が開いた。見つめる先は天井。そして視線が下がっていきジレンを見つめるようになった。
「エリー、大丈夫かい?どこも痛くはないかい?」
「ええ、悪い夢から覚めたような気分です。なんかスッキリとしました」
エリーは笑ってそう答えた。
「....良かった、本当によかった......ショウタ君、本当に助かったよ。本当に君は妻の命の恩人だ。ありがとう、本当にありがとう......」
「俺も成功してよかったです。これからも末長くお幸せに。」
「それでは、褒美の内容だが.....」
ジレンは大臣に目配せをする。すると、大臣が持っていた袋を机に置く。袋からは金属と金属が擦れるような音がたくさん聞こえた。
「これを受け取ってほしい、金額1000枚と銀貨500枚が入ってる」
「金貨と銀貨?」
この世界に紙幣というものは無いのか、へぇ~
翔太が関心してる横でエレナとエミリが唖然として固まっていた。そんなエレナたちを見て翔太は頭に?を浮かべる
「なんだお前ら固まってんの?」
「だって、あなた金貨1000枚と銀貨500枚よ!?金貨は1枚1万レス、銀貨は1枚五千レスよ!?」
なるほど、ということは......1億250万円!?
「そんなに!?」
「あぁ、これだけしても足りないぐらいだ。君にはほんとに感謝している。それともうすぐ娘が王都へ遊びに行くのだ。護衛として騎士団の者と執事で戦闘能力のあるものを同行させるのだがそれだけでは心配でな、君たちに同行してほしいのだ。これは、私からのクエストとしてギルドに通しておく、どうかね?報酬はギルドに帰ったら渡してくれるように要請しておく。ところで翔太くんのパーティは何人いるんだ?」
「俺とエレナの二人で登録してますが.......」
「それは困った、クエストは余人からでないと受けれないルールになっているんだ。私は
「君たちに同行してほしいんだ。だから明日までに仲間を集めてはくれないか?」
「俺は面白そうだからいいですが、どうする?エレナ?」
「お、王都.....気が乗らないわね」
「なんだよ、何かあるのか?」
「何も無いけど.....」
「じゃあ決まりだな、んじゃあと二人か....どうするかな」
「ねぇショウタ、私忘れてない?」
「え、エミリ冒険者だったのか!?」
「一応冒険者よ、職業は狙撃手なんだけど」
「確かに俺らのとこには後衛支援がいないしな......エミリそれなら俺たちのとこに入ってくれるか?」
「逆にこの流れで断る方がどうかと思うけど.....まぁ、よろしくねショウタ」
「それでは三人目は決まりだな、それではショウタ君、明日までに仲間を余人集めてほしい、頼んだよ」
俺達はジレンのその言葉を聞いて城をあとにした。
「つってもなぁ~いねぇかな~」
とりあえずミラさんの店によるか。
しばらく歩きミラの店へ着く。扉を開けると相変わらずの賑わいで店が輝いて見えた。ちょうど三席あるカウンターの席に腰を下ろす。そうすると、ミラが翔太に気づき話しかけてくる。
「ショウタじゃないか!何日ぶりだい?とにかく久しぶりだね!なんだい、もう女を連れ回してんのかーい?やるねぇこのこのぉ~」
「お久しぶりですミラさん、あとナンパでもなんでもないですから。俺のパーティの仲間ですから」
「はっはっは冗談だよ冗談!で、飯食いに来たのかい?」
「いや、実はパーティメンバーを探していてまして、誰かいい人いないですかね?」
「そうだねぇ......」
ミラは少し考えたあと顔を上げ
「うちのルビーなんかどうだい?」
「え、ルビーちゃんですか?」
「そうさ、うちのルビーはうちのルビーは一応冒険者家業をしてないだけでカードは持ってる。だから籍は冒険者さ。それにうちは私一人でも行けるからね。ルビー!、ルビー!!」
ミラは遠くで客に接待していたルビーを呼ぶ。するとこちらに気づいたルビーが相変わらずパタパタと走ってきた。
「ミラさん何ですか?あ、こんにちわショウタさん!いらっしゃいませ!」
ルビーは翔太たちに一礼してミラへと向き直る
「ルビー、いきなりだけど重要な話だ。しっかりと聞きな 」
ミラは真剣そのものの表情でルビーを見据える。一方のルビーはというとミラのめったに見ない真剣な表情に少し気圧されながらもミラをしっかりと見ていた。
「あんたは元々冒険者だ、だからいつまでもこの酒場に置いておくのももったいない。あんたには冒険が必要だ。だからショウタと一緒に冒険してみてはどうだい?」
予想もしなかったミラの発言にルビーは驚いていた。そして同時に悩んでいた。だがそんなルビーの表情を悟ったのか、はたまた読み取ったのかミラは
「大丈夫、店の事は十分私で元から足りてる。アンタみたいなまだ世間を知らない子には冒険してもらいたいってのが私の願いさ。外の世界を知ってきな、ルビー」
ミラはルビーの頭にポンポンと手を置いて撫でる。ルビーは何かが吹っ切れたのか覚悟を灯した目でミラを見ていた。
「ミラさん、私迷ってたんです。ここでずっと働いて冒険者家業を捨てていいのかって、でもその方がミラさんは助かるからって思ってずっと黙ってました。言い出せなかったんです外の世界に興味があるから今日でやめたいなんて。自分から頼み込んでやっと働かせてもらえるようになって、常連さんとも仲良くなって、今が楽しいって思えてました。だからこそ言い出せませんでした。まさかミラさんからその言葉が出るなんて思いませんでしたし。でも私決心しました。ミラさん、お世話になりました。外の世界を見てまた戻ってきますね!」
そういいルビーは厨房の奥に入っていった。
ミラはその姿を後ろ目で見てまたショウタに向き直る。
「ショウタ、ルビーを頼んだよ。あの子は私にとって子供みたいなもんだ。その子供みたいなもんを預けるんだから、責任は取ってもらうよ」
「だ、大丈夫ですよ、そんなことにはしませんから」
ミラは翔太の発言を聞くなりニカッと笑い
「まぁ、ショウタなら大丈夫だね!重ねていうけどあの子を頼んだよ」
真剣な表情で翔太を見つめる。翔太も真剣な表情で見つめ返す。そうこうしてるうちにルビーが厨房の奥から出てきた。先程までのメイド風な姿とは似ても似つかず完全に冒険者という姿に翔太は驚いていた。なんでかと言うとその姿を見たことがないからである。
茶色のマントに紺色の服の上から胸当て、スカートは赤色でしっかりとマントと色合いがマッチしていた。はっきり言って冒険者なのにものすごくオシャレな格好だと言える。
「ルビー、そんな格好するんだ」
翔太の間の抜けた声を聞いたルビーが
「これが私の正装ですっ!」
と胸を張りそういう。必然と胸に目がいってしまうのは男の性だが、鎧で見えなかった。
それを悟られないようにすぐに目をそらし次の話題へと持ち込む。
「改めて、ルビー、俺たちのパーティに入ってもらえるか?」
「もちろんです!皆さん、よろしくお願いします!」
そして、振り返りミラに頭を下げ
「ミラさん!今まで本当にお世話になりました!いってきます!」
元気にそういいギルドにパーティ登録へ向かう翔太たちのあとに続く。ミラはまるで子の旅立ちを見るかのような目で
「いってらっしゃい、ルビー。元気にやりなよ」
つぶやくような声でそういった。
翔太は後ろについてくるルビーを見ながらエレナ、エミリの顔を順々に見て
俺たちの冒険がここから始まる、楽しみだ!
そう思い再び歩き出した。
※大島先生の次回作にご期待くださいとか言うのはありません。次回も続きます。
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コメント
諸方 壮
貨幣× 紙幣○
†翔龍†
余人ではなく四人ではないのか?