異世界転移者バトルロワイヤル
2
「動くな」
銃を突きつけられたことは、この世界に飛ばされてから何度かあった。
今俺の背中に当たる硬いものはまさしくそれだろう。
「…金目の物は持ってない」
「喋るな。手を頭の後ろに組んでゆっくり膝をつけ」
ここで抵抗しても撃ち殺されるだけなのは目に見えているので大人しく従った。経験則に過ぎないが、こういう時はちゃんと言う通りにすれば殺されることはない。
組んだ手と後頭部をネバネバした流体で接着されるのは経験したことがなかったので予測できなかったが。
「これ風呂とか入れば取れるんだろうな?」
「黙れ」
声が加工されていて性別がわからないのでとりあえず男としておくが、その男は俺の髪を掴んでぐいと引っ張り、俺の顔を確認した。
西洋の甲冑とガスマスクを融合させたような変わったマスクを被り、白黒の幾何学模様が全体に描いてあるレインコートを着ていて、マスクの額には志願者のマークが浮き出ていた。
「俺は志願者じゃない」
男は俺の発言に苛立っているようだった。それがマスク越しに伝わってくるほど「こいつは何を言っているんだ」という反応をしていた。
「命乞いにしては下手すぎるぞ」
「本当だ!俺は転移者だが、戦おうなんて微塵も思ってない」
「あの世で自分の顔をよく見てこい」
「待て!待ってくれ!ま、待ってください!マークがあるんですか?俺に?」
男は小さく溜め息をつきながら俺の髪から手を離し、銃を握り直して人差し指を引き金に当てた。
「じゃあ!棄権する!俺は棄権する!戦う意思はない!俺の負けだ!」
男は急に銃口を遠ざけた。そして、仕事に渋々戻るサラリーマンのような覇気の無い足取りで去っていく。
「殺す気が失せた。じゃあな。そのマーク消しとけよ」
一人残された俺は、後頭部にへばりついた両手をどう解放するかを考え始めた。
銃を突きつけられたことは、この世界に飛ばされてから何度かあった。
今俺の背中に当たる硬いものはまさしくそれだろう。
「…金目の物は持ってない」
「喋るな。手を頭の後ろに組んでゆっくり膝をつけ」
ここで抵抗しても撃ち殺されるだけなのは目に見えているので大人しく従った。経験則に過ぎないが、こういう時はちゃんと言う通りにすれば殺されることはない。
組んだ手と後頭部をネバネバした流体で接着されるのは経験したことがなかったので予測できなかったが。
「これ風呂とか入れば取れるんだろうな?」
「黙れ」
声が加工されていて性別がわからないのでとりあえず男としておくが、その男は俺の髪を掴んでぐいと引っ張り、俺の顔を確認した。
西洋の甲冑とガスマスクを融合させたような変わったマスクを被り、白黒の幾何学模様が全体に描いてあるレインコートを着ていて、マスクの額には志願者のマークが浮き出ていた。
「俺は志願者じゃない」
男は俺の発言に苛立っているようだった。それがマスク越しに伝わってくるほど「こいつは何を言っているんだ」という反応をしていた。
「命乞いにしては下手すぎるぞ」
「本当だ!俺は転移者だが、戦おうなんて微塵も思ってない」
「あの世で自分の顔をよく見てこい」
「待て!待ってくれ!ま、待ってください!マークがあるんですか?俺に?」
男は小さく溜め息をつきながら俺の髪から手を離し、銃を握り直して人差し指を引き金に当てた。
「じゃあ!棄権する!俺は棄権する!戦う意思はない!俺の負けだ!」
男は急に銃口を遠ざけた。そして、仕事に渋々戻るサラリーマンのような覇気の無い足取りで去っていく。
「殺す気が失せた。じゃあな。そのマーク消しとけよ」
一人残された俺は、後頭部にへばりついた両手をどう解放するかを考え始めた。
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