元軍師の異世界侵略

馬原

天才軍師の最期の戦い

「申し上げます、敵の軍の一部が行方不明の情報が入っています。」

   敵の一部が、居なくなっただと何をしているんだ我が軍は。内心、考えていると別の伝令がやって来る。

「軍師殿、正面が押されておりギル将軍から援軍願いが来ております」

「わかった。兵500を彼の元に」

   私は伝令役の兵士にそう伝える。
  
   ギル将軍でも押さえきれぬのか。しかし、そろそろ別働隊が敵の本陣を狙える位置に着くはず。別働隊が敵本陣を攻撃すれば少なからず正面の敵は減り、あわよくば敵大将も倒せるかもしれん。
    この戦い何とか、なるかもしれん。後の状況を思案するため机の上の地図を見た。

   現在、私の属する帝国軍と敵の同盟軍とで戦争を行なっている。平野を主戦場とし帝国軍 3000、同盟軍 5000の兵が布陣した。昨日から戦いが始まったが、正直なところ戦況はあまり良くない。 
   なぜか?と言うと全ての作戦が裏目に出ていたからである。敵の側面を狙おうとすると逆に別働隊の側面を狙はれ、伏兵を置くとそこを回避され、私の作戦がことごとく失敗しているのである。

    味方の中に、内通者が居るからでは?と言って来たものがいたがそんなのわかっている。わかっているが、誰なのか対処できず。私はだだいたずらに兵を損耗させている。
    当然だが、撤退という二文字は私の中にはない。ここで逃げてしまうともう、国を守る兵力も有利な地形も無くなってしまうからである。
    どうする?どうすればいいんだー!と内心で叫ぶ。

   慌ただしく伝令が報告にやって来た。

「申し上げます!別働隊が本陣の攻撃に成功した模様です。」

   私は目の前の丘にある相手の本陣を見る、確かに火の手が上がっている。これは、好機だ。ここで押せば相手を崩せる。
   また、別の伝令がやって来る。

「軍師殿、ギル将軍からの伝言です。敵が後退を始めたので全軍攻撃の許可を。ということです。」

   いくら敵が後退を、始めたからとはいえ全軍はやりすぎては?と考えたが、背に腹は抱えられない。

「よし、わかった。全軍をギル将軍に預ける敵を打ち果たしてくれ。」

「はっ!承りました。」
 
   はぁ、何とか今回も勝てそうだ。戦況が有利に傾き、肩に重くのしかかっていたプレシャーがなくなるような感じがした。
   今回は危なかった。結局予備兵まで全部使ってしまった。もう、本陣を守る兵は数人しかいない。ふと、敵の一部が居なくなったことを思い出す。
   
    まさか、と思い私は地図を見た。
    敵の居なくなったという、右翼側は森があり、戦略的にも適所とは思ってなくあまり兵を置いてはなかった。また、右翼は攻める気配も無かったので、こちらの兵数は100人程度しか配置して居なかった。
    
    そして、今度は地図の真ん中を見ると敵の狙いがわかってしまった。我が本陣の周りに兵が居ないのである。当たり前である、私が全軍出撃を命じたからである。そう、全部相手に踊らされて居たからである。

    だが、敵の本陣を落とせば、まだ望みがある。俺を絶望へと落とす報告がやって来る。

「申し上げます!敵の本陣が……敵の本陣がもぬけの殻だったという報告です。」

「申し上げます!別働隊が敵伏兵に囲まれた模様です!」

「軍師殿、御命令を」

「軍師殿、何か御命令を」

    私は負けたのか、いやまだ私は生きているまだ負けてはおらぬ。
    だが、現実はとても非情だった。左側のから人間の声、足音が聞こえてくる。ざっと500ぐらいか。それはどんどん近づいてくる。

「敵の軍師を八つ裂きにしろ、絶対に生かしておくな!」

「おおー!悪魔の軍師を殺せー!」

    雄叫びを上げながら近づいてくる。

「軍師殿、お逃げを」

    もう、遅い。内心、諦めるしか無かった。
    気がつくと私の周りの兵は死んで居た。

「お前が帝国の軍師か?」

「いかにも、そうだが」

「お前は、家族、同僚そして我が同盟国の仇だ。簡単に死ねると思うなよ。」

   そうだ!そうだ!八つ裂きにしろー!周りの兵士が叫んでいる。
   ある、男が私の腕を切断する。私は自分のからだからだいなくなる腕を冷静に見ていた。何が起こったかわからなかった。だが、次の瞬間焼けるような痛みが私を襲う。

「痛い、痛い、痛い!腕が。腕がーー!痛い、痛いよ。お願いします。助けてください。命だけは。」
    
   涙と鼻水で顔はめちゃくちゃになり。糞尿を漏らしていた。人類史上もっとも惨めな姿であった。

「こんなやつに、同盟国は苦しみられていたのか。」

   周りからは、嘲笑、罵声を浴びせられた。
   悔しい、悔しい、悔しい!心の中で何度も繰り返した。それでも、命乞いをした。
   しかし、彼らはそれを受け入れることは無かった。
   
   腕の次はもう片方の腕、次は両足とだるま人間のような感じにしていった。
   私はまだ息があった。

「た…す…けてくだ…さい。うぅ、痛い、痛い。」

「天才軍師もあっけなかったな。眠れ天才…。」

   将軍のような奴がそんな事を言いながら、私の首に剣を振り下ろした。その瞬間私の意識は無くなった。ド、と地面に私の首が落ちた。


長くなってすみません。次回からはもう少し短くします。更新は暇な時に行うので、不定期です。
  

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