片思い

日向葵

37話 困惑

田辺に続いて園崎さんが口を開いた。
「翔太、私、翔太のことがずっと前から好きだったの。」
私はさらに固まった。翔太先輩が見れない。いや、見たくない。
田辺も田辺。なんでここで言うの?
翔太先輩の目の前で。
私の頭の中は真っ白になり、言われていることが自分のことと思えなかった。
私はついに下を向いてしまった。どうしよう。
なんて言えばいいの?
私はここからすぐにでも立ち去りたかった。
でも足が動かない。
田辺が私のことが好きで、園崎さんは翔太先輩が好き。
で、私はなんて答えたらいいの?
「ちょっと待てよ。」
口を開いたのは翔太先輩だった。
「いきなりそんなこと言われても驚くんだけど。」
突然の告白に驚く翔太先輩。
私もなんて言えばいいのか分からず言葉も出ない。
ハッと気づくと私は顔を上げて、「まだ言ってるの、田辺!またお茶られてるだけでしょ!」
そうだわ!きっと、また私を利用して自分に注目を浴びたいだけ。危ない、危ない!本気にするとこだったわ!
でも、田辺の方は真剣な顔だった。
「嘘じゃない。本当なんだ。」
「信じろっての?」
「うん。」
マジだった田辺とは裏腹に疑う私。
「でも、いつものからかいたいだけなんでしょ⁈」
「だから違うんだってば!マジで好きなの!もう!何度も言わすなよ!」
「ほら、嘘じゃん!怒ってさ!」
「お前が信じないからだろ!」
「疑われるようなことしてきたからでしょ!」
私たちの言い合いは止まらなかった…。




一方、翔太先輩としたら冷静なこと。
「どういうことなんだ?」
「だから、私は翔太のことが好きなの。」
「うん、それは分かった。でも、何でここで言うんだ?他の場所でもよかったのに。」
「ごめんね。でも、ここで言いたかったの。」
「何のために?てか、好きとか言われてもなー。」
やや赤面でいう翔太先輩。告白慣れしてなかったらしい。
「分かった!じゃ!こうしよう。今週の土曜日どこか行こう。」
「え!やった!翔太とデートってことね!」
目を輝かせる園崎さん。本当に嬉しそう。
「私たち恋人同士ってこと?」
「いや、そうじゃなくて…」
「そういうことじゃん!」
「まあ、そうなんだけど、そういう意味で誘ったんじゃなくて…。」
「どういう意味?」
「まあ、いっぺん2人でどっか行ってみて
…」
翔太先輩を遮るように園崎さんが言い張る。
「だから、デートでしょ?それって。」
「だから、そうじゃなくて…」
読者の方、翔太先輩が何が言いたいのかお分かりだろうか?
つまり、一回デートして様子を見させて欲しいと言いたいのだが、やや、冷静さをなくしている翔太先輩ゆえなかなか言いたいことが言えない。その理由は分からなくもない。
一人冷静さをなくしてデートに誘われたことで舞い上がっている人間がいるからだ。
結論、翔太先輩と園崎さんは土曜日デートに行って様子を見て考えるということに。



また戻って私と田辺は、まだ言い合いをしていた。
「とにかく、信じられないわ!田辺が私のことが好きなんて!」
「信じられないかもしれないけど、これが真実なんだよ!」
もう訳わかんない!何故田辺が?
頭を抱える私とわかって欲しい田辺。
「じゃあ、何で今まであんなこと言ってきたりしたのさ!」
「あれは成り行きでやるしかなかったんだよ!」
「どういう成り行きよ!」
「だから、あー、めんどくさい!」
「あ!はぐらかした!」
「だってしょうがないだろ。俺だってまさかなんだからさ!」
「はあ?」
「だから!まさかお前を好きになるとは思ってなかったの!でも、好きになっちゃったんだからしょうがないだろう!」
やっぱり信じられない私は、好きと言われて頭の中がぐちゃぐちゃになって泣きそうになった。
キーンコーンカーンコーン。
「とにかく、俺はお前が好きだ。それは変わりない。返事は急がないから。」
そう言って立ち去る田辺であった。
結論、私の信じられない気持ちが勝ち田辺は返事待ちということに。


                    
翔太先輩&園崎さん 土曜日デート(?)
智奈美&田辺 返事待ち

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