片思い

日向葵

9話 嘘と言う名の仮面

走ってからどれくらい経つだろうか。
どうやってここまできたんだろうか。
ここ、どこだっけ…?
泣きすぎて頭痛い。
ズキズキする…

さすがにこのまま教室に戻れない…
園崎華恋はうつむきながらトイレに向かった。
鏡を見てメイクがとれかけていることに気づく。
「うわー、ひどい顔…」
すかさず個室に入ってティッシュで取れかかっているところを拭う。
でも、上手く取れない…
「何で私ばっかり…」
ピコン。ラインが通知された音につい期待した、翔太じゃないかと…。
画面を見ると、[アイ]どこにいるのー?だった。
(なんだ…藍か…)
次々にピコンという音が聞こえる。
[愛梨]今どこ〜!?
[瀬名] 大丈夫かー?
[蒼]探してるよー!
(みんな…心配してくれて…)
私は自分がこんなに良い友達が出来たことが嬉しかった。
でも…こういう時に本当に連絡してきてほしかったのは他でもない、翔太だけ。
(…なのに何で連絡して来ないの?)
嬉しいはずなのに、何故か悲しくなった。
(みんなが私を探してる…。でも、こんな姿を見せるわけにはいかない。)
私が咄嗟に取った行動は「ごめーん(>人<;)
今、教室にいるよー笑」と嘘をつくことだった。
本当はトイレに閉じこもってたなんて言えない。心配してくれた友人たちに嘘をつくのは申し訳ないけど…。
わざと明るく見せなきゃ。弱いところを見られたくないから。
嘘ついてごめん、藍、愛梨、瀬名、蒼。
私はポケットに携帯を入れ、個室から出て鏡の前に立った。
泣いてたことがバレないようにしなきゃ。
私はメイクを直し、更なる仮面をかぶりみんなの前に現れるのだった。

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