残念異能を持った鈍感主人公はラスボス戦の前にヒロインたちから倒されそうです。

降水ゆう

第14話 「秘密と歪」

「ひとまず、この国から離れたほうがいいわね。そろそろ追っ手が来ることだろうし」

 洞窟から出て、草原一体を見渡すが、まだ追っ手の姿は見えない。

「俺たちはどこに向かえばいいんだ?」

「そうね、取りあえず隣の国に向かいましょう。さすがにあいつらも他国に踏み入ってくるほどバカじゃないでしょう」

「分かった」

 そうして俺たちは共に歩き出した。
 その道中、主にサレアさんのことについて話した。


「皆さん。一ついいですか?」

「なんだ?」

「私ってキャラ薄いと思いませんか?」

 (何を急に言い出した。まぁSってとこ以外特徴はないっちゃないか)

「そんなことはないと思うぞ」

「思ってませんね? 心の声がダダ漏れですよ。と言いたいところですが、実は皆さんに何個か秘密にしていたことがあるのでキャラを濃くするために言っておきます」

「なんだその不純な理由は...」

 (サレアさんの秘密ってなんか怖いな)

「一つ目は、実は私、心が読める魔法〈ディエガ・ネルス〉が使えます」

『えぇ!』

 フィスクさえも驚く秘密だった。

「ちょっと待てよ。ってことは、俺が今まで心の中で思ってたことを全部ばれてたってこと!?」

「まぁそうなりますね」

 サレアさんは「うふふ」と笑った。いやまじで怖すぎだろ。

「確かに今思い出したら、心の中で思ってたことを何回も当てられてる気がする」

「当てたのではなく、読んだのですよ」

 最初、ファントレッドさんって呼ぶのがめんどくさいって思ってたとき、サレアでいいって言ってきたり、ロリ神と話してたのを隠そうとしたとき、すげぇ疑われたし、サレアさんにならビンタされていいかもとか少し思ったの一瞬でばれてたし。
 この人に勝てる奴はいるのかとそう思った。勝てるとしたら心を読めても関係ないくらいの魔法をはなてるセルニーと魔法を無効化できるフィスクくらいなのではないだろうか。

「あ、あとギスクルフのあのイカツイおじさんははっきりとは分からないと言ってましたが、私は何を考えているかはっきりと分かりますよ」

 (もういいです...)

「サレアさんって本当にすごいんですね!」

 セルニーは純粋に感心している。
 (セルニーはなんていい子なんだ)

「一颯さん、それは私は悪い子だと言いたいんですか?」

「もう、勘弁してください!」

 でも、まだ一つ目と言っていたような。

「では、二つ目。私とセルニーさんは話口調が似ていますよね? だからどっちが喋っているか分かりにくいと思うんです」

「いや、声で分かるぞ?」

「いえ、分からないんですよ。ね?」

「誰に言ってるんだ?」

 サレアさんはどこか向こう側に話しかけるように言った。

「そこで、丁度良い秘密があります」

「丁度良い秘密ってなんだよ」

「実はですね、私、王国の姫でございます」

『はぁぁぁ!?』

 唐突過ぎる。あと、唐突過ぎる。そんな感じ全く無かったのにどうして突然そんなことに。

「その事の証明に一つ。ギスクルフの人達は戦争が減ってきて、街の警備などをしてるって言ってましたよね。でもあれは私を探していたんだと思います。お店の主人が異様に呼んでくるのが早かったのも近くを巡回していたからなのでしょう。なので、あのとき私はセルニーさんの後ろに隠れてずっと黙っていたのですけれど」

 確かにあのときサレアさんの声を聞かなかった。ギスクルフの人達もさすがに姫が犯人グループの中にいるとは思わず気を抜いてしまって気づかなかったのだろう。

「じゃあ何で無一文なんだ? お金はたくさん持ってたはずだろ?」

「城を抜け出すのって結構難しいんですよ? お金を持っていく暇なんて無かったんですよ。まぁと言うのは嘘で、思いつきで脱走したからというのが本当の答えですかね」

 (何やってんだこの人....)

「じゃあ、...では今度からはサレアさんではなくサレア様と呼んだ方が....呼ばせていただいた方がおよろしいのでしょうか!」

 (畏まりすぎて変な言葉遣いになってるよ、セルニー)

「いつものままでいて下さい。それで、そういう訳なのでキャラ分けがしやすいように、今度からは口調を変えて話しますのでよろしくお願いします。あと、一颯さんはそろそろ一、二歳年上だからといってさん付けはやめて下さい」

「分かったよ......サレア」

 (ヤバい、くそ恥ずかしいんですけど)

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいんですよ」

 (ヤバい、ホントに全部バレてるんですけど)

「じゃあサレア..、これからどんな口調で話すんだ?」

「そうですわね、こんな感じでいかがかしら?」

「うん、全然合わない」

「ほんとに合ってないですね」

「セルニーさんまで...分かりました。強引にこの口調に慣れさせます」

「何が分かったの?」

 サレアはもう言うことを聞かなさそうだ。

「ではこの回は私のキャラ変回ということでよろしいですわね?」

「かい?」

「いえ何でもありませんわ」

 今日のサレアはたまに変なことを言っていたような気がする。というか、新事実が多すぎて頭がついていかない。



 そうして、俺たちが雑談をしていたとき、雑とは呼べない談だったのだが、フィスクが緊張感を持った声で中断した。

「どうやら、もう詰みかもしれないわね」

「どうしたんだ急に」

 フィスクの見つめる先を見ると、身体中に包帯を巻いて、今にも倒れそうな姿勢で立っている男がいた。その姿はあまりに歪でこの世のものとは思えないほどだった。

「ハイヴ...」

 あのフィスクが震えている。一体どのような相手なのか想像もつかない。
 世の中には上には上がいるということだろうか。

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