残念異能を持った鈍感主人公はラスボス戦の前にヒロインたちから倒されそうです。

降水ゆう

第1話 「残念な異能」

ーーーここはどこだ

「たしか俺はあの子にビンタされて...」

 何でビンタされたのかはまだよく分からないが、今は状況整理が先だろう。
 街並みはまるでゲームの中のような西洋風で、そこには鎧を着ている人もいれば盗賊のような格好をしている人もいる。

「どうなってるんだ?」

 一瞬ビンタされて頭がおかしくなったのかとも思ったが、さすがにこんなにリアルには見えないだろうとすぐに却下した。
「てことはこれ、異世界に転移したのか!?」
 色々な可能性は考えたがやはりこの結論にたどり着いてしまった。

「でも俺、特殊能力も持ってないし、伝説の剣も持たされてねぇぞ。」

 これからどうすればいいのか、どこへ行けばいいのか分からずに何となく歩いていたら、いつの間にかどこかも分からない街の外に出てしまっていた。

「これは不味いんじゃないのか」

 そう思い、街へ引き返そうとしたとき、

ーーーきゃあ!

「なんだ?」

 振り返ってみると同じくらいの年頃の女の子がスライム系モンスターに襲われていた。

「くそっ」

 今すぐ助けに行こうとするが自分じゃ何も出来ないことを思い出す。

「誰かいないのか!」

 広い平原には人の姿は無く、誰かに頼ることも出来ないのだと知る。

「俺が何とかするしかないのか!」

 しかし、直接素手で攻撃して倒せるようにも思えない。
 途方に暮れていたとき、一つの可能性を思いつく。

「異世界に転移したんだ。もしかしたら魔法だって使えるようになっているかもしれない」

「そこの君、少し下がって!」

 一か八か試すしかない。俺は右手を前に出し、炎をイメージする。

「頼む!」

 その瞬間右手に光が満ちてくる。

「きた!」

 熱を感じ始める。そしてその右手にはーーーーー
 ドライヤーが握られていた。

「なんだこれ!?」

 だが今はそれどころではない。いや、正直それどころではあるのだが、熱のイメージは保ったまま全力でスイッチを全開にする。

 ブォォォ

(普通のドライヤーと変わんねー!)

「こんなんじゃ倒せねーよ!」

 そう思ったとき、スライム系モンスターは溶け出し消滅した。

「嘘ぉ」

 驚きを隠せなかったが、もしかしたらスライムは熱が苦手だったのかもしれない。

「ありがとうございます!!」

 後ろの女の子が安心したようにお礼を言ってきた。

「いやぁ、正直俺もダメかと思ったけど、何とか倒せて良かった」

「ホントに助かりました。ちゃんとお礼をしたいのですが、この後いかがですか?」

 行く宛も無かったのでついて行くことにした。

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コメント

  • 鬼怒川 ますず

    面白い、ここからどう展開するかに期待!

    4
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