ダブルバインド

黄泉 ヨミ

1

 人を殺めるのはなぜいけないのか、いかにも小論文にありそうな主題だ。
 
何を書くのかすら決まってない。この文がお前の将来に繋がるんだ!と先生は毎度の如く言う。正直将来のことなんてどうでもいい。衆院選に行くのと同じくらい意味のない事で反映される事のないものだ。政治家に国民のことを真摯に考えている奴なんて砂糖のように少ない。あ、砂糖は多いものか。混乱している。
 
話を戻すと、そうそう小論文のことだっけ。まぁなんとも思っちゃいない。教室の外からはチビ達が楽しそうに遊んでいるのがわかる。気が散る。気が散らないところで論文をかけるのかって言ったらそうでもないが。
 
そうだ、いい書き出しを考えた。「政治家なら殺してもいいだろう。」うん、俺にしては良いと思う。
 
続けられない、ついさっきまでの胸の高鳴りが嘘みたいだ。なんだったら優等生チックに書いてやるかと思う。

「常識的に考えて...」なんだよ、と書いた自分にツッコミを入れる。何が常識だ。まずこんな文を書くこと自体が非常識だ。
 
あーもう嫌だ。全て消して白紙で出してやるか。そのあとまるで俺が正しいみたいに堂々と出て行ってやるか。やめよう、ガキすぎる。はしゃいでいるあいつらの方がよっぽど大人びている。
 

「文学」の人気作品

コメント

コメントを書く