PROMINENCE

第43話 混濁






──誰かの声がする。

悲しく泣き叫ぶ声が頭に響き渡る。

『どう…して……』

意識の中に映像が流れ込む。

鮮明になると、目の前に血で染まった腕で女性を抱き締めている何かが居た。


──これは俺?


視点は誰かのまま、映像は進む。


『頼…ぞ…我が…よ…。 『記憶の炎』を……』

女性は荒い呼吸で何かを頼む。

そこで漸く気付いた、この血は彼女が流している血だ。
彼女は何かを託すと、ふらふらとしながら立ち上がる。


『残念☆ 君は此処で死ぬんだ』

『馬鹿を言え─が逃がすわけ無かろう』

『未来は変えられないなら、過去を変える。邪魔をしないでくれよ』

立ち上がった先に黒いコートの男が立ち尽くしていた。

辺りは荒れ果て、血で塗れ酷い臭いを放つ。

男の後ろには黒い渦が巻き起こり、まるでブラックホールの様に全てを吸い込む。

『君の『ヨハネの黙示録』も頂こうか──さん?』

そう告げると、男は何も無い空間から黒く輝く鎌を取り出す。
禍々しく不気味な雰囲気のその鎌は、近寄れば刈り取ると言わんばかりの威圧感を放つ。

しかし、女性はそれに臆す事は無い。

床に落ちていた刀を拾い上げ、構えを取る。

髪は朱色に染まり、後ろ姿からでも神々しく美しいのが分かる。


一瞬の間が空き、互いに得物を構えると─

女性は走り出し距離を詰め、男へと刀を振り翳す。

しかし、それを予測してか。男は余裕そうにソレを避けると、鎌を大きく振り翳し。女性の背後から背中を切り裂く。


──あぁ…あァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!


刹那、誰かの大きな絶叫と共に映像にノイズが走り。意識が飛ばされる。







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