PROMINENCE

第36話 思わぬ来客


 重い一撃がベリーの腹部へと放たれ様とした瞬間──

「た、盾とな…れ…!?」

魔術を使い鱗粉を盾にするも、それは一瞬で砕かれ呆気なくベリーの腹部へと拳は到達。
そのまま殴られた勢いでベリーは備え付けのソファを巻き込みながら、壁へと衝突してしまう。


 「酷いやられ様だわね、ハーヴェスト・ベリー」

「!?」


突如現れた声の主に、美鈴は身構える。
そこに真人と圭一が合流し、3人は顔を合わせると声のした方を警戒しつつ、辺りを見渡し状況を確認し合う。


「こっちは1人は上で倒して、もう1人は消息不明だ。
他の気配や魔力は感じられなかったから、粗方は歩夢くんが倒してくれたと思うけど」

「こっちは見ての通り、今この状況を作った張本人を倒した所だよ。
毒系統に近い魔法を使っていたね。まるで蝶の様に鱗粉を武器や盾に変えていた」

「やっかいな魔法っスね、鱗粉が魔力を帯びて盲ましにもなってるっス」

「アンタ、魔力の流れとか視えるのかい?」

「はいっス。色合いとかまで視えて、動いた痕跡?みたいなのが視えるっス」

「そりゃあ凄いね…来るよ!!」


───バリィンッ!!


突如、ホールの上の電気が割れ3人へと硝子の破片が降り注ぐ。

「くっ、右だ!!」

「美鈴さん!!」

「ぐっ?!」


3人がバラバラに飛んだ瞬間、美鈴の後ろに巨大な影が現れ殴り掛かった。


「!?  しまっ…」


猛スピードで移動する影は、圭一の後ろへと周り込み地面へと叩き付けられる。

「ごぁッ!?」

「圭一くん!!」


迫る影の勢いは止まらず、真人の後ろへと回り込み腕を振るう。


──ズガンッ!!


間一髪、死神を出現させそれをガードした真人。
しかし強烈な勢は殺し切れず、後ろへと吹き飛ばされてしまう。



「火花っ!!」


──ゴァッ!!


紅い炎が影の前で破裂し足止めとなる。


「歩夢くん?!」

「すみません、上の人達を救助したりしていたら遅れました!!」


「あらぁ、いつまのにか良い男が増えてるじゃないのぉ♡」

炎が消えて、動きが止まった事により姿が露になった人物。
その姿を目にした真人は一瞬動きが止まり、冷や汗を流した。

「ブラッド…『駒の傭兵団チェス』のブラッドか?!」

傭兵団ようへいだん…?」

「あらぁ? 私の事を知ってる感じ?  嬉しいわぁ♡」


「『駒の傭兵団』…自らをチェスの駒のポーン兵と捉え、金で雇われれば何でもするテロ集団だ」

 
穏やかじゃないその言葉に、歩夢は息を呑む。

目の前の男は、金髪で短めの髪を全てバックで固めており。鍛え抜かれた身体の引き締まりを表すかの様に、ピッチリとしたタンクトップを着込んでいた。
大きいサングラスを着けているせいで視線が読めない。

そして、その特徴的な話し方や内股を見るに…アッチ系であるのも明白。

正直、見ているだけでも精神的に辛くなってしまう。


「そして彼は元軍人…格闘センスが抜群で、接近戦だと中々勝てる人が居なかった程だ」

(今回ばかりは援軍を呼ぶしかないぞ…!!)

真人がポケットに手を入れようとした瞬間、何かが腕を掠める。

──バシュッ!!

「ぐぁっ!?」

「真人さん!!」

「イケナイわねぇ〜、援軍を呼ばれちゃ困るのよ。私は此処の制圧も含めて依頼が入ってるんだ・か・ら♡」


弾かれた手に引っ掛かってか、真人のポケットから小型の防犯ブザーの様なモノが転がり落ちる。

それを見逃さずにブラッドは右手をそちらに向けると…

──バシュッ!!

高速で指から何かを弾き出した。

パキィンッ!!!

弾かれた何かが小型の機械を貫く。
その貫かれた機械を見て、歩夢は驚愕した。小石が機械にめり込んでいたのだ。

何処にでも落ちている小石が、まるで銃弾の様に飛んで来たのか?と歩夢は考え、唾を飲み込む。


「ソレはダメよぉ♡ 面倒臭いわんちゃん達が来ちゃうからぁ〜♡」

「流石は元軍人…『緊急マニュアル』を覚えていたか」

緊急マニュアルという単語に首を傾げていると、ブラッドが口を開き説明をしてきた。

「『緊急マニュアル』…そのボタン1つで政府や軍に緊急事態だと知らせる他に、『相手が身内』だと知らせるモノよね♡  他にも有るんでしょ?『緊急招集』と『SOS』専用のボタンも♡
殆どの人はアクセサリーとかにしてカスタマイズされているけど、貴方は単純なブザータイプなのね♡」

後は─と話を続けるブラッド。

「『魔力制御装置リミッター』を寄越しなさい♡」

その言葉を聞いた瞬間、真人は驚愕する。

「リミッター…?」

「あらぁ? 貴方は知らないのね?」

「何故、軍から離れたお前が…『魔力制御装置』を知っている?!」

「そんなの簡単じゃない…」


一瞬間が空いて、ブラッドは言い放つ──


「私以外にも、軍や政府には『國信田』ちゃんの息が掛かった人が大勢居るもの♡」



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