PROMINENCE
第31話 國信田隼人の実行
  力は手に入れた。長年追い求めて来たこの肉体は、最高級の力を得ている。
──筈なのに何故だ?
  あの子供に反撃された時、微かにダメージが入った感覚があった。
悪魔である肉体。それにダメージを負わせるという事は、彼はあの時点で僕より更に力を使いこなしていたという事。
確かにあの時、3人が同時に扉を開けたのは事実。
そのせいで時空間が歪み、時間枠に微妙なズレが生じていたのだとしたら?
これは何かしらに利用が可能となるのでは?
待てよ。
既にこの結論に到達していた者が居るとしたら。
その者は既に、この世界で何かしらアクションを起こしている。
堪らない。
こんな1つの事からこんなにも大量の情報が、仮説が溢れ出るだなんて♡
「御満悦ですね。國信田さん」
  入口を見ると、考え事に夢中で接近していたのに気付かなかった人物が立っていた。
深い黒髪の男。名札には『吠舞羅  彩斗』と書かれている。
彼は若くして才能を買われた天才肌。
裏のネットワークでは上位に存在する。
「そうだ、僕の贈ったデータは確認しましたか?」
「えぇ♡ しかし、あんなデータを何処で?」
「企業秘密…とだけ言って置きましょうかね」
「イケないお人だ♡」
「それで? 何か御不明な点等御座いますか?」
その言葉に國信田は首を横に振る。
「いやいや♡  『天使の作成』と『神の複製』…中々興味深い♡」
「『あの』技術があれば、簡単に出来ますよ。材料は既に手中に幾つか有りますから」
  微笑む。
彩斗は黒い本を数冊取り出すと、適当にページを捲り吟味した後にその中から1冊だけ手渡す。
「テスターで作ってみましょう♡」
「そう言えば『彼』はどうしたのです?」
「ノイズ君かい?  肉体のスペアをテストさせてたけど、壊し過ぎちゃってね。今はネクロ君が魂を別なモノに定着させてるけど?」
「違います。『混沌の大蛇』ですよ。」
「アー君は用事で出掛けてるよ♡」
  さらりと返す。
彩斗はそれ以上言及を辞めた。
彼が何処で何をしていようと、『力』がある限り戻って来れるのだから別に手網を握ったり。首輪をして置く必要も無いだろう。
そろそろ計画も実行出来る。
「この本自体を情報に置き換え、脳内に送り込んで複製も作っておこう♡」
やはりこの男は天才なのだ。
この『本』自体を理解し、ソレを更に扱えるレベルまで引き上げる事が出来るのは彼だけ。
「僕の目には狂いは無かったね。こっちに来た甲斐が有るよ」
「貴方の出身も気になるんですけどね♡」
「ソレはまた今度だ。『複製人間』技術と、アポカリプスの情報を提供したんだ。」
「分かってますって♡  代わりにボクは扉を開く事と、ソレを実行するってぇ取引でしょ?♡」
彩斗は頷く。
「悪魔も神も天使も『人間』を舐め過ぎた」
「まさか本人達も、身内に真っ黒な奴が居たなんて思わないでしょうね♡」
「あぁ。そして、この計画は人間の可能性を見せ付ける為のものでもある」
  そう言いながら彼は魔力を溢れ出させる。
漆黒の魔力。
まるで黒い血液が流れてるかの様に、ドロりと重く溢れ出る魔力は底が知れない。
國信田は思う。彼は悪魔であり神である。
全てを破壊出来る力を持ちながら、新たに人類を作り替えるつもりで居る。
破壊と創造を彼は行おうとしているのだ。
神への冒涜、人類への冒涜、それ等全てを理解して尚犯そうと言うのだから恐ろしい。
恐ろしいが故に──頼もしい。
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