PROMINENCE

第28話 リプラード



  おかしい。
先程まで焼かれ激痛のあまり悶えていた男が、今度は飄々として立っているのだ。
しかも魔術での反撃までして来て。

まるで先程の出来事が全て無かったかの様に。


歩夢は堅唾を飲み、その男と対面する。


「糞ガキ、テメェ何モンだ?」

「お前こそ…何なんだソレ? 魔術か何かか?」

「質問に質問で返してんじゃねェぞ糞が」


男は「まぁ良い」と言いながら大袈裟に両手を広げニヤリと笑う。


「俺は『応答せし軍団リプラード』の1人、『音響兵器ノイズキャンセラー』だ」

「リプラード? 」

「俺達は國信田様が命令すれば、応えこた戦う兵士。
最強の軍団だァ!!」

  刹那、男の声と共に大きな波動が歩夢達を襲う。


─っ、ノイズキャンセラー…音に関する魔術者か!?

「お父さんと…お母さんの仇ッ!!」

美鈴は歩夢の後ろで寄ろけながらも立ち上がり、ノイズキャンセラーを睨む。

歩夢はその言葉を聞き、耳を疑った。


コイツが、美鈴さんの両親の仇!?
という事は…美鈴さんの両親は殺されていたのか!?
しかも、目の前のこの男に!?

──これは只事では無いの。 主様よ、他にも幾つか不穏な魔力を感じる。
警戒を怠るなよ?

「解った。 美鈴さん、取り敢えず1度逃げましょう!!」

「…。」

「美鈴さん!!」

「解ってる…一旦引くよ!!」

  そう応えていても、美鈴の表情は険しく。
ノイズキャンセラーを尚も睨み付けていた。

両親を殺した相手だ。
簡単に引き下がりたくは無いのだろう。
歩夢は何かを察し、美鈴の手を取り目を見る。



「美鈴っ!!」 



「!?」

低い声が響き渡り、それに美鈴は反応し振り返る。

「父さんを置いて行くのかい?美鈴…」

その声の主はノイズキャンセラーだった。
優しく語り掛けるその声に、美鈴は瞳を大きく開き肩を震わせる。


「美鈴…母さんを…置いて行かないでっ」


  声が変わる。

低い男の声が女性へと変わり、その声を聴いた美鈴さんはガタガタと震えている。


「ゆ…るせな…い」

「美鈴さん!」

「許すもんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ダッ!!

勢い良く飛び出した美鈴。
正面から殴り掛かろうとする彼女を、ノイズキャンセラーは逃げずに待ち受ける。

そして──

「キャンセル!!」

大きな声で一喝する。

ただそれだけで美鈴は吹き飛ばされ、壁へと吹き飛ばされる。

バシィッ!!

「くっ…!!」

衝撃波に逆らいながら歩夢は走り、壁に衝突する前に美鈴を受け止め 自らをクッション代わりにする。

「つぁ…美鈴さん、大丈夫ですか?」

  歩夢の問い掛けに美鈴は応えない。
今の衝撃で頭を打ったのか、項垂れて苦しそうな表情を浮かべていた。

──主様…。

  あぁ、俺が来る前から美鈴さんは立ってられるのがやっとの状態だった。
多分 トラウマによる精神的ダメージと、アイツの魔術によるダメージで参っていたんだと思う。

それでもアイツに立ち向かうのは、仇であるから…。


──余程、両親の事を好いておったのじゃろう。

あぁ。
だからこそ、俺も許せない。


歩夢は美鈴を横にし、上から自ら着ていたパーカーを脱ぎ 被せる。



──戦うのか?

どっちにしろ逃げられないよ。
気絶した彼女を背負って後ろを向けたら、それこそ格好の的だ。


「なら戦うまでだ!!」

「ケハッ、良いぜェその目ェ!!  掛かって来いッ!!」

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く