PROMINENCE

第20話 本領発揮



ドシャッ!!


音を立て、マネキンは地面へと崩れ落ちる。

真人は腕をコキコキと鳴らし、仮面で周辺をスキャンする。

「同業者が今回の犯人なら、此処には居ない可能性が…!!」


何かに気付き、真人は部屋を出て廊下へと飛び出す。
そしてそのまま弾丸のように階段へと向かい、先程まで一緒に居た烏丸をそこで見掛けた。

「よォ、遅かったじゃねーか?
こっちは1匹仕留めたぜ?」

服が裂け、悪魔の様な魔力を宿した烏丸がマネキンの残骸を踏み砕いていた。



「何故だッ!! 何故生きている貴様ァッ!?」


甲高い声が階段に響き渡る。

その声の主は、先程 真人が助けた少女から発せられたモノであった。

しかし少女は目付きが鋭く、先程とは打って変わって荒々しい言葉使いをしている。

「オレ様の計画は完璧だったハズ!!  魔術師でも、そんだけ深く切られりゃあ動けないハズだぞ!!」


  叫ぶ。
少女はとてつもない圧力を放ちながら、苛立ちを隠せずに叫び散らす。

真人はそれを見て確信する。


彼女は本来の彼女では無い。


「正体を現せ!!  『魂喰いソウルイーター』!!」

真人の青紫の魔力が少女を包み込む。


「ぐぬぁ…あァァァァァァ?!」


  少女は膝間づき、頭を抱ながら悶え苦しむ。

それでも魔力の放出を弱めない。
強く濃く放たれた魔力は、少女の中のナニカを引き剥がそうと喰らい尽く。

「いっ、意識が消えっ…」

悶え苦しんでいた少女は、真人が魔力の放出を止めると共に大人しくなる。

「『死霊使いネクロマンサー』だったのか?」


急な出来事に烏丸は目をぱちくりさせ、真人へと疑問派を投げかける。


『死霊使い』とはその名の通り、死んだ者の霊等を操り。
それをモノに定着させる事や、自らの魂を他のモノに移し替える事も出来る魔術なのだ。

本来なら禁忌の魔術として、これを扱える者も限れるのだが。
東條 真人は正にその限られた者の一人である。


「稀少な魔術師なら、直ぐに正体が割れるハズだけど…。本体が何処に在るのか解らない以上、手を出し用も無い。
だからこうやって同業者が消してやるのが1ば…ん…っ!?」


  「息が出来ねぇだろ?」


突如、真人は口と胸を抑えてしゃがみ込んでしまう。
烏丸は何処からとも無く聞こえた声に警戒しながら、真人と少女を庇う様に立ち振る舞う。

声の主の姿は何処にも無く、気配が漂うだけ。

しかもその気配は今現在、烏丸達の目の前に在るのだ。

「姿を現せクソ野郎!!」

気配のする所に何度も殴り掛かるが、手応えは無く。
ただ気配がウヨウヨと漂っている感覚に困惑する。

「姿何かぇよ。オレ様は魂だけで存在しているんだからな」

ケタケタと楽しげに笑う不気味な声が、烏丸の目の前から発せられる。

「まさか、そこの小僧もオレ様と同じネクロマンサーだったとはな。こりゃあ良い手土産が出来たぜ…キシシシ」

「クソっ!!」

  何度も腕を振るうが、それは虚しく宙を空振りするだけでしかない。

「無駄無駄〜キシシ。 オレ様の用事は済んだから、その小娘は返してやるよ」


  瞬間、気配が消えた。

烏丸は辺りを見渡すが、どこにも先程まで感じていた気持ちの悪い気配は無い。










カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…!!



突如、先程まで動かなくなっていたマネキンが動き出し立ち上がる。

烏丸はそれを不気味に感じ、直ぐに撤退しようと二人を抱え様とした瞬間…









バシュッ!!





  何かの放たれた音が耳を掠める。


一瞬、反応が遅れたが。

それは烏丸の横を通り過ぎ、横に倒れていた真人へと容赦なく突き刺さる。

ブシュッ!!

銀色に輝く細く長い針が、真人の腹部を貫通し背中から飛び出している。

「がっ…はっ!!」

  苦しむ様に吐血する真人。

その姿を見た烏丸の瞳の色が変わる。



金色に闇の中に輝く瞳。


魔力で覆われた身体は、黒く闇に染まる。


「あっ…あァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

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