PROMINENCE

第12話 操人形師





「キヒ…キヒヒヒ!!」

  少女は街の中を軽い足取りで歩く。

まるで踊るかの様なその足取りは、真っ直ぐと玩具屋の中へと消えてゆく。

だがそれを誰も気には止めない。

それもそうだろう。

外から見たらその少女は只の幼子。






しかし、その体から微かに漂う鉄の臭い。


それは正しく血の臭いであった。



「胡桃の代わりに頭蓋骨♪  シンバルの代わりにミンチプレス♪」


  可愛い歌声が響き渡る。

しかし、その歌の歌詞はまるで可愛くは無かった。

そしてその子が通り過ぎた後ろからは、子供や大人の絶叫が響く。




「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「どうした!?」

「大変だ!! 子供の腕が!!」

「これは酷いっ!!」

「こっちは男性が倒れてるぞ!!」

「ひでぇ…頭が潰れてるっ…!!」





「キヒッ!!」

  少女は楽しげに舞うように歩き続ける。

どんっ…。

  しかし、途中で野次馬とぶつかり少女は体勢を崩して倒れてしまう。

「キッ…」

「おやおや、大丈夫かい?」


  近くを通り掛かった小太りなおじさんは、優しく手を差し伸べ少女を起き上がらせる。

 そして足を擦りむいていないかを確認し、無事だと知ると優しく微笑む。

「ぁりが…と…」

「良いんだよ。おじさんにも、君くらいの歳の娘が居るから  ついお節介を焼いてしまって」

じゃあ気を付けるんだよ?と言いながらおじさんは去って行く。

それをじっと見つめていた少女は、悲しげにバイバイと告げた。




グシャッ!!





突如、おじさんはトマトの様に真っ赤な血飛沫を上げて破裂した。




「も…や……て」


  少女の最後の言葉は誰にも届かない。








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