PROMINENCE

第9話 暗躍する鴉


  此処は街中にある居酒屋「さんじょう」。

カウンター席のみで決して広いとは言えないその居酒屋に、高身長でガタイのいい男が二人座っていた。

「それで、これからどうする?烏丸」

  真人の問に酒を一口呑み、頬杖を付いていた烏丸は大きく溜息を吐く。

「力は予定通り手に入れたが、まさか一般の子供まで手に入れて来るとはなぁ」

  カウンターの向こうに静かに立っていた女性が口を開く。

そしてその言葉に更に深い溜息で烏丸は返すと、烏丸は近くに置いていた端末に手を伸ばす。

「真人、美鈴これを見てくれや」

  烏丸が取り出した携帯端末には、地図が表示されていた。

それを二人は覗き込み、首を傾げる。

「どうって、何処もおかしくねぇじゃねぇか?」

「うん。山城やましろさんの言う通り、普通の地図にしか見えないけど?」


  山城 美鈴と呼ばれたこの女性は、ここの女店主である。

そしてその二人に携帯端末を見せていた烏丸は、マップ上にマーキングされた赤丸を指差しタップする。

「此処は広渕ひろぶち方面にある大きな屋敷なんだがな。
ここの表記名…ほら、これ見てくれ」

  今度はそのマップをタップした事により、烏丸が持っていた周辺の画像が表記される。

そして、そこには大きな屋敷とその入口が撮影されたモノまであった。

「桐咲…?誰だこれ?」

「桐咲…歩夢くんと同じ苗字か?!」

  美鈴は首を更に傾げ、一瞬考えた真人はそれに気付いた。

「そうだ。此処いらじゃ有名な魔術師の家系だ」

「そんな凄い子だったのか彼?」

「あぁ。でもな、アイツはもしかしたらその事を知らされていないのかも知れん」

「なんでだい? アンタ等は見たんだろ?その子の魔力を」

  烏丸はゆっくりと酒に口を付けると、歩夢と初めて会話した時の事を詳しく説明した。

「まさか、じゃあ同じ苗字なだけじゃないのかい?」

「それは無い…真人とさっき家に行った時にも周りを調べたが、相当なレベルの結界が張られていた」

「だから、あの時烏丸はキョロキョロしてたのか」

  苦笑しながらジュースを飲み干す真人に、美鈴は新しく要るかい?とジュースを持ちジェスチャーする。

それを汲み取り、真人は軽く頷くとジュースを貰う。

そして烏丸には新しくお酒を作り渡す。

「ありがとな。くぅ〜!! ラズベリーの果実酒は美味ぇなぁ!!」

「このブドウのジュースも美味いぞ?」

「ラズベリーのヤツは自家製だぞ?
そのブドウジュースはウチの好みで仕入れてな」

「居酒屋なのに洒落たモノ多くね?」

  烏丸はご機嫌になり、ラズベリーの果実酒を炭酸で割ったモノを一気に飲み干す。

「ぷはっ、んでだ。話は戻るけどよ。
明日、歩夢と会おうと思っている…この3人でな」

  ガラリと真面目なトーンに戻ると、烏丸は二人を交互に見上げる。

「つー事は、引き込むのかい?」

  美鈴は難しい顔をしながら腕を組み、真人は真人で真面目に烏丸の話を聞いている。

「引き込むも何も、このままだと國信田の野郎に何されるか分からないからな。」

  先手だ先手と、烏丸は言いながら携帯端末を仕舞う。

「わかったよ。明日だね?準備しとくよ」

  美鈴はめんどくさそうに頭を掻きながら返す。
真人も肯定の如く頷く。

「明日、各々の能力とかも調べたいからな。
彼処に向かうぞ」

「ウチも入って大丈夫なのかよ?」

「いや、お前の方がパイプあるだろ?」

「客の騒動の度に、世話にはなってるからな〜。菓子くらい持って行かないと」

「僕が用意して上げるよ?」

  烏丸と美鈴のやり取りに静かに真人が呟くと、美鈴は嬉しそうに目を輝かせて手を握りしめる。

「ありがとう!!  彼処の部署の奴等、特に女性なんだけど。
中々プレゼントだのに煩くてねぇ~!!
アンタが選んでくれるなら助かるよ!!」

  女性って…怖いなと烏丸と真人の心はシンクロして感想を述べる。

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