PROMINENCE
第7話 闇に染まりし時
  烏丸は大きな黒い翼を羽ばたかせ、そこから飛び出る羽の雨で國信田を追い詰める。
黒い羽は一撃一撃が鉄の様に重く鋭い。
これも魔法の1種なのだろうか?と、歩夢は疑問に思う。
そうこうしてる間に、國信田も息が上がりスピードが落ちてゆく。
  何度が避けていたが、逃げ場の無い國信田は体勢を崩し今度は諸にその攻撃を喰らう。
「ごぶっ…!!」
「所長!!」
    茶髪でパーマの研究服を羽織った男が、扉の向こうから飛出して間に入る。
「瓢介お前!!」
  烏丸は顔を知っていたらしく、直ぐにワザの発動を止めた。
「すいやせん烏丸さん…オレっちも國信田さんに着いて行くっス」
「重罪だぞ!?」 
「解ってるっス。 でも、オレっちにはどうしても殺したい奴等が居るんスよ!!」
  狂ってやがる。
殺し合いでどうこうしても、結局で変えられるのはその瞬間までだ。と烏丸は苦虫を噛み潰した様な表情で諭す。
(殺し合い…?なんの事だ?)
 会話の流れに付いていけず、歩夢はただ傍観するだけであった。
「ぐふっ…。だぁから必要なのだよ〜♡
この世界を抑え込む力がねぇ〜え♡」 
「世界を…抑え込む?!」
  歩夢は驚き、目を見開く。
それを見た烏丸は頷くと、歩夢の側へと降り立つ。
「後で詳しく説明してするから、今は此処から逃げるんだ!!」 
「に、逃げるって?」
「國信田の野郎、こっちの攻撃は直ぐに回復しやがるっ…。
しかも此処は相手の手の内だ。一旦引いて、体勢を整えてから仕掛けた方が賢明だ」 
  しかし、そう言っても直ぐに脱出は不可能に近い。
そう歩夢が考えたのを察したのか、烏丸は天井を指差しそちらへ視線を移動させる。
  先程まで撃っていた羽が円形状に突き刺さり、天井には無数のヒビが入っていた。
「(俺が君を抱えて飛ぶ)」
  こそりと耳打ちすると、烏丸は國信田達に羽を広げ飛ばす。
確かに、外側から複数の気配が集まるのを感じる。
急いで逃げるのならこのタイミングしかない。
「掴まるんだ!!早く!!」
「くっ…ちくしょおぉぉ!!」
  ガシッと腕を掴むと、烏丸は翼を二、三度羽ばたかせ宇へと舞う。
  喰われた子供の亡骸が、歩夢の視界の端にチラつく。
ごめんな。
必ず仇は打つから…。
 静かに心の中で懺悔していると、二人は天井を抜け上の階へと移動する。
「急ごう!!この先に非常階段と出入口がある!!」
「…はいっ!!」
  二人は扉を開け、誰も居ない事を確認すると走り出した。
「あ〜あ、逃げられちゃったねぇ〜え♡」
  穴の空いた天井を見上げながら、國信田は首をゴキリと鳴らす。
それを横目で見ていた瓢介は郷田の首を拾い上げ、耳に着いていたチップを外し放り捨てる。
「魔力強化チップが焦げてるっすねー。
こりゃあ、もう少し改良が必要っすね國信田さん」
「んー?♡ まぁ、それは君らに任せるよん♡」
バキバキッ…ぶちゅっ!!
  放り捨てられた郷田の頭を軽く踏み付け、國信田は足で潰した。
「この人さ〜あ。ボクの研究資料を横流ししてたんだよね〜♡
まさかバレて無いとでも思ってたのかなぁ?♡」
  その点、彼は食えない奴だったね♡という言葉をポツリと呟くが、それは瓢介の耳には届かなかった様だ。
  それにしても…まさか力を得る為には本に触れなければいけないとはね〜え。
  お陰で時間は食っちゃったけど、隙を突いて触れられてラッキーだったよ♡
  それにこの力、再生能力と捕食の力が封印されていた見たいだけど〜。
まさか、オマケでこんな素敵な能力が着いてるだなんて〜♡
  國信田は元の姿に戻り、軽く腕を振るう。
そして、何かを確信したかの様にニヤリと笑い部屋を後にした。
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