PROMINENCE

第6話 立ち上がりし時


 手応えはあった。

確実に普通の人間なら死んでいるレベルの力が出た事は、目の前の惨状が証明してくれている。


  柱は砕き、折れ曲がり倒れている。

そしてそのままの勢いで壁に突っ込んだ國信田は、起き上がる素振りが無い。


このまま…終わってくれれば良いんだけどな。

そう言えば、烏丸さんはどうしたんだろ?



  歩夢は辺りを見渡すが、何処にも人の気配は感じられない。


(もしかしたら、アポカリプスの中に?)

──その可能性は十分じゃな。




「良いですね〜♡
この力!!この硬さ!!この再生力!!」

  瓦礫を押し退け、國信田は立ち上がる。

  破れた顔面は内側から徐々に元に戻り始め、直ぐに綺麗な状態へと復元された。


「化け物めっ!!」

「それはお互い様でしょ〜お♡
僕の顔を殴っといて、拳に傷が付かないなんて…痺れちゃう♡」



バサッ!!



  國信田は瓦礫の粉塵を歩夢へ投げ付け、目眩しを行う。


「しまっ?!」


「今度は僕の番だ…よ!!♡」


  國信田は後ろに周り、拳を思い切り振り上げる。
歩夢はそれを間一髪左腕で抑え、ガードした。

「わ〜ぉ、やるねぇ♡」

  その勢いを利用して後ろに下がり距離を置く。

──主様よ。中々上手くやっておるな。

(えぇ、少しダメージは残りましたけど。
これなら何とか耐える事が出来ます!!)

──魔力を解放したばかりで、制御に関してはまだまだじゃからのう。
実戦で馴れて貰うしか無いぞ?

(えぇ、応用の仕方とかは大体イメージ出来ましたから安心して下さい!!)


「ちょっとぉ〜、考え事はあの世でして…ね!!♡」

ドスッ!!ドスッ!!

「ぐっ?!」

  強烈な拳の殴打が歩夢を襲う。

  しかし、魔力を集中させていれば威力はそこまでじゃない。

問題はアイツの耐久力と回復力だ。

「中々しぶといのね!!♡」

  何もしないからって、好き勝手に殴り過ぎだろこのオカマ!?

  こっちからも仕掛けてやる…!!


右足に魔力を集中し、攻撃を良く見る。

隙間や、技と技の間に出来る時間を上手く見分けて…放つ!!


「グブッ?!」

  歩夢の右足は國信田の腹部を捉え、その衝撃で國信田は後ろへとズリ下がる。


  怯んだら休ませずにもう一撃を与える!!





「『氷塊の壁アイスドウォール』!!」





  突如、部屋の温度が一気に下がる。
そして蹴りを入れようとしていた歩夢の足元から、大きな氷塊が現れ、歩夢を天井へと押し上げる。


「ガハッ!?」


  そのまま天井と氷塊により押し潰され、字面へと落下してまう。


「随分と舐めた真似してくれやがったな糞ガキ?」

  ゴキリと首を鳴らしながら現れた男を、歩夢は知っていた。

「お前は…誘拐犯の…」

「郷田 力夫りきおってんだ。覚えておけ。」


「郷田くん、無事だったんだぁ〜ね〜」


  しまった!!
ダメージを回復されちまった!!



「丁度良いかな♡」




スパッ…





  目の前が真っ赤に染まる。

突如、郷田の首と胴体が別れ吹き飛ぶ。

歩夢はそれを理解するのに数秒掛かった。

「魔力頂きま〜す♡」

ガブッ!!

ジュル…ガブッジュル…

ゴキッバキッ…ジュルル…ジュルル…


  見る見る郷田の肉体は骨事しゃぶり尽くされ、噛み砕かれ咀嚼される。


「うぐっ…」

──吐いてる場合では無いぞ主様!!  何か別な気配がする!!

  アマテラスの声と同時に、下の魔法陣が赤く光り輝き始める。





「少し時間食っちまったな…」




  そこに烏丸が現れた。

雰囲気が少しだけ変わってるのか、何か威圧的なモノを感じる。


──主様よ。この者は知り合いかの?

(あ、あぁ…俺を逃がそうとしてくれた人だけど?) 

  アマテラスは「そうか」と一言呟いてから静かになる。

 何度も呼び掛けても返事が無く、歩夢は目の前の烏丸へと視線を向ける。


「國信田…随分様変わりしちまったな、お前」

  烏丸は冷たい目で静かに話す。

しかし、その一言の裏には燃え盛る様な怒りを感じ歩夢は一歩下がってしまう。

対して國信田の方は満足そうに舌を鳴らし、爪をガシャガシャと鳴らす。

その様子を見て、烏丸の瞳はより一層鋭くなる。


「随分遅かったじゃ〜あないか。ボクはもうお腹いっぱいだよ♡」

「悪かったな。テメェを倒す為に特訓してたからつい遅れちまった」

「へぇ♡ それで?どんな力を手に入れたのかな?♡」

「テメェと似た力だよ」 


ピクッ…


  國信田の肩が微かに揺れ動く。

今度は國信田の反応を烏丸が無視して話を進める。 

「見せてやるよ…コレがオレのチカラダ!!」



バキッ!!



  何かが割れる音と同時に烏丸の魔力が体内から溢れ出す。

黒く濃い魔力を歩夢は肌で感じる。


「これがっ…魔覇?!」

  先程、アマテラスが此処へ帰る前に魔力の使い方と魔力について少しだけ聞いていた。

魔力の高さや濃さ、性質により魔覇というモノが生じるらしく。

  威圧・掌握・破壊様々な性質が存在する。

魔力を解放しただけで発動するモノに、魔法や魔術を加える事で威力を底上げしたりと出来たりするらしい。


そして、それを放つ烏丸の見た目は大きく変化し、目の色は黒く染まり瞳は黄色く光り輝く。

背中からは黒い翼を羽ばたかせ、爪も鷹の様に鋭く変化する。


「なんだこの魔力はッ!?」


  國信田はカタカタと左手が揺れ、それを必死に抑える。

「悪魔の分際で情けねぇなオイ」

「な、なんだぁ?何故ボクが震えてるぅ?」


  國信田はニヤリと笑うと翼を広げて飛び上がる。

「さぁ、覚悟しろや変態研究者!!」

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