七つの役職

狩巣栄斗

二人目の参加者

「ええと、ここがどこだか教えてもらえませんか?」
 雄一はその女の子に聞いた。
 何しろ事情が全然分からない。
 なんでもいいから情報が欲しかった。
「え……」
 女の子は困ったような表情になる。
「ええと、その、俺、なんでここにいるのかよく分からなくて」
「ああ……」
「ここがどこなのか教えてほしいんですけど……」
 なんだか俺、あんまり格好良くないな。
 そんなことを思う雄一だった。
 記憶がぼんやりしていて、ここがどこだか教えてほしい、なんて発言から始まる出会いでは、恋愛への発展は無理かなー、とかそんなことを考えていたのだ。
「あの……わたしもです」
「え?」
 女の子の発言に、雄一は思わず聞き返した。
「わたしも……どうしてここにいるのか、分からない、です」
「マジですか」
「はい」
 あごに手を当てて雄一は考える仕草をする。
 これ、ワンチャン、恋愛に発展する可能性あるか?
 同じ境遇に置かれた二人。
 状況がわからなくて、なんだか不安な状態。
 ここで俺がリーダーシップ発揮して男らしい所見せればこの女の子俺に惚れるかも?
 よし、俄然やる気が出てきた。
「じゃあここがどこなのかも分からないんですね」
「はい」
「まかせてください。俺も分からない事だらけだけど、なんとか調べてみましょう」
「あ、ありがとうございます」
 女の子の感謝の言葉ゲット。
 内心ほくそ笑みながら部屋を見回す。
 今自分がこの部屋に来る時に開けたドアを含めて、10個のドアがあるようだった。
 部屋の中央には円形のテーブルがある。
「なにか変わったもの、異常なものを見かけませんでしたが」
 雄一は聞いた。
 気分は探偵もののストーリーの名探偵だ。
「あ、それなら、あのテーブルの上に」
 半分格好をつけるために聞いただけだったので、雄一は意表を突かれた。
「あるんですか」
「なにか、よく分からない文章が」
「文章」
 何だ文章か、大したものじゃなさそうだな、と思いながら、テーブルの方に向かった。
「これは……」
 雄一はなにか格好いいことを言おうとしたが、適切な言葉が思い浮かばなかった。
「なんだか分かりますか」
「……興味深いですね」
 なんとか名探偵らしい台詞を口にしながら、雄一はテーブルの上のカードを見つめる。
 そこには次のような言葉が書かれていた。




 八人が集う山小屋には 人狼が紛れ込んでいる
 人狼は夜が来るごとに 人を喰らう
 人にできることは 昼のうちに疑わしきを吊るすことだけ
 しかしこの戦いは 人狼が勝利を収める
 

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