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時塚オイモ

第37話 〜進化と進化〜

「ねぇ……お兄ちゃん?」


「な、何?」


「お兄ちゃんは私の事……どう思ってるの?」


「どうって……僕にとって朱莉は大切な家族だ!だから!」


「…………それだけ?」


「え…………?」


「それだけなんだ……そうだよね………そうだよね!それだけだよね!」


朱莉の身体からさっきよりも濃くて赤黒いオーラのようなものが飛び出し、豊臣秀吉の体を纏う。


「ハァァァァン!!朱莉の負の感情が私の中に流れてきますわぁん。朱莉の負の感情は私の力になる!ですから、今ならお姉様だって勝てる気がしますわぁ!!」


赤黒い負のオーラを纏った豊臣秀吉は、さっきまでの力、防御力、速さが桁違いに上がった。


くっ!?猿のオーラが一気に変わった……だが、私にはまだ秘策がある!!


「悠斗!!」


信長は僕を見て叫ぶ。この時、僕は信長が何をしたいのか直ぐに分かった。


「分かった!行くよ!」


僕と信長は息を合わせ叫ぶ。


『進化!!』


その言葉を叫ぶと、信長の体が光に包まれ姿が変わっていき、しばらくして光が徐々に消えていく。


「それが……お姉様の真のお姿………」


豊臣秀吉は呆然とした顔で信長を見ていると、信長は微笑みながら解説をする。


「そうだ!これが私の真の姿!『魔王天衣・桜花』!」


「ま、『魔王天衣・桜花』!?それが、そのお姿の真名ですの!?」


「ん?いや、ただ私が勝手に名前を付けただけだが?」


進化の名前じゃなかったの!?てか、凄く中二病感が満載な名前だよね………


僕はそう思いながら苦笑いをして信長を見つめる。


「お、お姉様……それは………それは………」


流石の豊臣秀吉も引いてるか……正直に言っていいよ?僕は何も言わないから。


「それはとっても素晴らしいお名前ですわぁ!」


賛同しちゃったよー!!いや、何となく分かってたけどさ。


「じゃろぉ!私のネーミングセンスも捨てたものではないな!はっはっはぁ!」


信長は傲慢な笑みで嬉しいそうに高笑いをしていると、豊臣秀吉が笑顔で喋る。


「お姉様の割には………ですが。」


「何だと…………?」


豊臣秀吉の言葉でさっきまで笑っていた信長が笑いを止め、豊臣秀吉を睨みつける。


「そのようなネーミングセンスでは、まだ私の方が上ですわね!」


豊臣秀吉はドヤ顔をしながら信長を見下すと信長は少し腹を立てて、豊臣秀吉を挑発する。


「ならば!貴様の技を私に見せてみよ!私が直々に貴様のネーミングセンスを否定してくれる!」


「宜しいのですね?お姉様。分かりましたわ。それでは私の新技、とくとお見せ致しましょう!!朱莉!」


「ええ!秀吉!!」


『進化!!』


「なっ!?進化だと!」


「そんな!?朱莉達も進化を使えたなんて!」


朱莉と豊臣秀吉が同時に叫ぶと豊臣秀吉の身体を覆っていた赤黒いオーラが段々、衣服の姿に変わっていく。


「うふふふ。そうです。これが私と朱莉の本当の力『暗黒明神・天照』!!」


うわぁー………何となく分かっていたけど、やっぱり豊臣秀吉も中二病感満載のネーミングセンスだなぁ……


「貴様………何だ……その…………」


・・・・・・・・・・・・


「その心揺さぶるカッコイイ名前はぁー!!」


うん。そう言うと思った。


「うふふふ。どうですお姉様?私のネーミングセンスは!とってもカッコイイお名前でしょう?」


「くっ……まさか、この私がネーミングセンスで追い詰められるとは………流石だな。猿!」


2人は微笑みながらお互いを睨みつけていた。というか………………


「2人共!さっきから一体何の対決をしているんだよ!!」


僕は大声で叫びながら信長と豊臣秀吉にツッコんだ。すると、信長は僕の声に気づき、ようやく我に返った。


「はっ!?危なかった!危うく、猿の罠に引っかかる所だった!」


「えっ!?あれが罠だったの?」


「そうだ。彼奴は猿の癖に……いや、猿だからこそとても頭が良い。そして、猿の『とんち』は一瞬にしてどんな場の空気でも自分の思い通りに動かし相手を油断させる。それが奴の技『天下狩り』だ!」


「天下……狩り………」


確かに、僕も信長もさっきまで完全に油断していた。あれが、全て豊臣秀吉の技なら僕達は彼女に踊らされていたというのか!?


「ちっ!やはり下等生物を先に始末しておくべきでしたわ。」


「あははは!残念だったな猿!貴様は悠斗を甘く見すぎていたようだな!」


「くっ!どうやらそうみたいですわね。油断させるつもりが、まさか私が油断をしていたなんて。」


油断を一切してない本気のお姉様に、私達が勝つのはほぼ不可能ですわ。このままでは負けてしまう。何か方法は………


「さぁ!続きをしようか!猿!」


信長は刀を取り出し豊臣秀吉に向けて構える。すると、急に周りが煙に包まれていく。そして、煙の中から忘れられない忘れてはいけない因縁の男の微笑む声が聞こえてきた。




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