アクティベート・オンライン

時塚オイモ

第29話 〜闇の暗殺者〜

「とにかく!もし、今回の事件の犯人がフィアーなら近くまで来ている可能性がある。2人共、これからは気をつけて行こう。」


僕は念入りに2人に、危険が迫っているかもしれないと注意した。


「おう!」


「うん!」


2人は同時に頷く。とりあえず危険が迫っている事は2人も分かってはくれているみたいだ。だから、それも含めて今後の事を話そうと思った時、ホームルームのチャイムが鳴ったので後で話す事にした。


勢いよくドアが開き入ってきたのは勿論、我らが美人先生、真田先生だ!


「おはよう!さて、ホームルームを始める前に皆に紹介しておきたい人がいる!入ってきてくれ!」


先生がそう言うとドアの奥から、カツンカツンとヒールの音を立てながら歩いてくる女性が居た。それは、黒髪の三つ編みで眼鏡を掛けてお淑やかに見える綺麗な女性だった。男子も女子も見惚れる程に…………


「突然だが!今日から英語を担当する新任教師を紹介する。私の中学の同期で名前を『河紙迷子』と言う。マイちゃん、自己紹介頼む。」


「もう、真田先生。学校では、あだ名ではなく苗字で呼んでくださいよ。ええと、ごめんなさい。初めまして皆さん。私の名前は、河紙迷子。マイコは迷いの子と書いて迷子と言います。今日から皆さんの英語教師を担当させて頂きます。不束者ですが、どうか末永く宜しくお願い致します。」


なんて礼儀正しいお人なのだろう。何処ぞの教師と違ってあまりにも素敵すぎる。てか、真田先生の友達にあんな綺麗で律儀な女性が居たなんてびっくりだ。


「・・・・・・・・・」


あれ?今、こっちを見られたような……気のせい………なのかな?


「はい!と言う訳で、マイちゃんは今日から英語の授業を担当してくれるみたいだから、しっかりと勉強するようにな!特に男子!マイちゃんに見惚れて勉強サボるんじゃないぞ!」


真田先生はそう言って、ホームルームを始めた。マイちゃ……河紙先生は教室から出て行き、職員室に戻った。


昼休み・・・・・・・・・・・・


「なぁ悠斗!マイちゃん、可愛かったなぁ!何というか、お嬢様育ちの礼儀正しい清楚な人というか今まで居なかった逸材だよな!」


「まぁ、振る舞いは確かにお金持ちの御令嬢みたいな人だったね。でも、急に転任してくるなんて珍しい事もあるんだね。」


僕と透は河紙先生の話をしていると、突然横から瑠美が入ってきた。


「あの人………怪しい…………」


何故か急に瑠美は河紙先生の事を疑い始めた。


「何が怪しいの?」


「だって!普通変でしょ!こんな時に転任してくるなんて。それに、昨日の事件があった後よ!何か怪しいと思わない?」


確かに瑠美の言う通りだ。昨日の事件の後に、転任。これは偶然なのだろうか。でも、あんな先生に人殺しなんて出来そうには見えない。そう考えていると、透はちょっと怒った顔で


「確かに、この時期に転任するのは中々無いとは思うぜ。だけど!昨日の事とマイちゃんを結び付けるのは間違っている!俺は、マイちゃんを信じる!」


透…………完全に河紙先生に惚れてるな。


「でも、透の言う通り河紙先生を疑うのはまだ早いんじゃないかな?」


「もう!悠斗君まで……でも、そうね。今日会ったばかりの人を疑うなんて酷いよね。ごめんね!透君!」


「いえ!私はルミちゃん一筋なので、気にしないで下さい!」


私って、お前は誰だよ!!


・・・・・・・・・・・・


「ええ。見つけたわ。ええ。今日の午後に仕留めます。それではまた。明智様」


電話を切り、謎の女は微笑んだ。


「うふふふ。楽しみね。」


16時30分 下校時間・・・・・・・・・


キーンコーンカーンコーンと授業の終わりのチャイムが鳴り、クラス皆は帰っていく。僕も帰りの準備をしている時、透と瑠美が近づいてきた。


「おーい悠斗!一緒に帰ろうぜ!」


「そうだね!色々と物騒だし、一緒に帰………」


この時、僕達は完全に油断していた。昨日に続き、今日は戦う事は無いだろうと勝手に思っていた。何故、こんな事を言い出すのか。それは周りを見たら直ぐに分かった。
何故なら…………この学校に僕達以外誰も居なくなっていたからだ。


「フィールド!?」


僕と透と瑠美は、いつの間か別の空間に移動させられていた。そして、僕達も慌ててスマホを取り出し声を出す。


『アクティベート・オン!!!』


そう言うと、僕のスマホから信長が出て、瑠美のスマホからルパン、そして透のスマホからユグドラシルが出てくる。しかし……………


「くそっ!昨日の戦いで、まだユグドラシルの体力が完全に回復しきれていないか!」


「こっちもよ!ルパン、大丈夫?」


「申し訳ない。昨日の戦いは中々ハードだった為、まだ吾輩の力は完全に戻っていない。もう少し時間を頂ければ回復出来るのだが。」


思ってた以上に皆の体力は昨日の戦いで消耗していた。今、動けるのは信長だけ………か。


「信長!行けそう?」


「うむ!私に任せておけ!只…………」


「只?」


「昨日の『進化』の力を使う体力まで回復しきれていないのだ。もし、ユグドラシル並の相手が来たら正直、勝ち目があるかどうか……」


あの信長が弱気になっている。それもそうだ。それ程、昨日の戦いはギリギリだったのだから。僕達は、どうしようかと考えていると、廊下から人が歩く足音が聞こえてくる。僕達は急いで廊下へ出た。暗い廊下の奥から、足音が近づいてくる。僕達は、奥から来る人をじっと見つめる。すると、後ろから


「いっただっきまーーーす!」


そう言って、黒髪の幼女が急に現れて僕の首をナイフのような、いや!ダガーのような刃物で切ろうとした。


「悠斗!避けろ!」


信長は、幼女に気がつき瞬時に刀を取り出し幼女を斬ろうとした。幼女はそれに気づき、とても身軽な動きで刀を避けて前から来るマスターであろう人の隣に微笑みながら立つ。そして、ようやくそのマスターの顔が見えた。


「あっれれー?ごめんマスター。殺せなかった。」


「良いのよジャック。今のは仕方ないわ。」


その女性はまるで、闇の世界で生きてきたかのような雰囲気を漂わせる目をしており、黒いロングストレートに右唇の下にはホクロがある。そして、ニッコリと微笑んでいるのに背筋を凍らせる程の寒気と殺気が伝わってくる。そう。この感じはまるで……………『暗殺者』だ。

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