アクティベート・オンライン

時塚オイモ

第6話 〜日常、非日常?〜

僕は信長に自分のスマホを向ける。


「む?なんだ?」


信長は不思議そうな顔で僕を見る。


「え?信長はゲームのキャラクターだからスマホに入れるかと思って。流石に、このまま家に帰ると親がびっくりしちゃうからさ。」


そう、論理的な理由を述べて説明するが信長は不機嫌そうな顔で


「いや!」


信長は顔を横に向いて即答で拒否る。


「ええ!?な、何で?」


「だって!その中、狭いし気持ち悪いから!」


信長は不機嫌な顔で僕のスマホを見る。


ええっ!?嫌々、信長さん?そんな不機嫌そうに言われましても……僕は困った。それでも頼んでみる。


「お願い!せめて僕の部屋に着くまで入っててくれないかな?」


両手で何度もお願いしてみた。すると信長は


「……はぁ、仕方ない。主の頼みなら、聞くしかないな。」


信長は諦めてくれたのか、嫌々ではあるが僕のスマホの中に吸い込まれていった。そして僕は、すぐに家に帰った。遅く帰って信長に怒られるのは困るからだ。


6月15日   東京都渋谷区   実家   僕の部屋


「ふわぁ〜、もう朝か〜」


僕は大きなあくびをして起きる。昨日の出来事……人が急にいなくなったと思えば、帰ってる途中に突然いなくなった人達が現れた。多分、何かフィールドみたいのが起動して思う存分戦わせるために人を消した……いや違う。終わった時、フィールドが消えて他の人達が現れた。つまり、他の人が消えたんじゃなくて僕達が消えたんじゃないか?別の世界に飛ばされて元の世界に帰ってきた。それなら、説明がつく。アクティベート・オンラインなら可能なのかもしれない。僕はそんな事を考えながら布団をどかそうとすると


「むにっ」


僕は何か柔らかいものを掴んだ。何だろうこれ?温かくて、マシュマロみたいに柔らかくて……って!信長!?よく見てみるとそこには、裸姿の信長が添い寝をしていた。


「の、のわぁぁぁ!?」


僕は過去一番の声で叫んだ。すると、ドタバタドタバタと階段を上ってくる音がする。この感じ……何か嫌な予感がする。そして、バンっとドアが勢いよく開いた。


「どうしたの!?お兄ちゃん!」


「なっ!?朱莉!」


部屋に勢いよく入ってきた子は、小柄で赤髪ツインテールで僕を引き取ってくれた叔母さんの娘
『神谷朱莉』。僕の従兄弟でいわゆる、義妹だ。


「てか、お兄ちゃん!いつの間に帰ってきてたの!全然帰って来ないから、私……」


朱莉は泣きそうな顔で黙り込んでしまった。僕は申し訳ない気持ちになり


「心配してくれたのか?」


そう言うと、朱莉は顔を真っ赤にして声を震わせながら


「は、はぁ!?そ、そんな訳ないでしょ!べ、べべべ別に昨日は心配で探しに行こうとか警察に行こうとか、思ってないんだからね!」


指を僕にさして、大声で言う。何というか、朱莉は小さい時、僕の事が嫌いだったのか一切口を聞いてくれなくて、今では口を聞いてくれるけど今度は何故かツンツンしてるんだよなぁ。


「ごめんな。」


僕は心配をかけたみたいなので申し訳なく、朱莉の頭を撫でながら謝る。


「……ばか」


朱莉は顔を下に向けて小さい声で囁く。


「うーん……うるさいのう。まだ朝なのだからもう少し寝させてくれんか。」


信長が僕達の声で目を覚ました。


「はっ!?しまった!」


僕は今の状況を思い出したが、もう手遅れだった。頭の中が真っ白になる。そして朱莉は信長に気付く。裸姿の信長に……


「え……?この人、誰?何でお兄ちゃんの布団に寝てるの?何で裸なの?」


朱莉は呆然な顔で僕に質問してくる。


「えーと、その……いやそれよりも!何で僕の布団で寝てるの!てか、何で裸なの!」


咄嗟に、話を変えて僕に来る怒りを回避しようと試みた。


「ん?それは勿論、いつ如何なる時も主と一緒にいるのが当たり前ではないか!それに暑かったから脱いでいた。だが安心しろ!私も女だ!下着くらいはちゃんと履いているぞ!」


信長はそう言ってドヤ顔で偉そうに両腕を腰に当てて立った。


「主……?いつ如何なる時も?ふ、ふふふふ。お兄ちゃん?家族会議……しましょうか?」


朱莉!朱莉さん!?目が笑ってませんよ!と言うか、殺気みたいな赤黒いオーラが見えるんですけど!?


「逃げるぞ!のぶなっ……が!?」


この部屋が血の海になる前に信長を連れて逃げようとして信長の方を向いた時……さっきまで真っ青だった僕の顔は一瞬で真っ赤になった。


「む?どうした?悠斗」


「信長さん!下!下を……」


僕は顔を横に振り信長を見ないようにした。


「ん?下だと?」


信長は不思議そうな顔で下を見た。すると、信長は黙り込んで泣きそうな目で


「き、きゃぁぁぁ!!」


と信長は大声で叫び一瞬で布団に入る。あんな、白い素肌を見たのは初めてだった。僕は少しニヤニヤしながら信長を見ていると


「いつまで見てるのよ!このド変態兄ー!!」


朱莉はとてつもなく強くて重い拳を僕の腹にヒットさせる。その拳はあまりにも綺麗に入ったため、倒れ込んだ。一瞬、走馬灯が見えた気がした。


「み、見たか?」


信長は顔を真っ赤にして少し泣きながら聞いてくる。さすがにこれは本当の事を喋ると不味いと思い


「え、えーっと……見て……ません。」


「えーい!こうなれば、悠斗を殺して私も死ぬ!」


そう言って信長は刀を取り出し僕に斬りかかる。


「わぁぁぁ!待って待って!落ち着いて!」


僕は慌てて刀を避けて急いで走って逃げ出す。信長は僕を追いかけてくる。裸を見られて殺されるなんて冗談じゃないと思っていると


「待てー!ド変態兄ー!ちゃんと説明しなさーい!」


朱莉も追ってきた。こんな物騒な朝は初めてだった。

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