月夜の太陽 〜人と人ならざる者達の幻想曲〜
第19話 気持ちの形
ノルトの街の片隅に立つ石造りの雑貨店『ジャック•オ•ランタン』
主にアクセサリーやインテリアの品が並んでいるが、どれも珍しい貴石や古物がおかれている。
コンコン…
コンコン…
古木から作られている重いドア。それを叩く高い音が店内に響く。
しかし店内には人の気配はおろか、物音すらしない。
ガチャ…ギィィィィ…
重いドアが開かれると、そこからリィズが顔を覗かせる。
「お邪魔します……ロキさん?いませんか?」
呼んでも誰も出てこない。
仕様がないので、リィズは店の中を見て回ることにした。
店内は円形をしており、ドアの両サイドの壁に沿って棚が囲む様に置かれ、その上にさまざまな品が置かれている。
そして、店の真ん中には、螺旋状に絡まった木が2本立っており、枝には彩りのあるいくつものランタンが飾られていた。
お客はドアから入ると、どちらからでも店を一回りする形になり、見ない品は無い様な工夫がなされている。
リィズは置かれている品々に興味をそそられ、順に見て回ることにした。
 虹色に輝く石をはめ込んだペンダント、触ると皮で作られた小物入れ、羽の様に軽い短剣、触れてもいないのにガラス容器の中で波打つ不思議な液体など、棚に置かれた商品はどれも見たことのない様なものばかりだった。
「変なものばかりだけど、こういうものを欲しがる人っているのかな?」
「変なものばかりで悪かったな。」
「ひゃっ!」
ドアのところから急に声がして、おどろくリィズ。
見ると店のドアのところにロキが荷物を抱えて立っていた。
「ご、ごめんなさい。てっきり留守かと思って。」
(口にしたことは別に悪いとは思って無いんだな。いや、そもそも留守と思ったんなら、何故店の中に入ったんだ?)
心の中で指摘しつつ、ロキは抱えていた荷物を下ろす。
「あ、手伝いましょうか?」
リィズはロキを手伝おうと自ら進み出た。
「気を使わなくてもいい。それに、なにかを買いに来たんだろ?」
「あ、そうでした。じつはもうすぐ結婚記念日なんです。だから、そのお祝いの品が欲しくって……」
それを聞いてロキは、少しびっくりした。
「君は…リィズとか言ったか。結婚していたのか、12、3歳ぐらいだと思っていた。」
「ち、違います。わたしじゃなくて両親のです。それにわたしは13歳です。」
リィズは顔を赤らめて、慌てて否定した。
   もうすぐ15周年の結婚記念日を迎えるデンゼルとモーラに、日頃の感謝とお祝いに特別なものをあげたいとのことだった。
リィズがここに来たのは、ロキが不思議な品を扱う雑貨屋を営んでいることを、両親から聞いていたからだった。
「それでどんなものが欲しいだ?」
「うーん……記念になるものだから…対になるものとか?あとは、身につけられそうなもの?」
「それで、店の中に良さそうなものはあったのか?」
リィズは色々と悩みながら、店の棚を何度も往復しながら自分の考えているモノに近いものを探す。
「うーん、やっぱり花束の方が良いのかな……」
リィズが棚の前で頭を左右に振る仕草をして大分時間が経つ。
「……しようがない。アイツに聞いてみるか。」
「アイツ?」
見兼ねたロキは、椅子から立ち上がるとマッチを取り出し、店の真ん中に立つ木に掛けられているランタンの一つに火を入れた。
火の入ったランタンは薄い青みと赤みを交互に帯びて、店の中を照らしていた。
「不思議な色…でも、すごく綺麗…」
リィズが自然と感想を口にすると、一瞬炎が揺らめく。
「おや、お嬢さん。お誉めいただいてありがとうございます。」
急に澄んだ声が店の中に響く。
「え、なに?今の…ロキさん?」
「俺じゃないよ。今喋ったのはコイツ。」
ロキは、炎が揺らめくランタンを指差す。
よく見ると、揺らめく炎にわずかながら顔の様な模様が見て取れる。
「はじめましてお嬢さん。私、ウィル・オ・ウィスプのオースと申します。以後お見知り置きを…」
「うわー、ランタンが喋ってる!わたしはリィズっていうの!」
「おや、私を見て驚かない方は久しぶりです。ねぇ、ご主人。」
オースは嬉しそうに、ゆらゆらと体?を揺らした。
「さて、ご主人。私を呼ばれたのは、こちらのお嬢さんのことでしょうか?」
ロキは、リィズのこと、彼女が両親の結婚記念日に特別なものを贈りたいことなどを説明し、知恵を借りたいことをオースに伝えた。
「ふーむ……、では、魔石を、ペリドットをあしらったブレスレットと髪飾りではどうでしょう?ペリドットには幸福を表す意味もありますし、魔石の力で邪気も払ってもらえますよ。」
「それいい!それにする!」
「待て待てオース。ペリドットなんて何処にある。ここには、せいぜいクリスタルや御影石くらいだ。」
「ああ、これはこれは、ご主人の甲斐性を失念しておりました。」
そういうとオースは、また、ゆらゆらと体?を揺らした。
「まったくコイツは……それにリィズも、ペリドットがどのくらいするものか知ってるのか?」
「全然知らない。」
ロキは、リィズに魔石の希少性やその効果について説明し、最後に取引の相場について説明した。
リィズは、ロキの話に当初はピンと来ていなかったが、魔石によっては拳ほどの大きさがあれば、領主程の家が買えることを伝えると、目を丸くして固まってしまった。
主にアクセサリーやインテリアの品が並んでいるが、どれも珍しい貴石や古物がおかれている。
コンコン…
コンコン…
古木から作られている重いドア。それを叩く高い音が店内に響く。
しかし店内には人の気配はおろか、物音すらしない。
ガチャ…ギィィィィ…
重いドアが開かれると、そこからリィズが顔を覗かせる。
「お邪魔します……ロキさん?いませんか?」
呼んでも誰も出てこない。
仕様がないので、リィズは店の中を見て回ることにした。
店内は円形をしており、ドアの両サイドの壁に沿って棚が囲む様に置かれ、その上にさまざまな品が置かれている。
そして、店の真ん中には、螺旋状に絡まった木が2本立っており、枝には彩りのあるいくつものランタンが飾られていた。
お客はドアから入ると、どちらからでも店を一回りする形になり、見ない品は無い様な工夫がなされている。
リィズは置かれている品々に興味をそそられ、順に見て回ることにした。
 虹色に輝く石をはめ込んだペンダント、触ると皮で作られた小物入れ、羽の様に軽い短剣、触れてもいないのにガラス容器の中で波打つ不思議な液体など、棚に置かれた商品はどれも見たことのない様なものばかりだった。
「変なものばかりだけど、こういうものを欲しがる人っているのかな?」
「変なものばかりで悪かったな。」
「ひゃっ!」
ドアのところから急に声がして、おどろくリィズ。
見ると店のドアのところにロキが荷物を抱えて立っていた。
「ご、ごめんなさい。てっきり留守かと思って。」
(口にしたことは別に悪いとは思って無いんだな。いや、そもそも留守と思ったんなら、何故店の中に入ったんだ?)
心の中で指摘しつつ、ロキは抱えていた荷物を下ろす。
「あ、手伝いましょうか?」
リィズはロキを手伝おうと自ら進み出た。
「気を使わなくてもいい。それに、なにかを買いに来たんだろ?」
「あ、そうでした。じつはもうすぐ結婚記念日なんです。だから、そのお祝いの品が欲しくって……」
それを聞いてロキは、少しびっくりした。
「君は…リィズとか言ったか。結婚していたのか、12、3歳ぐらいだと思っていた。」
「ち、違います。わたしじゃなくて両親のです。それにわたしは13歳です。」
リィズは顔を赤らめて、慌てて否定した。
   もうすぐ15周年の結婚記念日を迎えるデンゼルとモーラに、日頃の感謝とお祝いに特別なものをあげたいとのことだった。
リィズがここに来たのは、ロキが不思議な品を扱う雑貨屋を営んでいることを、両親から聞いていたからだった。
「それでどんなものが欲しいだ?」
「うーん……記念になるものだから…対になるものとか?あとは、身につけられそうなもの?」
「それで、店の中に良さそうなものはあったのか?」
リィズは色々と悩みながら、店の棚を何度も往復しながら自分の考えているモノに近いものを探す。
「うーん、やっぱり花束の方が良いのかな……」
リィズが棚の前で頭を左右に振る仕草をして大分時間が経つ。
「……しようがない。アイツに聞いてみるか。」
「アイツ?」
見兼ねたロキは、椅子から立ち上がるとマッチを取り出し、店の真ん中に立つ木に掛けられているランタンの一つに火を入れた。
火の入ったランタンは薄い青みと赤みを交互に帯びて、店の中を照らしていた。
「不思議な色…でも、すごく綺麗…」
リィズが自然と感想を口にすると、一瞬炎が揺らめく。
「おや、お嬢さん。お誉めいただいてありがとうございます。」
急に澄んだ声が店の中に響く。
「え、なに?今の…ロキさん?」
「俺じゃないよ。今喋ったのはコイツ。」
ロキは、炎が揺らめくランタンを指差す。
よく見ると、揺らめく炎にわずかながら顔の様な模様が見て取れる。
「はじめましてお嬢さん。私、ウィル・オ・ウィスプのオースと申します。以後お見知り置きを…」
「うわー、ランタンが喋ってる!わたしはリィズっていうの!」
「おや、私を見て驚かない方は久しぶりです。ねぇ、ご主人。」
オースは嬉しそうに、ゆらゆらと体?を揺らした。
「さて、ご主人。私を呼ばれたのは、こちらのお嬢さんのことでしょうか?」
ロキは、リィズのこと、彼女が両親の結婚記念日に特別なものを贈りたいことなどを説明し、知恵を借りたいことをオースに伝えた。
「ふーむ……、では、魔石を、ペリドットをあしらったブレスレットと髪飾りではどうでしょう?ペリドットには幸福を表す意味もありますし、魔石の力で邪気も払ってもらえますよ。」
「それいい!それにする!」
「待て待てオース。ペリドットなんて何処にある。ここには、せいぜいクリスタルや御影石くらいだ。」
「ああ、これはこれは、ご主人の甲斐性を失念しておりました。」
そういうとオースは、また、ゆらゆらと体?を揺らした。
「まったくコイツは……それにリィズも、ペリドットがどのくらいするものか知ってるのか?」
「全然知らない。」
ロキは、リィズに魔石の希少性やその効果について説明し、最後に取引の相場について説明した。
リィズは、ロキの話に当初はピンと来ていなかったが、魔石によっては拳ほどの大きさがあれば、領主程の家が買えることを伝えると、目を丸くして固まってしまった。
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