三人の精霊と俺の契約事情
貿易国家ローズクラウン
馬車に揺られながら草原をゆっくりと移動している。
「うんん。風が気持ち良いね!アーサー様」
真っ赤な髪をなびかせリサは、アーサーの肩に座りながら背伸びした。
「うん。春らしく暖かい陽気だね。それに久しぶりに国から外へ出ての旅だね」
アーサーは馬車の荷台に座り風を感じていた。
三人の精霊と出会い今日まで、引きこもっていた自分がまさかこんな風に色んな事に巻き込まれて冒険する事になるなんて想像出来ただろうか。
風が吹くたびに雑草がいっせいに葉裏を見せ、濃い緑の海は波を立てる。
「本当に長閑ですね。緑が眩しいです」
シルフィーが眼鏡を押さえながらアーサーの肩に捕まる。
心地よい春風に吹かれて馬車は快調に草原を駆けて行くーー
ーーーその時
ぐぅーっと大きな音が荷台に響いた!!
「何の音だ? 帝国軍の攻撃か?」
アーサーが身構える。
「て、敵襲!!」
リサも慌ててアーサーの背後に隠れる。
「・・・いいえ違うと思います」
シルフィーは、冷静に眼鏡を拭きながら呆れた表情を見せた。
「えへへ~。お腹空いちゃったの」
犯人はエルザのお腹の虫が鳴ったようで恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
馬車の荷台は、安堵の笑いに包まれた。
☆ ☆ ☆
アーサーたちの住んでいるキャメロットは山に囲まれた小さな田舎の国だ。
帝国の領土からかなり離れたところにあり帝国や他の国の侵略などからも逃れてきた。
アーサーたちは現在、南方に数キロ移動した先にある貿易が盛んな大国で情報を集めようと考えていた。
「塩の香りがする。 海が近いのかな?」
リサは子犬のようにくんくんと辺りを嗅ぐ。
「まだ海見えないの」
「いや、もうすぐーー」
「ああっ! 見えたあ。海だあ」
「本当なの」
目の前に広がる海はどこまでも青く、所々に輝く飛沫は純白に煌めいていた。
「お客さん、ほら見えましたよ。あそこが貿易国家ローズクラウンだ」
馬車の運転手の言葉の方に目を抜けると湾岸線に沿って無数の倉庫や造船所やコンテナなどが並んでいて、その内側に商店が所狭しに並んでいる。
貿易国家ローズクラウンーー世界中のありとあらゆる物が集まる世界の台所と言われている。ここから色んな国々に物が流れて行く。
物だけでなく人や情報も集まると言われている。
普通に考えて反帝国軍バンディッツの情報が手に入るとは考え難い。ミランダの話でも簡単に見つからない、謎が多いなどの話からでも情報が外に漏れる事なく機密になっていると考えられる。いくら天下の台所と呼ばれるローズクラウンに来たからと言って簡単に情報を入手出来るとは思えない。
情報を手に入れるのに手っ取り早いのは情報屋から多額の現金で情報を買う。情報屋は見た目では全く分からず紹介状などが無ければ情報を売ってもくれない。大抵、BARや夜の店などに溶け込み取り引きしていると言われている。アーサーもその情報屋を介して情報を手に入れようと考えていた。
アーサー自身も素性がバレると帝国に情報が流れ捕らわれる可能性がある為、目立った行動を避けなければならない。
情報屋を紹介してもらい情報を買う。
ただそれだけのことだが、これが難しい。
ローズクラウンに夜の闇が訪れるーー
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