三人の精霊と俺の契約事情
フレディ
城の図書室で書物を読んでいる人物がいる、高く積み上げられた本の影でまどろんでいる。
「くそぉぉ。アーサー如きがこの俺を脅しやがった。あいつに出来たんだ! この俺に出来ない訳がない」
アーサーの兄、フレディが怒りに満ちた表情で本を睨みつけている。
「俺も契約してやるよ。 あいつは三体虫みたいな弱い精霊だったがこの俺はもっと強力な精霊と契約してやる。 この借りは必ず返してやる」
フレディは、ブツブツと独り言を言いながら何やら魔法陣らしきものを図書室の壁に描き出した。
「この屈辱必ず晴らしてやる」
やり場のない苛立ちで表情は、怒りに満ちていた。
★ ★ ★
「ハーイ。 お待ちどう様でしたあ」
「まってたの」
「わあ。美味しそうお」
「見た目の美しさと鼻をくすぐる甘さ。完璧ですわ」
もう、すっかり常連と化した街の喫茶店、ログハウス風な建物でテーブルから椅子まで全て木製で統一されている。
店内に入ると、コーヒー香ばしい匂いとケーキを焼く甘い匂いが絶妙に重なり淀んでる。 ここの店員のお姉さんと仲良しなったウチの三人娘は、ガールズトークに花を咲かせている。こういう時の男は本当に肩身がせまい。
良くまあ、毎日毎日喋ることが尽きないなあと思う。おかわり自由のコーヒーを頼み後はぼーっとガールズトークが終了するのを待つだけなのがいつものパターンなのだが、今日は今後の為にギルドと呼ばれているミッションを提供してくれる場所に行こうと決めてきたのだ。
ギルドは、仕事紹介所でミッションの難度により報酬が変わる。 全世界共通のミッションと近隣のミッションの2種類があり早い者勝ちである。 腕試しで魔法を使ってみたいのが一つと、今後の為に資金稼ぎなのが一つである。
「ーーだから、ぺちゃくちゃ」
「そうなんだ。ヤダもうお、ぺちゃくちゃ」
( 全然、ガールズトークが終わんねえ )
ふと、窓の外に目をやるとざわめき立って何やら騒々しい。窓の外を慌て走り去る人々が沢山見える。
さすがに、これは可笑しいと瞬時にアーサーは判断した。
「リサ、エルザ、シルフィー」
まだ、ガールズトークの真っ只中にもかかわらずアーサーの一声で即座に反応し駆け寄る。
「ふふふ、どうかなさいましたかアーサー様? そのご様子は何やら騒々しい外がお気になさいってると伺えます」
「伝わってきてるの。 禍々しい魔力なの」
「アーサー様、お店を守ってやりましょ」
三人は、目をギラギラさせ言われなくても準備万端と言わんばかりの戦闘態勢だ。
アーサーは店の入り口のドアノブに手を掛け扉を開けながら。
「行くぞーーお前たち」
アーサーと三人の精霊は外へ飛び出して行った。
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